太宰治 きりぎりすを20代OLが読んだ感想

①骨董屋の但馬さん
この小説に出てくるキーマンの1人骨董屋の但馬さん。最初から売れると見込んで、見合い相手に相応しいと紹介し、見込みが見事に的中した。また、売れていない頃に金銭的に世話をしていたのも但馬さんだった。1度目に読んだ時は、但馬さんが人格者のように思えたが果たしてそうだろうか。私は、この画廊が売れるのも画廊と女性(わたし)を結婚するのも、但馬さんのエゴであったのではないかと思う。
実際にこの画廊は、有名になった時天狗になり、絵の品評をするようになってからも、特段良いことは言っていない。また、奥さんが言っていた話をそのままパクって、聞こえてきた奥さんが恥を書いたシーンも描かれている。実際にこの画廊の男自身は、有名になる器や実力が伴っていないのであろう。
この小説では分からないが、恐らく但馬さん自身も、この画廊が有名になることで利益があったのかもしれない。また、画廊が有名になったら調子に乗りやすい性格であるということも最初から見抜いていて長く世話をしていたのではないだろうか。

②女性の自己肯定感
ストーリーから分かるように、女性が結婚をしたら、専ら外で働けはしないし、家庭の中で、夫の言うことに口を挟むような真似もできない時代だ。現代では、仕事を通じて自己肯定感を見出すことが出来る女性も多くいる。私は、この小説の奥さんもきっとそのような性格の女性であると思う。「夫に尽くせる自分」と、「夫に経済的に寄りかかれる自分」の違いと葛藤が描かれている。

③人間の二面生
全体を通して、画廊の夫が売れてからそのような人とは思っていなかったのに、がっかりしたという内容が描かれている。それは画廊として売れる前と、売れる後で夫に対する見方が変わったということだ。現代の解釈として、所謂売れる前の「推し」の方が好きだったが、売れて世間の目に止まるようになってから、寂しい気持ちになってしまったのと同じ気持ちだったのであろうと感じる。

★全体を通しての感想★
・文豪が書いた作品は読みにくいイメージがあったが、太宰治の作品は短編が多いので比較的読みやすかった。
・主人公の気持ちが、現代人にとってもわかりやすい内容だった。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?