阪大サークルオリエンテーション(サーオリ)における順路規制の行政学

「サーオリ」とは?

サーオリはサークルオリエンテーションの略で、大阪大学課外活動オリエンテーションのことを指します。200を超えるクラブ・サークルが豊中キャンパス(注:大阪大学)に一堂に会し、新入生に対して魅力を紹介するイベントです。

サーオリとは 大阪大学課外活動オリエンテーション
https://ou-orientation.com/about/

「注意」の市場としてのサーオリーーサーオリにおいて各アクターの求める資源ーー

・「注意」の消費者たるサークル側の動機は、新入生の注意(attention)という資源を最大限自団体に集中させること。
→この極致に、新入生をせき止め長蛇の列を形成する一部迷惑サークルが存在する。
・注意の生産者たる新入生の動機は、ミクロ的には自らの注意を自分の興味のある団体に集中させ、そうでない団体には注意を払わないこと→マクロレベルに平均化すれば新入生がその注意を各団体に平等に払うこととなる。

「注意」資源の分配者としてのΦ実

迷惑サークルの排除=「注意」資源の適切な分配の実現には次の二方法が考えられる。

a)市場原理

・新入生の通行を妨げたりする悪質なサークルは、新入生に避けられたり、新入生に注意されることにより市場から追放される。
→しかし、集団と個人、上回生と新入生という力構造から、新入生に市場原理の行使を期待することは無理があるし期待すべきではない。
・参加団体同士による自治に期待したとしてもそれはいずれ「Φ実2.0」となり、b)と同様の状態になる。

b)行政による資源の分配

 そこで、「行政」としてのΦ実が登場する。Φ実の規制による「注意」資源の分配が行われる。
その方法は、以下の4つである。
①周知戦略:規制措置の目的や趣旨を説明する方法。例は総会での説明や構成員用マニュアルの配布。
②制止戦略:物理的な装置により、自然に遵法行為に誘導する方法。例は規制テープや入場時のマイページ提示要求など。
③制裁戦略:違反行為に対する処罰行為。例はΦ実員による巡回・注意や出展禁止による脅迫。
④適応戦略:違反者の側に何らかの事情があった場合、規制措置の適応を差し控えること。行われる例は少ない。

出典:『行政学』著:西尾勝 有斐閣

Φ実の規制が孕む問題点

・「制止戦略」「制裁戦略」への傾倒

 「市民」=出展者と新入生、「行政」=Φ実の双方にとって、①<②<③の順で心理的負担・物理的コストが増大していく(④については市民にとっては最小、行政にとっては最大のコストとなる)。
こと大学祭という学生自治の場においては「行政」の存在は不可欠と言えど最小限に留められるべきである。
であるにも関わらず、②・③に傾倒し①・④を軽んじる傾向が見られる。
例:総会無断欠席に対する出展停止ペナルティ、ブース人数の例外なき3人制限等

・「依法主義」

 上記のことに関連して「依法主義」のきらいもある。 規則は何らかの目的を達成するために定められているが、規定の文言を忠実に遵守すること自体が目的であるかのように錯覚、手段の自己目的化に陥ることがある=「依法主義」

出典:『行政学』著:西尾勝 有斐閣

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