妻の牙城
妻はインドア派であまり外出は好きではない。
一緒にデートしようと言っても断られる。
一緒に花の手入れしようと言っても断られる。
一緒にウォーキングしようと言っても断られる。
友達とはよく出かける。
夫なので妻のことはよく分かってる。要するに
妻は外に出るのがあまり好きではないみたいだ。
ライブも行かないし、人が多いスタンディングの
野外フェスなんてもってのほかだ。
ただ一昨年の伝説のナンバーショット2022は
私にとってはハラハラドキドキ大作戦だった。
いつも仕事しながら家事をしてくれてる妻と、
娘の誕生日祝いに、音楽が好きな私は、内緒で
Tシャツ付き先行チケットを2枚購入していた。
PayPayドームなので指定席で体力も心配ない。
購入したのは娘とボランティアに行くもっと前。
ただ妻によく注意される私の悪いところだが
私は、自分が嬉しいことは全員が喜ぶと思い、
よくサプライズを企てる。
しかし大概は、微反応で終わる。
私は結婚記念日には毎年、赤い薔薇を一本ずつ
増やし渡してた。いつも直前まで私はワクワク、
でも渡すと、花は枯れるので物がいい、ほんと
あなたは毎年毎年懲りないねぇ、などの反応で
10年目に私はその行事に終止符を打った。
ただ30周年記念日にはその年限定で
復活させる予定だ。フフフ、絶対喜ぶ、(重症)
話は脱線したが、問題は妻がナンバーショットに
行ってくれるかどうかだ(確認して購入しろ!)
娘にもサプライズだから話していない。
妻とリビングにいる時にそれとなく聞いてみる。
私 フェスって絶対楽しいよねぇ
妻 無理、疲れる。
私 、、、
私 King Gnuとか生で聞いてみたいよねぇ
妻 別にテレビでいい。
私 、、、
ラスボスだ!手強い!先は長い!
なかなか核心に迫れず月日が流れていった。
事が動いたのは唐津シーサイドキャンプだ。
二日目、青空に響き渡る心地よい音楽の下、娘と
波戸岬の離れでのんびり駐車場警備をしていた。
娘は前日、一日フェスを体験して音楽やフェスに
対しての興味が芽生え、色々調べ始めたのだろう
「パパ、ナンバーショットって知ってる?
あれに行ってみたいんやけど」
予想外のピンポイントなワードが飛び出した。
(はっマジか!バレてないよな???)
一瞬だけ動揺したが、ここはまだ我慢の時だ。
まだサプライズのカミングアウトは早い。
そして!ママの牙城を崩すチャンス到来だ!
私は、平然を装いながら、役者に徹した。
「へぇ、そかそか、帰ってママに聞いてみたら?
ママがいいと言ったら一緒に行ったらいいやん」
内心私は、ナイス!ナイス!と心が躍っていた。
家族みんなでフェスなどに行くのも憧れるが
息子は休日はクラブチームのサッカー遠征が多く
親のどちらかが付き添いで行く場合が多い。
冒頭で話した通り、
妻はおそらく私と二人での外出は好きではない。
そして我が家は女性権力国家だ、そう考えると
私が行き着く一つの幸せの形として
妻と娘が一緒にフェスやライブに出かける
という答えだ。
翌年に思い知るのだが、SUPER BEAVERの
ライブには、今では妻と娘がフル装備で参戦し
私はいつも留守番を任せられることになる。
ま、今はそれは置いといて
その日波戸岬の先にある第二駐車場は空いていた
娘は音楽に身を任せて身を揺らしながら、車を
誘導する素振りで誘導棒をぐるぐる回していた。
ナンバーショットまであと2か月を切ってる
後半戦に向け、私は最強の味方を手に入れた。
私はどうやって妻と娘を一緒にナンバーショット
に行かせようかと策を練っていた。
つづく
シンデレラボーイ Saucy Dog
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