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企業分析#06_アクシージア[4936] 22年7月期上期の売上予測

アクシージアの1Q決算が12月10日に予定されています。ダブルイレブン(以下、W11)期間の成果に関するニュースリリースから、売上に関する数字も拾うことができ、どうやら好調のようなので、決算前に開示されている数字から上期(8月~1月)の売上の予測を立ててみます。
計算ロジックの説明が中心の記事ですので、時間のない方は5章まで飛んでください。

1. 売上の構成

まず売上の構成をおさらいすると、中国ECが会社全体の売上の7割を占め、中国サロンを足して実に9割が中国での売上となっています。

また、売上成長率は中国ECが前年比 +41%、中国サロンが同じく +36%と、会社の成長を牽引していることがわかります。

今回の予測は、中国ECに関する会社発表のデータから、まず会社売上の約7割を占める中国EC total を推計し、そしてそれをもとに会社全体の売上を推計するという内容です。

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次にメインチャネルである中国のECの内訳を見てみます。中国にもいろいろなECがある中での売上構成がこちら。BtoCのTmallとCtoCのTaobaoがメインで、Tiktok(中国では抖音,Douyin)は前年度4Q(5-7月)の5月11日に開始したばかりで構成比はまだ小さいです。
Tiktokが入ってきた前年度4Qにおいて、その構成比を計算すると、Taobao他(48.4%)、次いでTmall(34.8%)、RED(11.8%)、Tiktok(4.9%)となります。

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2. 2021年のW11期間における売上

2-1. 公開されている数字

11月18日のニュースリリースにおいて、今回の予測のベースとなる数字が公開されました。

中国最大のECイベント「W11」の全期間※1において、当社の越境EC旗艦店合計※2で、以下の成果を挙げたことをご報告いたします。
・GMV(流通取引総額):前年度比161%
・主力商品※3のGMV:前年度比175%
※1 開催期間:2021年10月20日00:00~2021年11月11日00:00
※2「天猫(T-mall Global)」「小紅書(RED)」「抖音(Douyin)」


W11期間中のGMVの前年度比が出たわけですが、IR資料ではないので、このレベルが限界だと思います。でもこれで十分です。2020年のW11におけるGMVが金額で過去に開示されているからです。(出典:21年度7月期の2Q決算説明資料

このときはTiktok がまだありませんので、以下のようにTmall + RED だけで20,423千元 と書かれています。Taobaoのデータは無し。

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今回のリリースで出たのは「T-mall」「RED」「Tiktok」の3つの合計値です。期間は同じW11期間中。今年は新チャネルであるTiktokが加わっているものの、これは新チャネル開設による増分ということで単純に前年と比較して良さそうです。

2-2. W11期間中の売上高の計算

次に前年比の%をもとに、今年のW11期間中の売上高を計算してみます。

ニュースリリースに「GMV(流通取引総額):前年度比161%」とあるので、先程のスライドに掲載された数値を用いて単純な掛け算で、

2021年W11期間中の「T-mall」「RED」「Tiktok」の3つでのGMV
= 20,423千RMB×161%=32,881千RMB
→日本円にして約5.75億円が3つのチャネルで売れたと整理できます。
※11/1-11/10のSMBC T.T.Bレートを見て、決算期平均で 1RMB=17.5円で計算
(会社想定レートは非公開。全ての日の終値の平均値を用いて外貨建て取引を換算しているとのこと。)
ちなみに、Tmall の売上=会社の売上 ということはIRへの問い合わせで確認できています。

これにTaobaoの売上が加わりますが、Taobaoの方も同じように去年の1.6倍売れたかというとその考えはキケンです。なぜならTmall の売上はイベント中にAustinというトップKOL を使った特殊要因の影響が大きいと考えられるため。Taobaoの売上は超保守的に昨年と同程度と見ておいたほうが、大怪我をしなくて済みそうです。

更には中国第2位のJD.com に10月26日に旗艦店をオープンしており、今年はここの売上も加わってきます。JD.com での売上は、Tmallの販売ボリュームには及ばないものの、Tmallの売れ筋商品が特売で出品されていることと、W11期間中に美容器カテゴリーでランクインしていることを確認できました。


各チャネルと売上の関係をまとめるとこんな感じになります。

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3. 売上の月次データと季節性の確認

ここまで見て来たのはあくまでW11期間中(10/20-11/11)の売上。11月分でも無いし、2Qの残りの12月と1月も含まれていません。

これだけでは2Qの売上を計算することはできません。参考とするべき月次のデータが必要になります。

2019-2020年の月次データが「成長可能性に関する説明資料(2021年2月)」に公開されていました。以下のスライドでは、金額の表記はないものの、概要としては、イベントのある 3月、6月、11月に盛り上がりがあり、他の月もそれなりにあることがわかります。
当社が扱う化粧品やサプリは消耗品なので、なくなったら買うということでしょう。ただし、2019年のデータを見る限り、11月直後の12-2月という期間は、3月イベント前でもあり明確な買い控えがあると読み取れました。

