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有馬温泉の歴史をテーマにした貸切温泉 『湯屋 松風』

湯屋松風は、有馬の温泉街の中心地、御所泉源に隣接した所にあります。
民家を改修し、一階には温泉の貯湯槽を設け、2階部分に2か所の貸切の温泉浴場を設けています。

温泉を使用した蒸し風呂


循環式の浴槽はレジオネラ菌の温床になりやすい。特に循環回路内に“バイオフィルム”と呼ばれる、アメーバーの体内にレジオネラ菌は潜み、ある日突然団体で攻撃してくるのですが、通常の薬剤ではバイオフィルムは殺菌しにくいのです。

有馬の温泉は非常に濃度の濃い温泉です。その為“白湯”と呼ぶ、水を湧かした浴槽で濃い温泉を流してもらうようにしてきていました。
しかし現在ではシャワーがあります。

そこで“白湯”は必要なの?

管理上デメリットがあってもメリットはない。しかし浴場内に白湯の浴槽はある。そのスペースをどうするかを考えました。そこで浮かんだのが源泉を使用した蒸し風呂です。

蒸し風呂は古典的な入浴方法です。

しかし、有馬の温度の高い温泉を使用した蒸し風呂は、SDGsやカーボンフリー、ケミカルフリーの観点からみると最新だと思います。

しかし湯屋松風は街中にあるので、景色は望めません。
そこで窓はなくても浴場を楽しんで頂けるように、有馬の“歴史”をテーマにしました。
そのような浴場は日本初ではないかと自負しています。(笑)

湯屋松風 籟(ライ)

いんの浴場には、温泉の浴槽の背景に太陽を背にした三羽のカラスを描いたモザイク画をつくりました。
これはモザイクアーティストのナツコモザイクさんの作品です。

また有馬の源泉をそのまま注いだ蒸し湯には、有馬の歴史に触れて頂きたいと思い、行基ゆかりの薬師如来像を設置しました。古くて新しい、浴場をお楽しみいただけたらと思います。

有馬温泉の発見

神話によると有馬温泉の発見は、大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)が薬草を求めて各地を巡っている時に、傷ついた三羽のカラスが水浴びをしていた。
よく見ると水は温かく、しばらくするとカラスの傷が癒えて飛び立った。
それが有馬温泉の発見だといわれています。

動物が発見したと言われる温泉地は多く、英語でBATH(風呂)の語源になったイギリスの王室ご用達の温泉地、BATHは豚が発見したといわれています。
カラスは神の使いといわれ神武天皇を熊野から大和に道案内し、太陽の化身とされています。有馬ではカラスは三羽だけ住むことが許されているといわれていますが、実際は多くのカラスが空を舞っています。

有馬の湯泉神社では大国主命と少彦名命が祀られ、三羽のカラスの木彫もあります。また温泉寺の本堂の天井にもカラスが描かれています。
そのどちらのカラスも足が3本です。

八咫烏(3本足のカラス)

八咫烏(やたからす)は、日本のサッカーチームのマークにも採用されていますが、咫(あた)は長さの単位で、親指と中指を広げた約18cm。八咫とは184㎝になりますが、大きいカラスという意味です。

古事記や日本書記では足が3本と書かれていませんが、和名抄では中国や朝鮮の伝承の鳥、三足烏(さんそくう)と同一視され三本足になったと言われています。
中国神話では三足烏は太陽に住むといわれ紀元前三世紀から書物に登場しています。

高句麗(紀元前5世紀~7世紀)では、三足烏(삼족오 Samjogo サムジョゴ)は、火烏とも言われ、古墳の壁画に3本足の烏三足烏が描かれています。

※三足烏の絵を見つけた時に左側に虎が描かれています。龍かな?
無方庵の綿貫先生が描く虎と一緒だと思いました。そして先生に八咫烏の絵を描いてもらったのですが、単に横からの絵で、単純だなあと思っていたですが、改めて先生は「創作でなく古典だ」と言っていたのを思い出しました。先生の字は創作でなく昔の字そのものなのです。

湯屋の皇后

聖武天皇の妃、光明皇后の伝説として「千人施欲」があります。ある時誓いを立てて千人の垢を擦るというものです。
千人目に非常に皮膚がただれた人が来て、皮膚を擦った後「膿を吸い出してほしい」と言われました。
皇后が膿を吸い出した所から金色に輝き、最後は阿修羅如来にかわったという話があります。
日本は湿気が多く、皮膚病にかかる人が多かったと思います。そこで社寺では蒸し風呂をつくり施欲を行った歴史があります。
その光明皇后は聖武天皇とともに行基により帰依し、東大寺を建立し、大仏をつくったことは有名です。

行基

有馬三恩人の一人、奈良時代の僧。
温泉寺の縁起絵巻には、行基が六甲山の山中でお腹がすいて動けない旅人を救い、さらに光明皇后と同様の事をすると、旅人は光り輝く薬師如来となって「この落ち葉が落ちた所に湯が湧く」と言って土砂に埋もれていた有馬温泉を再興したといわれています。
有馬では温泉寺で行基を恩人としてまつっています。

薬師如来

有馬の温泉寺の薬師如来像は座像としては関西一の大きさで、左右に月光菩薩と日光菩薩、背後には十二神将が祀られています。
十二神将は十二支が割り当てられていて、それぞれに60人の家来がいるといわれています。つまり時を表しているのです、そして月光と日光で昼夜。
24時間、薬師如来の教えを広めているという事です。

女体権現

有馬に来た歴史上の人々は、まず女体権現、つまり温泉寺の薬師如来にお参りし、温泉で病を癒すことをしました。
そして温泉に入浴の際には般若心経を唱え、決して不埒なことをしてはならないという定めがありました。

そこで湯屋松風の籟(ライ)の蒸し風呂内には薬師如来を祀っています。




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