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ハンドとレンジ

今回は中級者の方に向けて、レンジvsレンジによって考えるという方法を解説していこうと思います。
pokerを勉強しているとよく、「pokerはレンジで考えてプレーをするものだ」という説明を受けると思います。
実際レンジで考えるという能力は非常に重要で、中級者から上級者へのステップアップで欠かせない考え方です。

ただし、こう言った説明のほとんどはハンドvsレンジの考え方を述べているにすぎず、レンジvsレンジで考える事ができていません。

相手のレンジを考える事はできても、自分のレンジで考えてbetをするということができていないのです。

レンジvsレンジの戦い方を学ぶことでExploitをしてくる相手に耐えうる強固な戦略を作り上げ、GTOの理解を深めましょう。

当記事では
Lv1.ハンドvsハンド
Lv2.ハンドvsレンジ
Lv3.レンジvsレンジ

と思考を変化させながら、同じシチュエーションにおいて戦略(アクションといってもよいです)を考えていきたいと思います。
("vs"の左に書いてあるほうが自分です。)
自身の考え方がどのレベルかということを考えながら読んでいただければと思います。

Lv1.ハンドvsハンド

始めてpokerをプレーした人は、どのような人も常にLV1からスタートすると思います。

以下のようなシチュエーションを考えましょう。

あなたはBTNからQh2h(ハート2枚)でレイズをして参加をしたところ、SBはFoldし、BBがcallしました。
FlopはJJ2のレインボーボードで上画像のようでした。
あなたは以下の判断に基づきpotの33%betをしました。

Q2は2pairであり十分に強い
BBはPreflopでレイズをしていないため、強いハンドではなさそうである。

すると相手は(50%の)レイズを返してきました!

ここで、あなたはどうすればよいかわからなくなりました。

そこであなたは知り合いのpokerplayerにこのシチュエーションを質問して回ることにします。
もし聞かれたら何と答えるか?考えてから読み進めていただけるとよいと思います。

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さて、手始めに友達のAさんにこのシチュエーションを説明すると、次のような返答を得ました。

A「相手のハンドはJである可能性が非常に高いね。JTとかじゃないかな?
2でcallをしても勝ってるところはないと思う。Foldが正解かな。
付け加えるなら、相手がJだった場合はTurnRiverでQが連続で落ちないと捲れないし降りるしかないと思うよ。」

この考え方は正しいでしょうか?

非常に危険な考え方となります。

このAさんはまさにLv1の段階にいるのだと思います。
相手のハンドを数少ないアクションから特定のハンドに絞り込むことをスタート地点に持っていて、そのハンドに対して勝っているか負けているかで自身のアクションを判断しています。
実際、このアクションをとってきた相手がものすごく上手でGTO通りのプレーをしてきている場合、相手のハンドは20%程度の割合でJを含んでおり、
2hitやpocketに比べると、Jである可能性が高いのは確かです。

ただし、
相手が特定のハンドを持っている可能性が非常に高いこと
は、
相手がそのハンドを持っていると考えてこちらのアクションを決める
という結論を導きません。
この理屈を今説明すると気付いたらレベルアップしてしまうのでこの章では、上記のようにもっともらしい説明によりもたらされたFoldというアクションが誤りであるということを指摘しておきます。



上の画像はGTOWizardというサイトが提示する今回の推奨アクションです。
緑はcallを表しており、callのEVは1.11となっています。
貴方がここでFoldを選べば、1.11bbを捨てるということになります。

ではなぜもっともらしいと思われたAさんの説明は間違っていたのでしょうか?
最も大きな過ちは、
相手のハンドを特定のハンド(今回はJ)だと思い込んでいた
ということです。

バランスの取れたプレイヤー、GTOに忠実なプレイヤーというのは
「あるハンドでしか特定のアクションをしない」
ということはまずしません

基本的に適切なバリューとブラフを含んだ様々ハンドでそのアクションをしています。

上の画像の左側に表示されている%は、相手がどのようなハンドでレイズをしてきたのかを表しています。
25%のJhit以上に加えて、役なしやKhiも45%含まれていますし、2hitも3.7%では含まれています。
相手の様々なハンド、というよりその可能性全体、すなわちレンジを想定してこちらのアクションを決めなくてはいけません