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それと、よく見ると3月,6月,11月はTmall の比率が上がっています。これらの月ではTmallの売上が特に伸びているので、イベント期間中の強力なPromotion が影響していると考えられます。このデータからも、前述の「Taobaoの方もイベント中に去年の1.6倍売れたかというとその考えはキケン」という考え方に帰結します。


4. 売上高の推計の考え方

いろいろ見てきましたが、重要な情報は以下。円換算するときに用いたT.T.Bレートが仮の数字ではあるものの、ここまでは大きなブレはないはずです。

①今年のW11期間中、Taobao以外のECチャネルで5.75億円売れた。②Taobaoは不明。今年はJD.com の売上が加わる。

これを基点として1Qと2Qの中国ECの売上を推計しようとする場合、以下のステップによりレンジで計算できそうです。ここからは試算になるので、ブレも大きくなります。

Step 1: まず11月のTaobao以外のECチャネル売上。イベント期間は10-11月にまたがっているけれど、KOLのライブコマースは11月だったし、これはほぼ11月とみなしてよいだろうということで、エイヤーでW11期間の3チャネル売上(5.75億円)=11月の3チャネルの売上 と仮定。 (11月のイベント後11/12-11/30の売上高が10/20-10/31の売上高と同じであるという考え方でもあります)

Step 2: 次に11月の中国EC total。以下のチャネル別構成比を参考に、Step 1で求めた売上高の1.3-1.4倍と推測される。最近のイベント月は1.6倍くらいありますが、TmallだけKOLの影響で爆増、Taobaoは期待しないという考え方なので、この倍率は保守的予想です。5.75億円の1.3-1.4倍ということで、11月の中国EC total の売上を7.48億~8.05億円と試算。(A)

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Taobaoを含めたイベント中の売上金額は、RED+Tmall の何倍?

Step 3: 2Qの12-1月の売上は月次の売上推移のグラフから推測。2020年は大体12月と1月分を合計すると11月と同じくらいなので、上記(A)を2倍すると2Qの中国EC total の売上は大体15.0~16.1億円と推測できる。

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12月と1月の売上はどれくらいか?

Step 4: 次に1Q(8-10月)。1Q期間の売上は同様のロジックでの予測は不能。単純に通期ガイダンスの売上高+23%を参考に、1QなのでYonY +20%として10.4億円とする。(ブランドの成長を考慮すると保守的予想)

補足: ②の部分、JD.com の売上は参考値がないため無視。(実際は売上があるので、それを0円とするのは下値算出のための保守的考え)

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上記のStep1~4の考え方に基づき、中国のEC Totalの売上を皮算用してみると以下の通り。
1Q:10.4億円、2Q:15.0~16.1億円 上期:25.4~26.5億円

このあとに今年の中国EC比率をパラメータとして与えれば、会社全体の売上が予測できます。本来は中国サロンと日本の売上の予測がつけば、積み上げで推計したいのですが、それらの関連データがないため、こうした計算になります。
年々中国EC比率比率は上がってますし、この2021年も中国ECでの成長率が日本のそれを確実に上回っているでしょうから、今年の上期終了時点で73%-74%くらいまで増えていてもおかしくないと考えます。


5. 上期の売上をレンジで推計してみる

さきほどの章でざっくりと述べた以下の数字を使って、会社の上期売上をレンジで計算してみます。

■パラメータ1 Taobaoを含めたイベント中の売上金額は、2-2.で計算した金額①の1.3-1.4倍

■パラメータ2 売上全体における中国EC率 73%~75%

結果は以下の通り、 前年同期比 129%-138%程度と予想しています。これにJD.com の分が加わります。

下値を慎重に見積もっていますが、通期のガイダンスが 123%であることを考えると、もし上期を129%で通過ならば、上期123.4%、通期134.9%で着地した前年度以上の増加率で通期着地が見込めると思います。

ちなみに上記試算の下限の場合、中国EC Totalの売上高推移をグラフにするとこんな感じ(黄色が予測)。1Qはまったく根拠ある予測ができないので保守的予想ですが、ブランド力が上がっているならば、もっとよい数字になって見栄えが良くなるでしょう。

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四半期ごとの中国EC Total の売上高


会社としても2Qの大勢はW11が終われば判明しますし、1Q決算発表と同時の12/10に、上期の上方修正まで出してくるんじゃなかろうかと予測しています。ちなみにこの会社は前年度3Qのときに通期の上方修正を出したことがあり 、これが唯一の業績修正履歴です。(通期はそこから上振れ着地)

以上。
2Qの詳細が出るのは来年2月の3Q決算ですが、出たあとに上記計算のどの前提がずれたのかなど、検証もしてみる予定です。

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本記事はあくまで情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を勧誘するものではありません。投資にかかる最終決定はご自身の判断にてお願いいたします。皆様自身の意思決定に基づいて行われた投資により生じた損失等について、当方は一切の責任を負いません。



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