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気分的極短編「光をかき鳴らせ」

最後の一音が鳴りやみ、ライブハウスの薄暗闇に明るい希望が満ちた。
先輩たちの演奏は本当にカッコいい。
だけど、そんな先輩たちは今日、さっきの音と共に引退してしまう。引退してしまった。
点滅する青、緑、ピンク、赤、オレンジの光。
イントロが静かならうっすら青い光。
明るい曲なら緑色。
お洒落ならピンク色も。
盛り上がるところで赤やオレンジ。
激しいところではストロボ。
あくまでも瞬間的なフラッシュバックの中だが、先輩たちは感情高ぶる光を乗りこなしていた。
次は俺たちの代。
先輩たちがかっこよすぎて正直ビビっている。
あんなにマジシャン、というか魔術師のように音と光を操れるだろうか?
新しく入ってくる子を除いて今隣にいる後輩たちもこの光景に感化されているはずだ。
俺なりの、俺たちなりの音楽を作る。そう決めた。

一年後、俺は先輩の場所に立つ。
先輩たちの背中は一年以外の全員が見ていた。
越えることは出来ないが、並ぶことは出来る気がする。
そして、憧れられる覚悟も出来た。
俺たちは、まだ先輩の残り香漂うライブハウスで、最後の一曲をかき鳴らす。
黄色い光を背に、最後の、最後の一音、その余韻が止んだ。
ライブハウスの薄暗闇に明るい色が満ちた。
ステージから見る後輩たちの顔は、感情に満ちていた。

ぐんぐんどんどん成長していつか誰かに届く小説を書きたいです・・・! そのために頑張ります!