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タイミング

探している時には見付からない、助けが欲しい時には救いの手が伸ばされない、やりたいことがある時に限ってやりたくないことが山積み。
この世に蔓延るタイミングというものは、たいていバッド……悪いものだ。

そんなこんなで。
僕は、決められた時間に決められたように過ごすのが好きな質だ。厳格に、というわけではないのだが、概ね毎日同じような時間に同じようなことをしている。
それが崩れるのが嫌で、乱れると何かもやもやイライラきて落ち着けない。つまるところ、変化というものが嫌いなのだろう。
予定調和の中で生きていれば、心身共に安定していられるのではと。時折、どうにも単調過ぎて嫌気がさすこともあるのだが。自分から規定の行動を大きく変える勇気はない。
と、そんな僕である。
けれども、不意にそんな決められた行動を逸脱して、時刻表を無視することがある。
それはだいたい、何か心の中の引っかかりが自分の中で上手く消化できないときだ。外からの刺激によって、デトックスしようとしている訳である。
ふらふらっと本屋に行ったり、映画のDVDを物色しに行ったり。新しいものを自分の生活の中に持ち込んで、心の平穏を取り戻さんと彷徨う。
しかし如何なものか。
そんな時に限って、新しい風は入らない。風通しのいい吹き曝しの窓なのに、無風。
黴が生えそうな程、じっとり湿って荒れているのに、爽やかな新風はそんな暗さを巻き込まない。吹き飛ばして、宇宙の彼方にでも連れていけばいいものを、何もしない。
タイミングだ。
探し物は、探していない時に見付かるものだ。えてして。
だから、こうして一筋の希望というか、自分の中のもやもやを晴らす一粒の雫を血眼で探っても手に入らない。一番必要な時に、手元に差し出されるようなことがない。
もっと後かもっと前、全然意識を向けていない時にならヘンゼルが落としたパン屑並に分かりやすく目の前にあるのに。意識していないのだから、意味がない。
例えば、鬱屈した気持ちを、不可解な心や世界を、取り敢えずこんなもんだと受け入れられるようにしてくれる言葉が欲しい。だからそんな本を探したのに、見付からない。何度も読み返せば暗記できるくらいの、物凄く短い文章でも構わなかったのだけれども。
自分の言葉では自分を救えないのだから、他人に掬われたいと思って、時刻表を書き換えたのに。他人の言葉すら、僕を救うことはないらしい。
本当に、タイミングというのは嫌味な存在だ。
悩める若人を少し安らげるくらいしたって、誰も怒ったり詰ったりするまいに。人助けをしたいとは思わないのだろう。
まぁ、人間の都合など関係ないからこそ、運だとかツキだとか言うのだろうが。
そんなものに振り回されて、一喜一憂、五月病を拗らせる一人間のことを考えてもらいたいものだ。少しくらい。
…………まるっきり酔っ払いの戯言だ。絡み酒。
酒も飲んでいないのに、頭の中でアルコールでも作り出しているとでも。安上がりだ。
眠くて頭が回らない。
しかし、もうなんでもいい。
明日は、今日や昨日より、ちょっとはマシだと思って、目を閉じることにしよう。それがいい。
なんと言っても、今日はもうすぐ終わるのだから。

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