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コラム:非生産性のススメ

自己研鑽、自己啓発、スキルアップなど、およそビジネス界で良しとされているものは、究極のところ、相対的な経済的富裕を目指すものだ。

自分もかつて、モチベーションアップセミナーに大金を支払い、そのエッセンスを吸収しようとした時期があった。「売れない者は悪である」との思考に、どっぷりと身を浸し、粉骨砕身していた時期から、体力の衰えと様々な経験を経て、ようやくこうした洗脳から解き放たれた。

公園のベンチで、ゆっくりと時を過ごす。樹々のざわめく音、子供たちの遊ぶ声を聞きながら、心地よい風にあたり、時折浮かぶ心情を俳句にする。

五感に神経を集中すると、見えなかったものが見えてくる。落ち葉の一枚を拾い上げ、それを指で触れてみる。葉脈を注意深く観察する。葉を落とした樹々が風に揺れる様をじっくり見てて、その音を聴く。自然と心が満たされていく。

どこどこの国の経済成長率が何パーセントなどのニュースを目にするたびに、果たして「成長」とは何かと考える。その踊り場なき階段を登りつめた先から見えるのは、一体どんな景色なのだろうか。

本屋の新刊本コーナーに並ぶ本の大半はノウハウ本だ。長ったらしいキャッチーなタイトルで読者を惹きつける。大衆は手っ取り早く成果を欲しがるから、出版社は、彼らから手っ取り早く金を吸い上げる仕組み作りに腐心していると思うのは穿った見方だろうか。

もっとも自分は、努力することを否定する者ではない。むしろ、若い頃の努力は、長い目で見て、どこかで自身に返ってくるものであり、自分もまた、若い頃の学びと経験の積み重ねがあって今の立場がある。また、いわゆる清貧の思想の持ち主ではない。むしろ、「貧すれば鈍す」を身をもって知る者である。

大切なのは、生きていく中で、物事の本質を見抜くこと、自分軸を失わないこと。自分にとって、真に価値のあるものに時間を割くことが肝要であろう。

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