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#短編小説
妖の唄ー幸せを奪う神様ー
『なぁ、聞いてくれよー麒麟ちゃん』
麒麟、行きつけの屋台おでん『闘魂』でみすぼらしい爺さんが縋るように話を始める。
「はいはい、わかりましたよ……」
少々酒が回っていて軽い泣き上戸であるのか、爺さんは涙ぐみながら話す。
『色んなところを渡り歩いて決めたことがあってなーー』
このみすぼらしい爺さんの俗称は『貧乏神』
住み着いた所から金や幸せを奪い、不幸を置いていく。
人々から忌み嫌われた神様だ。
妖の唄ー宴の後にー【スズムラ氏コラボ】
「コン、飲み過ぎだ」
「何を言う?わらわには宵の口じゃよ?」
滔々と舞い降りてくる雪。
「まったく、幼女の姿で酒をがぶ飲みっていうそのギャップが……」
「萌えるじゃろ?」
静かな雪の夜に野暮な声。
「おー、楽しそうだねぇ……」
下賎の妖が絡んできた。
「去ね。わらわはこやつと呑んでおる」
「言うこと聞いた方がいいですよ??この方、こんな形してますけも古代の大妖ですからねぇ」
コンより妖力が放た
妖の唄ー死に逝く者への細やかな贈り物ー
ーー俺に死神がとり憑いた。
『鳥塚昭人』28歳。
『キミは死ぬ』
唐突に現れた女にこう告げられた。
何でもその女は死神らしい。
死が近い人間に対して、死の宣告をするのが仕事だそうで。
俺以外にはその死神は見えないとか。
視覚認識出来るのはとり憑いた俺か、やたらの霊感の高い人間くらいだと。
死ぬ事くらいわかってる。
『末期癌』なのだから。
ひとつだけ心残りがある。
『真希』の事だ。
付き合っていた
妖の唄ー酒に映る純朴な魂ー
ーー酒。
何故サケと呼ばれるかご存知でしょうか?
由来は3通り程あるようで。
1.『酒=栄え水』から変形していった。
2.『さける』という意味から。お酒を飲めば寒風邪気を避けることが出来るという『避ける』からきた。
3.『クシ』という古語から。
クシは『怪し』『奇し』
つまりは、木や石のくぼみなどに落ちた果実などが自然発酵して、その液体を飲むといい気分になれる。不思議な事だと『クシ』と呼ぶように
妖の唄ー妖が鬱ろう刻ー
夕暮れ時。
逢魔が時へと踏み込む瞬間。
ふと、妙な気分になったことはありませんか?
それはきっと。
あなたの後ろへ忍び寄って来ているのかもしれません。
秋深し。
街はひと足早めの冬支度を始める気配。
道端には落ち葉。
それを吹き上げる秋風。
街並みを行く人々。
その街並みで、『稲生彰史』は尋常ならざる疲れと苛立ちに襲われていた。
度重なる仕事のミス。
それに次ぐ残業。
更にはその残業のため、