【高校数学】同様に確からしいってなに??



背景(どうでもいい人は読み飛ばしてください)

最近、確率統計の本を勉強していて気付きました。それは、

高校数学の「同様に確からしい」って、一様分布を仮定してるってコト!?

、、、です。どういうことかというと、高校数学における確率の分野では、確率的な事象が同様に確からしいことが仮定されていました。高校生のときは、「ふーん、まあそうすると便利なのかな」くらいに思っていました。しかし確率統計を学ぶ中で、同様に確からしいというのは、数ある確率的な仮定のうちのひとつにすぎないと気づきました。この記事で、確率における大前提、「同様に確からしい」の意味を再確認したいと思います。

同様に確からしいとは

 高校数学の教科書において、同様に確からしいとはこのように定義されています。

 どの根元事象が起こることも同程度に期待できるとき、これらの根元事象は同様に確からしいという。(数研出版より)

 要するに全部のできごとの起こりやすさはいっしょだよっていう主張ですね。例えばサイコロを例にすると、1から6までの目がでる確率は同じということです。これに加えて、全事象に対する確率が1、すなわち1,2,3,4,5,6のどれかが起こる確率は1にするルールを考えると、ある目が出る確率は1/6だとわかります。

「同様に確からしい」仮定は本当に確かか?

 例として東大に合格する確率を考えてみます。簡単のために、1年間に日本に生まれるこどもの人数を90万人とします。東大の合格者は毎年約3000人です。さて、あなたは令和○○年度に生まれたとき、東大に合格する確率はどれ程でしょうか。同様に確からしい仮定の下、考えてみると、どの人間も等しく受かるチャンスがあるので、その確率は、3000/100万=約0.3%です。つまり同世代の人が、高校卒業と同時に1000本中当たりが3本のくじを1回引いて、当たったら東大に入れるというわけです。

 これは現実を正しく表しているでしょうか。同様に確からしいという仮定を壊す要因をいくつか挙げてみます。(正しいかはさておき。)

  • 都内生まれか地方生まれか

  • 両親の年収が1000万以上かどうか

  • 勉学に対する才能をもっているかどうか

  • 高校から過去に東大合格者がいるかどうか

  • 衣食住の整った環境かどうか

  • そもそも勉強しているか

このように考えればキリがないほど、東大合格に影響しそうな要因があります。ここで何が言いたいかというと、都内生まれで、両親の年収が1000万以上で、勉学に対する才能をもっていて、高校から過去に東大合格者がいて、衣食住の整った環境下の生まれの勉強している人とそうではない生まれでは、現実的に合格確率が同じではないということです。つまり、同様に確からしいという仮定をおくと、このように全く状況が異なる人間を同一視して扱うことになります。東大合格確率を考えるには、同様に確からしいという仮定は不適切な感じがします。

なぜ数学世界と現実世界で誤差が生じるのか

 なぜ数学世界と現実世界で差異が生じるのか、その答えの本質は対称性にあると考えます。同様に確からしいという仮定は、全ての事象を同程度に期待する、すなわちその事象の背景にある情報を一切確率に考慮しません。上記の東大合格の例でいえば家庭環境が、事象の背景情報にあたります。ただ現実世界では非対称なできごとばかりです。その結果、そぎ落とされた非対称な部分の情報が丸め込まれることによって誤差が生じます。

同様に確からしいという仮定は使えないのか

 ここまでで、同様に確からしいという仮定の問題について議論してきましたが、ここからどう向き合うかについて述べます。結論は以下の通りです。

  1. 同様に確からしいという仮定が使えるまたは近似できる状況に限定する

  2. 状況ごとに場合分けして確率を考える

  3. 同様に確からしいという仮定の代わりを考える

 1については、さいころのような同様に確からしいという仮定が使える状況のみについて確率を考えることです。これは高校数学の確率で行われていることで、サイコロ以外にも、玉の取り出し、コイン投げ、トランプなど、だれが見ても対称性のある事象に限定して問題は作成されています。
 2については、高校数学でも扱う、条件付き確率が該当します。これは、分母を全事象ではなく、ある事象が実現した下で考えた確率でした。東大合格の例でいうと、(都内生まれで東大合格)/(都内に生まれる)によって、都内生まれか地方生まれかを明確に区別して扱うことができます。
 3については、同様に確からしいという仮定ではない仮定、すなわち事象によって確率が変化するモデルを考えることです。超有名なのでいうと、平均の近くでは確率が大きく、離れれば離れるほど小さくなる正規分布がその例です。

まとめ

 ここでは同様に確からしいという仮定について考えました。高校数学の段階では、同様に確からしいという仮定が数学的に正しい状況のみに限って問題が作成されました。しかしその仮定が合わない状況が現実にはあふれています。なにに対しても、確率=(注目している事象の数)/(事象全体の数)で考えるのではなく、一歩立ち止まって本質的な確率の意味を考えてみるのも面白いです。統計学には現実的な状況も数学的に表すパワーがあるところがすごいですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?