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哲学とか理論とか

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記事一覧

快楽を求めるための理性―「快楽主義」(エピクロス主義)の誤謬―


はじめに―「快楽主義」の誤謬― 「エピクロス主義」―高校で世界史を学習した者は、「禁欲主義」のストア派と対に覚えたことだろう―は、世に「快楽主義」として知られる思想である。「快楽主義」といえば、無秩序に快楽を求めるような堕落的な思想と捉えられがちであるし、エピクロス主義は実際歴史上そのように誤解されてきた。しかし、実際のエピクロス主義は堕落の対極にある。確かに、エピクロスは快楽の最大化を理想とし

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結局何が「自己責任」なのか?―社会構築主義とデカルトの実体二元論、「『自分』とは何か?」という問いについての一考―

思案の入り口 「学校・大学教育において、競争主義、能力主義、自己責任などの『勝ち組、負け組』の論理を導入することの問題点を挙げよ」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。後輩から「レポート課題のアイデアをください」と助けを乞われた私は、この問いに「『負け組』とされた人々が社会から疎外され、引きこもりや犯罪といった問題につながる」「そもそも『学力』はかなりの程度家庭環境や社会構造によって決定される

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「顔」は「自分」なのか?―アイデンティティーとストア派哲学、生得論についての一考―

風邪で寝込んでいる時に気づいたこと 先日、数日間風邪で寝込んでいたことがあった。外に出ることがないのだから当然身だしなみを整えることもなく、寝込み始めて3日目の夕方に差し掛かろうかというときであった。ふと、自分の「顔」というものの存在が脳裏をよぎった。普段は家の鏡とか、スマホの画面とか、ビルの窓の反射とかで数時間に一回は確認しているものであるが。そして、

ということを思った。

 思えば、自分の

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備忘録:ソシュールの記号論における「記号」(と『消費社会の神話と構造』における記号の定義)

はじめに 私は先日「希哲会」におけるボードリヤール著『消費社会の神話と構造』の読書会に参加させていただいた。

その中で、本書でボードリヤールが使用していた「記号」という単語の意味がいまいちつかめなかったため、簡単であるがリサーチしてまとめてみた。「記号」といえば、言語学だけでなく、(それこそボードリヤールのように)文化や経済の分析にも使われる概念である。そこで、今回は、希哲会にてリサーチの成果と

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