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妖の唄

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呪符師『麒麟』の不思議なオムニバス形式の物語。 過去作3つありますが、こんな世界観で遊んでくれる方募集。 スピンオフも大歓迎✨ なんなら妖しいお話でもありあり(笑) 『タイト… もっと読む
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#短編小説

妖の唄ー闇の捕食者に闇の裁きをー

妖の唄ー闇の捕食者に闇の裁きをー

事務所で煙草を吸いながらほくそ笑む男、『飯塚伸次』は自分を救世主だと思っていた。

もはや誰も金を貸してくれない人達へ手を差し伸べるのは私だけなのだから……。
『貸した』のだから、『返して』くれよ。どんな事をしてもな。

どんな事をしても返してもらった。
身体の一部を金に変えたり、
風呂に沈んでもらったり、
海に沈んでもらったり、
問答無用だよ。

いつしか……。
事務所が妙な臭いが立ち込めるよう

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妖の唄ーエゴの果てにーその弐【スズムラ氏コラボ】

妖の唄ーエゴの果てにーその弐【スズムラ氏コラボ】

『西條邸』
立派な日本家屋。
余程の商才か、『ゆり』の力か。
門を潜るや否や、怒号が響いた。
「みなみ!今まで何処へ行ってた!ゆりはお前が居ないと言うことを聞かんのだぞ!!ん、誰だ?その男は」
拓磨が捲し立てて来るのをしり目に、
「奥の部屋に居るんだね?」
拓磨を無視してみなみに聞く麒麟。
「うん」
無視されたことに更に激高する拓磨。
「みなみ!ちょっと来い!」
かなりの勢いで娘の腕を掴み、引っ張

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妖の唄ーエゴの果てにー【スズムラ氏コラボ】

妖の唄ーエゴの果てにー【スズムラ氏コラボ】

「助けてください……」
ようやっと探し当てた喜びとそれまでの疲労が溜まりに溜まって、掠れた声で助けを求めて来たこの娘はとある地方に財を築いた『西條家』の娘、『西條みなみ』高校生だ。
「おやおや、随分と遠くからお越しのようで」
麒麟は街中での占い師スタイルよろしく、小さいテーブルを出して、腰掛けて言った。
「どちらでわたしのことを?」
「座敷わらし様から」
「おやおや、懐かしい名前だねぇ、『ゆりちゃ

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妖の唄ー幸せを奪う神様その弐ー

妖の唄ー幸せを奪う神様その弐ー

『オラが憑いているだけでオラの異能は無差別に発動する。オラが意図的に不幸を呼ぶことは出来ねぇ』
「ん、聞いたことあるよ」
『その母子には申し訳ないんだが、その大変な暮らしをしている母子達の『幸せ』ってのは何なのか知りたくなってな』
「源さんが憑いてることで、その母子から何が消えていくのか知りたくなったわけか」
『そう、話が早いなぁ、麒麟ちゃん』
源さんは日本酒をチビリと口へ。
『憑いて歩いてたら、

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妖の唄ー幸せを奪う神様ー

妖の唄ー幸せを奪う神様ー

『なぁ、聞いてくれよー麒麟ちゃん』
麒麟、行きつけの屋台おでん『闘魂』でみすぼらしい爺さんが縋るように話を始める。
「はいはい、わかりましたよ……」
少々酒が回っていて軽い泣き上戸であるのか、爺さんは涙ぐみながら話す。
『色んなところを渡り歩いて決めたことがあってなーー』

このみすぼらしい爺さんの俗称は『貧乏神』
住み着いた所から金や幸せを奪い、不幸を置いていく。
人々から忌み嫌われた神様だ。

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妖の唄ー宴の後にー【スズムラ氏コラボ】

妖の唄ー宴の後にー【スズムラ氏コラボ】

「コン、飲み過ぎだ」
「何を言う?わらわには宵の口じゃよ?」
滔々と舞い降りてくる雪。
「まったく、幼女の姿で酒をがぶ飲みっていうそのギャップが……」
「萌えるじゃろ?」

静かな雪の夜に野暮な声。
「おー、楽しそうだねぇ……」

下賎の妖が絡んできた。
「去ね。わらわはこやつと呑んでおる」
「言うこと聞いた方がいいですよ??この方、こんな形してますけも古代の大妖ですからねぇ」
コンより妖力が放た

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妖の唄ー出来損ないの死神に鎮魂歌をー【sanngoさんコラボ】

妖の唄ー出来損ないの死神に鎮魂歌をー【sanngoさんコラボ】

今、ひとりの心優しい死神が逝った。

偽の宣告書を掴ませられ、残酷に逝った。血にまみれた優しい死神に泣き崩れる美鈴の元に現れる黒いスーツの男。

美鈴は間近に居るその男の気配を目に映るまで気付かなかった。

「だれっ!?」
「麒麟と申します。立派でした。犬という生き物は受けた恩を決して忘れないと言います。転生という鎖に縛られてもなお、貴女を守ろうとした」
泣く美鈴。

麒麟は怒っていた。
かつてな

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「短編小説」出来そこないの死神 【まくらさん共同マガジン企画】

「短編小説」出来そこないの死神 【まくらさん共同マガジン企画】

「因果な商売についちゃったよな…」
ビュービューと冷たい風が吹き荒ぶ古い病院の屋上でレオは煙草をふかしていた。
デコボコになったむき出しのコンクリートの床が建物の古さと朽ち落ちていく物の哀愁を感じさせる。
此処は旧病棟ビルで、もうすぐ取り壊しが決定している。入院患者達は新しいビルの方へ既に移転していて、後は事務関係の書類を運び出す段になっていた。
だから、煙草を吸っても文句を言う奴はいない。
いや

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妖の唄ー死に逝く者への細やかな贈り物ー

妖の唄ー死に逝く者への細やかな贈り物ー

ーー俺に死神がとり憑いた。
『鳥塚昭人』28歳。
『キミは死ぬ』
唐突に現れた女にこう告げられた。
何でもその女は死神らしい。
死が近い人間に対して、死の宣告をするのが仕事だそうで。
俺以外にはその死神は見えないとか。
視覚認識出来るのはとり憑いた俺か、やたらの霊感の高い人間くらいだと。

死ぬ事くらいわかってる。
『末期癌』なのだから。
ひとつだけ心残りがある。
『真希』の事だ。
付き合っていた

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妖の唄ー酒に映る純朴な魂ー

妖の唄ー酒に映る純朴な魂ー

ーー酒。

何故サケと呼ばれるかご存知でしょうか?
由来は3通り程あるようで。
1.『酒=栄え水』から変形していった。
2.『さける』という意味から。お酒を飲めば寒風邪気を避けることが出来るという『避ける』からきた。
3.『クシ』という古語から。
クシは『怪し』『奇し』
つまりは、木や石のくぼみなどに落ちた果実などが自然発酵して、その液体を飲むといい気分になれる。不思議な事だと『クシ』と呼ぶように

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妖の唄ー妖が鬱ろう刻ー

妖の唄ー妖が鬱ろう刻ー

夕暮れ時。
逢魔が時へと踏み込む瞬間。
ふと、妙な気分になったことはありませんか?

それはきっと。
あなたの後ろへ忍び寄って来ているのかもしれません。

秋深し。
街はひと足早めの冬支度を始める気配。
道端には落ち葉。
それを吹き上げる秋風。
街並みを行く人々。
その街並みで、『稲生彰史』は尋常ならざる疲れと苛立ちに襲われていた。

度重なる仕事のミス。
それに次ぐ残業。
更にはその残業のため、

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