マガジンのカバー画像

青春陰気小説

15
少年少女の青春陰気小説を時々掲載しています。前後編など連作でない場合は、全て別個の作品です。連載作品は別のマガジンにもまとめる可能性があります。 【掲載作】心には君のパズル、ツ… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

【生贄リボン】試し読みページ

pixivで連載した電子書籍『生贄リボン』の試し読みを用意しました。noteでは序章、一章を試し読みに掲載しています。現在pixivには三章まで掲載されています。(noteに掲載されているのも連載版のバージョンです。電子書籍版では修正がされています) 生贄リボン 著者 館山緑 表紙写真 松代守弘 kindleにて販売開始、kobo、BOOK☆WALKERにて販売 定価500円 楽天kobo あらすじ 「八人の願いが叶うまじない」八方様の存在を土屋湖子が知ったのは、親族

『無音の海』試し読みページ

電子書籍『無音の海』の試し読みを用意しました。 気になってる方、ぜひぜひこちらでチェックしていただけると嬉しいです。 無音の海 著者 館山緑 表紙イラスト 二上ネイト kindleにて販売開始、kobo、BOOK☆WALKERにて販売 定価400円 楽天kobo あらすじ 妖怪伝承の残る夜待島に住む少年、旋(せん)は他島の学校に通う中学生。流れてくる声に惹きつけられ、波止場で出逢った『あの人』にほのかな思いを寄せた。しかし彼女と出逢うたび衰弱していく。旋がヨブコ除けの刺

『ヒヅメ坂の子供達』試し読みページ

電子書籍『ヒヅメ坂の子供達』の試し読みを用意しました。 気になってる方、ぜひぜひこちらでチェックしていただけると嬉しいです。 ヒヅメ坂の子供達 著者 館山緑 表紙イラスト Neit kindle、kobo、BOOK☆WALKERにて電子書籍発売 定価400円 あらすじ 自分が恐怖を抱いているのは『ここ』だ。ヒヅメ坂だ── もうすぐ秋の祭を迎える頃。閉鎖的な集落、ヒヅメ坂に住む少年、来(きたる)は何の理由も兆候もなく強い恐怖感が起こり、外に出ることが困難になった。 大切な四

青春陰気小説リスト

掲載作(新作順) 2017年2月時点 心には君のパズル ツマベニの日 埋め尽くす君の黒 そんな世界 飼育小屋のゴミで肉(前編、後編) 戦えキルシュトルテ 心には君のパズル 2017/02/21公開 新学期から程ない時期の校外学習に行った途中、突然謎の無双居室で目覚めた少女、伊勢崎芽衣は、憶えていないクラスメートの少年、明石香積と共に暗がりを探索する。しかしどれだけ歩いてもその広大な暗い建物には出口も窓もなく、見つかるのは自分達の着ているのと同じ制服と溶けかけたゲル状の何

『君の居場所の向こうに何か』試し読みページ

電子書籍『君の居場所の向こうに何か』の試し読みを用意しました。 気になってる方、ぜひぜひこちらでチェックしていただけると嬉しいです。 君の居場所の向こうに何か 著者 館山緑 表紙イラスト 佐竹愼 kindle、kobo、BOOK☆WALKERにて電子書籍発売中 定価400円 製品情報 少年少女の痛みと向こう側を描く物語を集めた初短篇集。独特なカラーを持つアンソロジーに寄稿した館山緑の短編五本と、書き下ろし短編『蓄積された君のユメ』を収録。 館山の初の短編集収録作品のうち『

『流され雛の朝』試し読みページ

granatの新作小説、電子書籍『流され雛の朝』の試し読みを用意しました。 気になってる方、ぜひぜひこちらでチェックしていただけると嬉しいです。 流され雛の朝 著者 館山緑 表紙イラスト なきくに kindle、kobo、BOOK☆WALKERにて電子書籍発売中 定価400円 あらすじ 平凡な四人家族が惨殺される事件。十二歳の誕生日に起こった『最初の事件』でただ一人残った少女、万里はそれ以前の過去を全て失っていた。 犯人が万里の体に刻んだ逆三角形の印。悪夢を見るたび、塞が

『壁の中のside-B』試し読みページ

電子書籍『壁の中のside-B』の試し読みを用意しました。 気になってる方、ぜひぜひこちらでチェックしていただけると嬉しいです。 壁の中のside-B 著者 館山緑 表紙イラスト 二上ネイト kindle、kobo、BOOK☆WALKERにて電子書籍発売中 定価400円 あらすじ体が溶けて死んでしまう奇病、通称『メルト』が急に勃発した波南町は、外部への感染を防ぐために急遽高い壁で隔離された。 波南町に住む『わたし』は、壁の中に閉ざされたまま、壁の外にいる友人にも恋人にも

