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五街道雲助「夜鷹そば屋」 無筆日記 第七筆

只今流行りの病のため自宅軟禁中。やることがない。

で、あらためて今、落語・寄席初心者への五街道雲助入門編の噺を挙げてみる。

ずっこけ
勘定板
死神
夜鷹そば屋

どれも寄席の尺で聴きやすい。人情噺「夜鷹そば屋」もあるし。特に「夜鷹そば屋」はもっと聴かれてもいいし、聴けばその世界観は、他の人情噺よりグッとくるところがあるはず。

だいぶ以前、雲助師匠がマクラで「山本周五郎の小説を噺に仕立てようと思ったが、上手くいかなかった」と話していたことがある(うる覚え)。実際やっている演者もいるかも知れないが、あまり成功した例を聴かないのは、周五郎のようなすでに完成された世界観に、落語の物語の手法が入っていく隙がないのだろう。

一方で雲助師匠の「夜鷹そば屋」、ご存知のように先代古今亭今輔の「ラーメン屋」の(はやりの言葉で言えば)「擬古典」化だが、そこには周五郎の世界に劣らない情景が思い浮かぶ。
冒頭の老夫婦の温かくもちょっと物哀しい会話、やさぐれた若い無宿者の登場から、グッと緊張感が昂まり、こころの琴線を爪弾かせ、涙腺を緩ませるラストへ。マクラを入れても30分もみたない尺。

誰かが、客席の薄い雨も新宿末廣亭夜席、トリのネタにピッタリだと言っていたが、大いに頷ける。

もし「雲助トリビュート」なるものがあったとしたら、ご一門以外でこの噺を聴きたいのは、柳家喬太郎師匠ですね。

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