宮島未奈著『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』を読んで思うこと
こちらは我々が待望だった本屋大賞を受賞した作品とその続編。
強烈なキャラの「成瀬あかり」が主人公のエンターテイメント要素盛りだくさんの一作である。
出すぎた杭は打たれない
「周りの目を気にせず」
「人に合わせないで」
「自分は自分の道を」
当たり前の言い回しであるが、ポップミュージックなどではよく使われる。
みんな、成瀬みたいに自分の道を生きたいのだ。
でも、周りから疎まれるのが嫌で諦めてしまう。
「出る杭は打たれる」と言うけれど、成瀬のように出過ぎた杭は、打たれることもない。
そして突き抜けた面白さで日本を席巻していく成瀬。
山口周さんのポスト
以前もnoteで著作を紹介したが、元電通の社員で、現在は著述家であり、経済・社会の独立研究者である山口周さんという方が、Xにこんなポストをしていた。
この作品を読んでこのポストを思い出した。
成瀬はどうやら子供の頃から独特な子だったようだ。
山口周さんの言うとおり、本当にオリジナルな人は、「オリジナリティが欲しい」なんて思ったことがないのだろう。
ましてや「映え」を求めたり、わざとおかしな行動をするなんてしない。
「映え」たい、と思ってしまった時点で、誰かの目を気にしている。
つまり独自の自発的な考えではあり得ないのだ。
オリジナリティは後発的にできるものではなくて、成瀬みたいにもともと独特であるか、もともと自分の持っているものの独自性を磨いていくことで得られるのかもしれない。
それぞれのオリジナリティ
私たち世代は(少なくとも私は)
「好きなことをしなさい」と言われ続けて生きてきたと思う。
そんな中、私は「自由の中で迷子」になっていたようだ。
「自分だけの道」を、と思っても、誰かの手垢がついていたり、気がつけば誰かの敷いたレールの上を走っていたり。
誰かと同じ部分が多くても、全く同じなんてあり得ない。
成瀬のように突き抜けた面白さがなくても、自分の道は探していくしかない。
無表情でもポジティブ
成瀬の尊敬すべきところは、無表情な顔をしていても、生きることを楽しんでいることだ。
そりゃあ、あれだけ自分のやりたいことを全うできる人生、楽しいだろう。
周りを気にせず、自分だけの道をいく。
そんな当たり前のことができている成瀬は、ネガティブに飲まれかけた私には眩しく映った。
そして、成瀬みたいに200歳まで生きたいとは言わないけど、
長生きしてみるのもいいかな、と思えた。
成瀬みたいな面白い人になれなくても、そういう人に出会えるかもしれないし。
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