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【金魚】エラ病の治療


エラ病は時間との勝負

いつも底砂をツンツンしているはずの金魚が、ある日鼻上げをして泳ぎが緩慢になる・・・といった光景は金魚飼育をしているアクアリストであれば、必ず遭遇すると言っても良い場面です。

あれ・・・いつもと比べて元気がないな・・・
と思って家を出て、帰ってきた時にはもう手遅れ・・・なんてこともあります。

エラ病は基本的に治すことができる病気ですが、色々な原因があり救命が難しいことがあるのも現実。

金魚飼育において、朝の餌やりの時点で、なんだか動きが良くないな・・・と感じたらすでに危険サインです。エラ病は、酸素がうまく取り込めないことによって動きが緩慢になったり、突然激しく泳いだりします。酸欠状態になっているので、時間との戦いです。

なんかちょっと元気がないな。という感覚は大体間違っていません。
すぐに治療を開始しましょう。

エラ病の原因

ストレス性のエラ病

ストレス性の場合は、環境が変わった直後が多いと思います。水槽のリセット、混泳の失敗(時間が経過してから混泳がうまくいかなくなることもあります)などが主な原因です。ストレスを感じた金魚は、腎臓の機能が低下します。それによって、貧血を起こし酸欠状態になってしまいます。
金魚はストレスを感じるとかなり臭います。ただ水量があると気づきにくいこともあるので、まずは新水で隔離します。魚がストレスを感じている場合は、この時点ですぐに匂ってくると思います。元々いた水槽に他の魚がいるのであれば、その水槽も50%程度水換えましましょう。
新水で隔離した後は、0.5%塩浴をしてゆっくり魚を休ませます。塩浴0.5%であれば負担はほとんどありません。エラの動きや泳ぎに問題がなくなったら塩を徐々に薄めて水槽に戻します。

亜硝酸中毒のエラ病

亜硝酸中毒のエラ病が1番原因としては多いのではと思います。比較的水量の少ない水槽で飼育をしていて、餌を多めに与えてしまっていた。と言うパターンです。アンモニアは亜硝酸へ、最終的には硝酸になります。淡水飼育において、アンモニアの毒性はさほど気にする必要はないのですが、亜硝酸の毒性は比較的高く、硝化サイクルにおいて亜硝酸が一時的に多くなってしまうと、金魚のエラから亜硝酸が吸収され、ヘモグロビンと結合します。つまり、血液が酸素を運べなくなってしまうのです。
エラはドス黒い赤になるので、比較的早く気づくこともできると思います。

これを解消するには、やはり塩が重要になってきます。塩を入れると亜硝酸がエラから吸収されるのを防ぐことができます。
亜硝酸中毒が疑われる場合は、新水に塩を0.8%になるように入れ様子をみます。
おそらく半日と経たず回復が見られると思います。念の為、エルバージュエースで24時間浴も併用します。

ほとんど1日で良くなると思いますが、回復した後、50%ずつ換水しながら真水に戻していきます。
ここで注意したいのは、亜硝酸中毒が疑われる場合に、すぐに塩を水槽に入れてしまうことは避けた方が良いということです。
金魚飼育は比較的pHの高い(弱アルカリ性)で飼育している方が多いと思います。塩を入れるとアルカリ性に水が傾き安いので、水換えをせず塩を投入するとアンモニアの毒性が上がってしまい、魚が全滅してしまった・・・と言うこともあるからです。

寄生虫によるエラ病

エラ病のなかでも1番厄介なエラ病だと思います。原虫系の寄生虫がエラにくっついて、エラの組織や粘液を食べて破壊していくことによって起こります。飼い入れた際に持ち込むことが多いと思います。ギロタクチルス、ダクチロギルスと呼ばれる原虫は特に厄介です。
薬事法の兼ね合いで、海外からの個人輸入でしか購入できませんが、プラジプロを使えば24時間程度でかなり安全に退治することができます。
ただ、薬事法もありプラジプロは日本で手に入れるハードルは高く、また高価です。

日本で手に入れられるのはプラジクアンテルという粉状の餌に添加するものが売っています。プラジクアンテルは、水に溶けにくい性質を持っているので、餌に添加して、油やアルコールをスプレーして定着させます。ただ、エラ病の多くの場合は餌を吐き出してしまうことが多いのが難点です。プラジクアンテルもそこそこ高価です。これもまたなかなかハードルの高い方法になりますが内服であることから体内の寄生にも効果があると思われるので、長期間の消化不良では検討してもよいと思いますが、エラ病に適応するかは、魚が餌を食べられるかによると思います。