もちろん、ショーダウンに行けば相手のハンドが何であったかは確定します。JTが出てくるかもしれません。しかしそれを見て
「やっぱフロップ降りるべきだったか」
という判断をすることは誤りです。
意思決定時点でわかるのは相手がそのアクションをとりうる可能性全体としてのレンジであってハンドではないのですから。
pokerはハンドvsハンドでショーダウンの勝敗を決めますが、各アクションはレンジに基づいて行われるのです。

Lv2.ハンドvsレンジ

さて、先ほどの話(Q2sを降りるかどうか)をPoker歴の少し長いBさんにしたところ、

B「Flopの安いcbに対して相手は幅広くいろんなハンドをレイズしてきていて、2でもそれなりに勝ってる可能性が高いんだよね。
具体的にはJhitに加えてQTのハート二枚みたいなバックドア(TurnRiver2連続で都合のいいカードが落ちたら強くなること)が沢山あるハンドもふんだんに含まれてるだろうし、2hitも一部回してるだろうね。
レンジで考えてアクションを決めるというのはとても大切なんだ。
Q2はEQで言うと40%は超えてくるんじゃないかな。だからコールをして、のちのストリートで継続してベットされたら考えればよいよ。」

というアドバイスをされました。
なるほど、さすがBさんです。説明も専門的になってきました。
この説明は上手いプレーヤーがよくする説明であり、実際のアクションも先ほど見た通り、正しいです。

しかし、このBさんもレンジで考えるという点ではまだLv2の段階にいるといえるでしょう。

どのような視点が不足しているのでしょうか?

あなたは続けてBさんにつぎのシチュエーションを質問します。

「別の状況でAK4のレインボーボードなのですが
BTNでopenし、K6のダイヤ二枚を持っていました。
このシチュエーションで125%のようなpotoverbetが推奨されることは知っていたのですが、Kでbetしたほうがよいのでしょうか?」

これに対してBさんはこう答えるのです。

B「いや、絶対打たないよ!
ここでも相手のレンジをしっかり考えないといけない。
相手の立場になって、K7とかK8を持ってると思ってみよう。
125%betを打たれたらここら辺は降りるかもしれないしcallするかもしれないね。KTを持ってたらどうだろう。コールするだろう。
Aを持ってたら?ほとんどコールするよね。
じゃあ4をもってたら?結構降りるんじゃないかな。
betした後の相手のcallレンジを考えると、K6でbetしてcallされたらほとんど負けているよね。
典型的に自分より弱いハンドを下ろして強いハンドにコールされるベットじゃないか!valueにもbluffにもならないbetはよくないよ。」

なるほど。非常に正しそうです。
実際価値のある指摘も多いでしょう。

ではGTOWizardを見てみましょう。

めちゃめちゃ打ってますね。。。
(赤部分でbetしています。)
Bさんの説明は何が間違っていたのでしょうか?
(一度止まって考えてみてください!)

あなたはGTOに詳しいと思われるCさんへこの質問をBさんと一緒に持っていきます。

Lv3.レンジvsレンジ

Cさんのもとへやってきて、このシチュエーションを質問しました。


すると次のような返答を得ます。

C「Kの一部をCoverageに回すからBD付きのKmiddleが採用されてます。ここを回さないとTurnでKがペアるとExploitへのEV損失が大きいんですよね。」

ちょっと何を言ってるのかわからないのですね笑
隣にいたCさんの友達が翻訳してくれるそうです。

Cの友達「自分のレンジの中でKのどこを打つのかという話だよね。
Kを2pairやKKでしか打たないとすると、TurnでKが落ちた時に、
相手はKを多くレンジに残しているのに、自分のレンジにはKが無いということになるでしょう。すると大きなpotで一方的にいじめられることになってしまうよね。だから仕方なく発展性のあるKの一部をbetに回すらしい。」
C「そうしないとExploitされるからね。」


なるほど。理解できました。でもこんな疑問が湧いてきます。

B「じゃあ何のハンドを持ってるときに打てばいいのさ。
Aでも打つ、Kでも打つ、役なしも打つ、結局全部打てというのかい?」

これに対しては地の文で回答をしましょう。

Bさんは
レンジで考えるというのなら、自分のレンジでも考えるべきなのです。
ハンドを見る前に、
今回であればKについてバランスのとった戦略を構築するべきなのです。

