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Designship2023で響いた巨匠たちの言葉

GoodpatchでDesignOpsチームに所属している角野(かどの)です。
10月に開催されたDesignship2023にオフラインで参加したのですが、普段の業務で向き合っているデジタルサービスのデザインだけでなくさまざまな視点でのデザインに向き合え、イベントとしての満足度がすごく高かったです。
特に、佐藤卓さん、遠山正道さん、山中俊治さんなどよくメディアや書籍で見る方々の話を直接聞ける機会は本当に貴重でとても刺激的な体験でした。

今回はお三方の話の中で心に響いた言葉をこのnoteでご紹介できればと思います。

※会場での話と一部アーカイブをみてまとめたものですが、僕自身の解釈も入っているのでその点はご留意いただけると幸いです。


佐藤卓さんの言葉

キーノートスピーチの概要

佐藤卓さんの登壇タイトルは「デザインの自由不自由」でした。
おいしい牛乳やキシリトールガムなど、過去のお仕事でのデザインアプローチを紹介しながら、デザインには自由あるのか?それともないのか?というタイトルを紐解いていくような発表でした。

響いた言葉

「デザインは、間を適切に繋ぐこと。」

デザインの役割を的確に示した言葉であり、この言葉の前に「パッケージデザインは、中身を外側で表現すること」という表現を使われていたのですが、商品自体を適切に消費者に伝える(繋ぐ)という意味としてパッケージデザインを捉えていることを表していると感じました。
さまざまなデザインを実行するデザイナーは、このコアを捉えられているかどうかで、デザインという行為自体の質も大きく変わるような言葉として響きました。

「デザインに自由はない。デザイナーは自由。」

デザインは、特定の条件や環境のなかで行うものという考えから自由はないが、それを扱うデザイナーには自由があるという意味だと捉えました。
ただ、デザイナーに自由はあるがその自由の中で自分の好きな方向にばかり行こうとすると、自分の型=スタイルができてしまうので、本来は違う方向に行くべきであるのに、自分のスタイルを活かした別の方向に行ってしまい、本来の間を適切に繋ぐデザインから離れてしまう危うさに触れていることも印象的でした。

発表を聞いての感想

アートとデザインは人や見る側面によっても概念は曖昧ですが、佐藤卓さんは自己表現としてデザインを捉えておらず、すごく客観的な視点でデザインを捉え、デザインを実行しているデザイナーなんだなと感じました。

遠山正道さんの言葉

キーノートスピーチの概要

遠山さんのキーノートスピーチは、アーカイブが残っておらず少し曖昧なところもありますが、自身の活動を紹介しながら、そこで考え行動したことをすごく自然体で語っていたのがとても印象的でした。

響いた言葉

「自分のキャリアの責任は自分で持つということをスマイルズの社員には伝えている。」

デザイナーに関わらず、会社に勤めている人に共通する言葉ですが、自身もなかなかできていない場面がある言葉として改めて考え直す言葉でした。

「クライアントワークでデザインしている人はずっと仕事がくると思わない方がいい。自分自身がクライアントになりデザイン、クリエイティブな活動を行うことが大事。」

この言葉はキーノートスピーチの中ではなく、アフターパーティーの中で行われたセッションで話されていた言葉です。
自分自身クライアントワークに長く携わっており、なんとなく感じていたことを言葉にされた感覚でした。クライアントワークでは、さまざまなクライアントの想いをカタチにする仕事で自分自身の想いも入ることはありますが、それは主な想いではありません。
遠山さん自身のアート活動や、自身で事業を立ち上げた経験の中から生まれた言葉だと思い、印象に残りました。

発表を聞いての感想

スピーチ全体を通しとても自然体で語られていました。強い言葉を使わず、自分を飾らず、考えていること、やってきたことを自然と言葉にしているような、そんな印象を抱くようなスピーチでした。
遠山さんの2つの言葉はどちらも自分を主とする言葉だと思っており、遠山さん自身が実行してきた心得のようにも感じました。

山中俊治さんの言葉

キーノートスピーチの概要

スピーチの中では、過去に行ってきた科学者の方々との取り組みを山中さんの視点で紐解き紹介してくれました。山中さんのスケッチが大画面でたくさん見ることができ、それだけでも幸せな時間でした。

響いた言葉

「プロトタイプを今まで作ってきた意味は触ってもらうこと」

今回のDesignshipのテーマでも主張されている通り、デザインやデザイナーの役割はどんどんと広がり、物事を考え整理する抽象的な領域もデザインであると考えています。一方で、この言葉のように手に取れる具体的なものを作れることはデザイナーならではのアプローチだと思っています。
科学者との関わりの話の中で「科学の重要性を理解するだけでなく、科学が示す価値に共感してもらう」という話もされていました。そのためにわかりやすい表現や触れられるものとして具現化することは、概念や数的事象をメインに扱う科学者の方々とのプロジェクトで山中さんが大事にしてきたのだなと思う言葉でした。
そんな山中さんが行ってきた科学者の方々とのプロジェクトのプロトタイプを直接見れる展示会が来年開催されるようです。(絶対見に行きます。)


「『デザイナーとしては』とか『デザイン業界では』とか考えるようになったら自分の行動を無意識に閉じ込めていないか疑ってみた方がいい」

X(旧Twitter)でもつぶやかれていましたが、スピーチではなくアフターパーティのセッションで話された言葉でした。

デザイナーだから〇〇しないといけない、デザイナーは〇〇であるべき…のような表現をときに自分自身も使うことがあり、その表現自体がデザインやデザイナーの可能性を枠に閉じ込めてしまっていると考えさせられるような言葉でした。

発表を聞いての感想

科学者という全然違うメンタルモデルを持った方々とのコラボレーションを行ってきた山中さんだからこそ、デザインという枠組みの中のみで議論をしているのはもったいない、もっと可能性あるよ!とスピーチやアフターパーティのセッションを通して促されているような感覚でした。
デザインという枠ではなく、自分が面白いと思うものに改めて向き合っていきたいなと思いました。

まとめ

デザインのど真ん中で内側からデザインを捉え直している佐藤さん、事業やアートという領域の中で自分の想いを主とし、クリエイティブな活動している遠山さん、科学というデザインとはまた違う領域で自身が面白いと思っているものにデザイン的なアプローチをしている山中さん、お三方の話の中でも普段の業務で向き合っているデザインとはまた違う視点でデザインに向き合う時間が作れたように思います。
こういった場でデザインってなんだろう、自分たちの仕事はどういうものだろうと改めて客観的に向き合う機会になりました。

アーカイブはまだ見れるようなので、まだ見ていないよ!という方はぜひ下記でご覧ください。

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