トリクロルホン系の駆虫薬も効果がありますが、すでに弱ってしまっている魚には慎重に使う必要があります。

寄生虫を持ち込んでしまうと、一度駆虫をしてもふとしたタイミングでまた増殖してきます。季節の変わり目と新しい魚の導入時には特に気をつけたいところです。

いずれも塩浴0.5%を同時に実施します。

細菌感染によるエラ病

細菌感染によるエラ病は、エラを見れば比較的すぐにわかります。エラに白い付着物が見えたら、すぐに薬浴を開始する必要があります。しかし、パッと見てわかる状態だとかなり進行しています。原因は、常在菌のカラムナリスの可能性が高いですが、カラムナリスには複数の型があり、他の魚を飼い入れた際に持ち込むと初めて曝露した場合は一気に感染が広まる可能性があります。
まずは、新水に隔離し塩0.5%+グリーンFゴールド顆粒またはエルバージュエース永久浴を実施します。細菌性の場合は、一気に良くなるということはないのでエアレーションを洗濯機にならない程度に強くし、根気良く治療してあげる必要があります。

5日程度で良くならない場合は、0.5%塩は継続したまま薬剤を変更します。グリーンFゴールド顆粒で良くならない場合は、エルバージュエースに切り替えるなどします。さらに、アグテンなどを同時に添加することも検討します。この場合は難治性ということもあり、救命率はかなり下がってきます。
通常は48時間以内に多少なりとも改善が見られるはずです。それでもいまいち効果が薄い、まだ魚がまだもつようであれば獣医師に相談し、別の抗生剤を検討することもできます。しかし、観賞魚への抗生剤の使用は、環境などに配慮する必要もあります。用法を守って実施が必要となるでしょう。

原因がわからないエラ病

前後の背景や魚の様子を鑑みても、どのエラ病にかかっているかわからないという場合も多いと思います。
その場合は、複合的に治療をすることを検討します。

まず、塩0.8%浴を開始します。塩は急に溶かすのではなく徐々に溶かします。一旦0.5%になったところで魚の様子を確認しながら投入すると良いでしょう。塩分計で正確に測ってあげると安心です。(人間用の塩分計で大丈夫です)
エアレーションも同時に実施します。魚が体勢を崩して浮いてしまうようなことのないよう加減をし、しかし強めにしたいところです。可能であれば、エアレーションを4隅に入れても良いです。

様子を見て、プラジプロを規定量入れます。3時間程度経過したら、次に抗菌薬を投入します。プラジプロの入っている中に入れて問題ないです。寄生虫がとれたところに抗菌薬での予防的投入をすることもあります。※予防効果を狙っての抗菌薬使用についても耐性菌の発現の観点から限定的とするべきです。

2日目以降は、塩を0.5%+プラジプロ+抗菌薬で永久浴します。水温が著しく低い場合は、24時間以上かけて25℃程度まで上げていきます。
これで全く改善しないという場合は、他の抗菌薬も視野に入れたいところですが、時間的にもちょっと救命は難しいかもしれません。
水産系を専攻されていた獣医師の方であれば、水量に合わせて抗生物質を処方してくれる場合があります。
抗菌薬やプラジプロを使っても次々と魚がエラ病で落ちてしまうという場合(そこまでのことはなかなかないと思いますが)は、一旦全ての水槽をリセットし、消毒を行った方が良いと思います。アルコール消毒ないし、イソジンなどを利用します。イソジンを使用した場合はハイポで中和します。当たり前ですが、魚は別の場所に退避させる必要があります。不思議な事ですが、細菌性の病気は、同じ部屋に水槽があるだけで飛び火します。一般家庭においてコンタミが発生しない環境を作ることはかなり難しいと思いますが、その場合は予防的な薬浴も検討されてみてください。

細菌性の病気に悩まされている場合、殺菌灯の導入を検討する

毎年、魚を飼い入れるような場合、繁殖や販売を検討していない場合は、殺菌灯の導入を検討しても良いかもしれません。どのみち、一度水槽に入れたら他の環境に移すことは早々ないという場合においては、殺菌灯はいい選択だと思います。
とても大切にしている個体が、ナイーブで困っているという場合にも良いと思います。ただ、コケも少ない状態になると思いますので、定期的に植物性の餌を与えるようにしてあげると良いかもしれません。白点病の予防などにも効果を発揮します。

エラ病からの救命は日々の観察が命!

エラ病は日々の観察が命です。ちょっと元気がないかも・・・と思ってもほとんどの初心者は、様子をもうちょっとみてみようとなります。
魚がちょっとでも元気がない・・・という状態は危機的な状況がほとんどです。これは断言できます。

ちょっと異変を感じたとしても混泳をしていると判別がつかないことがあります。
そんな時は、洗面器に1匹救って観察してみてください。
緩慢に泳ぐようであれば、魚になんらかの異変が発生しています。他の魚と一緒の時には力を振り絞って泳いでいても、1匹すくうと横たわってしまうような場合もあります。

元気がなくなった状態を見極めるには、「元気な時」を良く観察しておくと良いです。金魚の場合は、ピピピ!と力強い泳ぎをします。

いち早く異変を感じて治療を開始できれば、塩浴だけで十分によくなる場合も多いです。

おことわり

上記の治療は、私が日々の金魚飼育において実践してきたものではありますが、必ずしも全ての場合に当てはまる治療法ではありません。
上記方法において治療を行った場合、弱っている金魚の場合には致死的な場合もあります。あくまで参考までとしていただき、いかなる責も負うものではありません。

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