『落下症候群』試し読みページ

電子書籍『落下症候群』の試し読みを用意しました。 気になってる方、ぜひぜひこちらでチェックしていただけると嬉しいです。 落下症候群 著者 館山緑 表紙イラスト もぐさ kindle、kobo、BOOK☆WALKER、BOOTHにて電子書籍発売中 定価400円 あらすじ通っていた塾の屋上から、生徒が一人飛び降りたのを目撃してしまった伊藤章生は、他校で流れている『勇気を代償に天使を買う』噂を知る。死んだ少年は『天使を買うために勇気を出して死んだ』のだという。 章生は『天使』と

心には君のパズル

 無窓居室という言葉を聞いたことがある。  窓がなかったり、必要なだけの採光面積が取れない部屋は住むための部屋として認められない。そういう居室を無窓居室と言うそうだ。  私、伊勢崎芽衣が転がっていた『ここ』がかなり広い無窓居室らしいことに気がついたのは体を起こして三十秒ほど経ってからだった。 (どこだろ、ここ)  大体十畳くらいの天井の高い、窓がない部屋だった。ただ、窓もなく灯りも点いていないのに、ぼんやりと明るく、真の闇ではない。  そもそも今日は校外学習のためにバスで移動

ツマベニの日

 あの子から血の臭いがする。  そう思ったのは多分、僕の勘違いだった。  何故ならそもそもあの日、あの場所で吐きそうなほど血の臭いを撒き散らしていたのは、彼女ではなく僕自身だったのだから。  その時の僕は横たわる死体――しかも刺されて死んだ死体の傷口に手をついて、大泣きしながらもどうしたらいいのか解らず、まともに身動きできなかったのだ。  血まみれの死体の上に手をついて立ち上がろうとするのは難しかった。掌がぬるぬるで、体のバランスが崩れてしまう。動転しているせいもあって、僕は

埋め尽くす君の黒

 昔から、山犬が出るという話があった。  夜の道を歩いてくる時に、もし犬のついてくる気配がしたら食われてしまうよと言われていた。  その途中、暗がりを埋め尽くすほどの雀の声が聞こえてくることがあったら、それは夜雀(よすずめ)。  山犬の先触れとして現れる夜雀の声は、道を歩くことすらできないほど騒がしく、どこまでもついてくる。山犬から守ってくれる代わりに、どこまでもついてくるのだという。  私はあの時、夜雀の声を聴いたのかも知れない。  だからこそ今、命長らえている。父と母を差

そんな世界

 俺にとって『これ』はロッカーから始まる物語だ。  誰かと初めて出逢うタイミングとして「貧相な担任教師が開いた教室のロッカーから誰かが出てくる」なんていうパターンがあると、生まれてこの方、俺、蓮生(れんじょう)尚行(なおゆき)の頭に浮かんだことは一度もなかったが、そんな馬鹿げた始まりが全てを変えた――のだと思う。  ついでに言えばこの教室自体も本来俺が在籍している学校のものではなく、隣の学区のものだ。二週間ほど前、自分が通っていた学校でほとんどの生徒や教師が消えてしまう事件が

飼育小屋のゴミで肉 後編

前編へ 『着いた』  午後三時。六辻小学校の前まで来たわたしは、千倉にメッセージを送った。  彼の自宅を知らないので、ある程度待たされることを覚悟していたけれど、すぐに一軒家のひとつから千倉が現れ、こちらに小走りで近寄ってくる。背が伸びても、走っている姿は昔と同じ印象だった。 「こっち。誰もいないから」  さっき走り出てきた一軒家に招かれ、約束の前半分を果たすことになった。「誰もいないから」という言葉が思い起こさせる状況とは無縁の、陰鬱といってもいい情報交換が目的だ。

飼育小屋のゴミで肉 前編

『あの事件』が起こる前徴を当時のわたし、数藤(すどう)桐子(きりこ)は感じ取ることができなかった――のだと思っていた。  一応は全国のニュースで報道されて、話題にもなったはずなのに、小学生数人が失踪したという事件の、被害者でこそなくても同じ学校に通っていた身としては少しばかりいたたまれなかった。あの事件が起こる前には全く気づいていなかったし、事件後には行方不明者の担任が私の父の妹、同居していた叔母だったことで数藤家は大変なことになっていたから、それについて思い出している余裕は