Bさんは常に自身のハンドをどうアクションするかを考えていました。

しかしながら、この方法では同じ性質を持つハンドがすべて同じ戦略になってしまいます
今回であればすべてのKhitはチェックになってしまうでしょう。

ハンドが配られていることは一回忘れてレンジが配られていると考えてください。

上のBTNopenのレンジのどこをbetしてどこをチェックするのかまず考えるのです。
実演してみましょう。

125%betを打たれた相手は下画像のレンジでcallをします。
これが相手のレンジを考えるということです。

こちらはこのcallに十分勝っているところと十分負けているが捲れるところでbetをしていきたいですね。

赤いところがベットしたいところでしょうか。
スーテッドハンドはフラッシュへと進展する可能性のあるものだけです。
しかしこれだと、

・betした場合
Kがあまりに少ない
フラッシュ完成ボードにならないと役なしハンドばかりになる。
・チェックした場合
強いAやフラッシュへの進展可能性があるハンドがあまりに少ない


という問題があります。

そこで

Kの一部をbetする
4hitを2pairへの昇格にかけてbetする
Aを頻度で打つことで相手の持つAを強くしすぎない
AAという相手がAを持ってる可能性を減らす強すぎるハンドをスロープレーする
フラッシュになりうるハンドも頻度で打つ。

という風に自身のレンジでバランスをとって、戦略を構築します。

そして上画像のように頻度が整います。
ここで初めて自分のハンドを見てKd6dであれば半分程度の頻度でベットするのです。

ハンドではなくボードとレンジから戦略を構築し、ハンドを最後に見てbetをする
これがレンジvsレンジで考えるという単語の意味なのです。

Lv4.「ハンドvsレンジで考える」と考える

ここからは少しレベルが上がるので、ここまでを理解できた人は進んでください。

皆さんはCさんの言っていた言葉を覚えていますか?

C「そうしないとExploitされるからね。」

このつぶやきは非常に重要です。
実は、ハンドvsレンジで考えてbetしても、
(GTO含む)相手の固定された戦略へEVを損失することはまずありません

というのは相手のアクションが固定されている場合、こちらの各ハンドのEVというのは残りのレンジでどうアクションしてるかに依らず、どのアクションをとるのかのみで決まります
(よく考えてみれば当然ですね!)

つまりは相手がこちらの戦略を機敏に察知して、Exploitをしてこないのであれば、Lv2とLv3は同じだということです。

ではなぜLv3を習得すべきというこのnoteが書かれているのでしょうか?

それはLv2で考えている人をExploitするためです。

相手が、Lv2の状態であると判断したとき、こちらはLv2とLv3の双方で相手の戦略を考え、その乖離を測ります
するとその乖離こそが相手のleakになっているはずです。
そのleakにつけ込むにはこちらがGTOを模倣しているだけではいけません。積極的にAdjustしExploitしていく必要があります

この時のExploitはカウンターを食らわないと想定されるのであれば
ハンドvsレンジで行うべき
です。

このExploitは非常に強力です。
相手がLv2で考えているということさえ知覚すれば
すべてのボードで実行できます。

具体例には踏み込みませんが、
Exploitとは相手の思考に対して行うものであると考えています。
また、そのためにGTOを理解し模倣できるようにする
これもまた非常に重要なことなのです。

この考えは
「ハンドvsレンジで考える」相手を考えて、自身は「レンジvsレンジor
ハンドvsレンジで考える」

ということになります。

まとめ

お疲れさまでした。
お読みいただきありがとうございます。
初めての登場人物付きの記事でした。皆さんの推しキャラは見つかりましたか?笑

レンジで考えるといいながらハンドで考えている文や発言を受けるたびに不満を抱いていたのでこれを機にレンジで考えるという意味と、その価値を認識していただけたら嬉しいです。

久々の記事投稿になってしまいすみません。いろいろ思うところもあり、書かなきゃと思いつつ時間が過ぎていました。
お布施やフォロースキ、本当にありがとうございます。ふとダッシュボードの数値を見て今回の記事も執筆を開始しました笑

記事の評価として受け取っていますので、良い記事だと思ったら応援いただけると嬉しいです。ほかにも書く内容のストックは山ほどあるのですが、結構大変なので。

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