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久しく泣く。

9月はどんな1ヵ月だっただろう。
思い返せば、いろんな人と会って、話をする機会がたくさんあった。
その中には、自分にとって悲しい知らせも嬉しい知らせもあった。
これからの将来に関わることも、明日忘れてしまいそうなこともごちゃ混ぜにして、たくさんのことを言葉にして、自分も同じだけたくさんの言葉を受け取った。

これからどうしよう、という悩みだとか。今現在自分はこんな状況である、だとか。お互いの立ち位置をあーだこーだ話しながら、たまに全然違う話に脱線したりして。
目的もゴールもない会話がこの上なく心地良かった。

私は一対一で話をするとき、対面より横並びの方がすきだ。
距離が近くて見てる方向が同じだから、個人的には自然に会話出来る気がしてる。
親しい人となら、目線が合わなくても声色で感情は読み取ることができるし、むしろ顔を突き合わせてないからこそ、自分の気持ちを素直に話せる気がする。
相手の視界に自分が入っているか否かって結構重要なんじゃないかな。
本音を呟いてしまう空気感が流れるっていうのか。
深夜のバーで横並びの男女が交わす会話って、なんかしっとりしてるよね。やったことないけど。勝手な想像。

関係性が深くない人とだと、相槌だとか目線だとかそんなボディランゲージを駆使してその場を盛り上げようと頑張ってしまう。それは常々大事なことだと思うし、そうやってコミュニケーションを深めていきたいとも思う。
でもそれらをとっぱらっても成立する関係性って、大人になってどのくらい築けるものなのだろう。

✳︎

久しぶりに、人のことで泣いた。
本や映画で泣くことは多いけど、リアルな生活では割とドライな方なので自分でも驚いた。

久しぶりに会った友人とランチをして、その日はカフェのソファ席に横並びで座った。
今後の将来のことを話すなかで、彼女から最近大きな決断をしたことを聞いた。人間関係やその他諸々でいろいろと大変だったらしい。

それにまつわる身の周りの出来事を彼女が吐露し始めたとき、私は何だか胸が締め付けられて、涙がぎゅうっとせり上がってきてしまった。

かわいそうとかじゃない。その人のその時の気持ちが、手に取るように分かったから。いつも誠実に人と向き合ってきた彼女の一生懸命さを知ってるから。だからこそ、「何かもういいかな、って」という一言が心にずしんときた。

希望を失いそうになった彼女の孤独が、彼女自身から語られたことが悲しくて悔しかった。
何の力にもなれなかったという後悔は、ないこともない。でも、孤独は分かち合いたかった。そのとき感じた絶望が一瞬でも紛れるくらいのことを担いたかった。

あのとき泣けてきたのは、相手と横並びで座ってたからだと、今になっては思う。面と向かうと理性が働くとまでは言わないけど、何かしらの制御がかかりやすいのではないか。
私の涙に気づいた相手は、私以上に泣いてしまった。

お互い何だか顔が見れなくて、カフェのソファ席から行き交う人の流れをただぼーっと眺めた。
言葉にならない時間がしばらく流れたけど、こんな時間を共有できること自体にはあたたかいものを感じた。
泣くことはエネルギーを使う。
だからか、その後食べたサンドイッチがより一層美味しく感じた。

そして将来のワクワクするような話もした。
彼女の夢を聞きながら、私も分からないことや未知なことを楽しめる自分でありたいと思った。でも今思えば、私の周りにはそれを体現している人はたくさんいる。いい環境にいるんだなと思えた。

✳︎

私が以前大切だと表明していたものの中に「誠実さ」がある。
人にも自分にも誠実でありたい、と。
誠実さという言葉の響きと抽象的なニュアンスに惹かれて使っていた部分もあった。

じゃあ今は大切じゃなくなったかと言われればノーだけど、でも優先して大切にしたいことかと問われれば、なんだかしっくりこない自分がいる。

大切だけど、自分の中で特記する項目でもないかなという感じ。結果そうあれば理想で、無理してそれを取りに行く対象ではないというような。

何かのプロフィール欄があったとしても「誠実」という言葉を今は書かないし、書けないなと思う。
そういう心境の変化がここ数年であった。

大きな決断をした彼女も似たようなニュアンスのことを語っていて、とても共感した覚えがある。
再会した日にそれらから解放されたような清々しさが感じられて、私はホッとした。

誠実さを目的にするときに感じる心の葛藤や矛盾に苦しめられたことを思い出すと、それを人に対してもあまり求めなくなった。
それが良いか悪いかじゃなく、そう変化したという今の心境はどこかに残しておきたかった。

ただ、誠実であろうとする人を私は尊敬している。
終わりのない闘いに挑み続けますっていう宣言だから。
そういう人からもらえるパワーがあるからこそ、私は頑張れているなと思える。誠実さを思い出す瞬間。
自分で作り出さなくてもいい。
私にとって触れて感じるものなのかもしれない。

泣いたり笑ったり、何だかいつもより感情の忙しい1ヵ月だった。
でもそれを誰かと共有できたこと自体は嬉しい。

総じて、充実してたということかな。

ここまで読んでいただいたこと、とても嬉しく思います。