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コーヒーブレイク。

大学の講義も、バイトのシフトもない至福の時間を過ごしている。半分だけ開く窓からは穏やかな風が僕の部屋へ。


気温も徐々に上がり、少しずつ夏が近づく気配がしているそんな晴天の今日。


僕はインスタントコーヒーの入ったマグカップを机に、座り心地が抜群なソファに座って小説を読んでいる。


一口啜ったブラックの苦味が好きになったのもつい1年前から。


中学生の時には死ぬほど嫌いだったこの味が好きになったのも、僕が大人になったからなのかな。


そんなことを考えながら過ごす午前11時。



はぁ、、、至福の時間だ、、、


僕はこの幸せな時間に思わず笑みがこぼれてしまう。


しかし、この幸福もある人物の来訪によってぶち壊されてしまうのだった。



ピンポーン、、、ピンポーン、、、!!



毎週、決まってこの時間に僕の部屋に来るあいつ。大学生にもなってコーヒーも飲めないあいつが来た。


〇〇「もう少しゆっくりしたかった、、、」



僕は重い腰をなんとか上げ、玄関の鍵を開けに行く。


玄関脇に置いてある鏡を一瞥、口角の上がっている僕の顔が写った。


面倒なはずなのに、今日もあいつが来てくれた事に嬉しさを感じているらしい。


ガチャッ


僕は玄関の鍵を開けて、あいつを部屋に入れる。

岩本「もー!なんでいつも鍵閉めるのー!!
   毎週ここに来るの分かってるくせにー!」

岩本蓮加。

中学からの友達であり、大学も一緒のところに進学している。


僕は大学から徒歩5分と近い場所に一人暮らし。


そして蓮加は大学まで1時間弱かかる実家暮らしである。


そのため、蓮加は空きコマや暇になったら僕の部屋に遊びに来る。


〇〇「もし泥棒みたいな人が来たら危ないじゃん。
   だから鍵閉めてんの。」


蓮加「私のために空けといてよー。
   いつもくる時間はわかるじゃーん!」

頬を膨らませて抗議する蓮加。高校からの子供っぽさは大学生になっても継続しているようだ。



〇〇「はいはい、、、お昼は食べた?」


蓮加「まだ!なんか作って欲しいなぁ〜♪」


〇〇「和か洋で言ったら?」


蓮加「うーん、、、洋!」


〇〇「おっけ。ちょっと待っとけ。」



僕の父親はレストランを経営しており、中学や高校時代は厨房を手伝ったりしていた。


だから料理はそこそこ得意。



蓮加「じゃあその間に洗濯物でも畳んどくね〜。」

〇〇「おー。」


僕が料理を作っている間、蓮加は他の家事をやってくれている。部屋を片付けたり、掃除機をかけたり、、、


あいにく僕は料理気以外の家事スキルを持ち合わせていないので結構助かっている。


蓮加「ふんふ〜ん♪」



どうも〜♪

絶賛、〇〇の洗濯物を畳み中の岩本蓮加です!

大学に入ってから毎週の火曜、金曜は〇〇のお家にお邪魔してます♪


それは実家が遠いから帰れない、空きコマを埋めるため、お昼ご飯を貰うため、、、


まぁ色々な理由があるわけですが、1番の理由は〇〇に会うためです!

実は、ここだけの話、、、


〇〇には中学の頃からの片想いなんです!


なんか一緒にいるうちに好きになっちゃって、、、///


〇〇は一緒に歩いてる時は絶対に車道側を歩くし!

私が疲れちゃった時は黙って隣にいてくれるし!


作ってくれるご飯もすごい美味しいし、、、///


とにかく〇〇のことが大好きなんです!


でも、今まで色んなアピールをして来たけど〇〇は何にも気付きません、、、


例えばそうだなぁ、、、


これは高校の時のお話!


〇〇「はぁ、、、コーヒーうめぇ、、、」


おっと、あそこでブラックコーヒーを飲みながら黄昏てる〇〇がいますね。


、、、横顔もかっこいいなぁ///


あっ、そうじゃない!


早速〇〇にアピールをしに行きましょう!!



蓮加「〇〇ー!なにしてるのー?」

いつもよりワントーン声色を上げ、少し上目遣い気味に問いかける。


普通の男の子だったらドキドキするんだけど〇〇は違うんだよなぁ。



〇〇「ん?コーヒー飲みながらボケーっと。」


蓮加「うげ、、、またコーヒー飲んでるの?」


〇〇「蓮加みたいな子どもには分からんよ〜笑。」


笑いながら言う〇〇に少しイラっとする。
私だってもう大人だもん!!



蓮加「もう!またそんなこと言ってー!」

〇〇「そーゆう顔する所が子供っぽいのー。」



私の膨れたほっぺを人差し指で空気を抜く〇〇。



蓮加「むぅ、、、ちょっと頂戴!!」


〇〇「あっ、おい!」



私は〇〇から強引にコーヒーを奪い取り、ちょっと飲んでみた。

、、、、、、苦い。



蓮加「口の中が変な感じするぅ、、、」


〇〇「蓮加ちゃんにはまだ早いよ?
   ほら〇〇さんに返しなさい。」


蓮加「むぅ、、、」



そう言って〇〇もコーヒーを一口。



、、、、、、あれ?


これって間接キスってやつだよね///


〇〇は私が飲んだことを気に留めないようにコーヒーを飲み続ける。


これじゃあ私がドキドキしちゃってるじゃん!!


って言う感じに上手くいかないんだよね〜。


いっつも逆に〇〇のかっこよさに、、、///


まぁそんなことは置いといて!!


とりあえず今日も攻めるぞ〜♪


蓮加「そだ!今日さ、お泊まりしてもいい?」


〇〇「は?」


蓮加「実はママと喧嘩してて帰りづらくて、、、」



そんなのしてないけど♪




〇〇「へぇ、、、まぁ蓮加がいいなら。」


蓮加(やった!〇〇とお泊まりできる〜♪)

〇〇「っていうか、やけに荷物が多いと思ったら
   最初から泊まるつもりだったろ?」


蓮加「おっ、よく分かってるね〇〇〜♪」


〇〇「このやろ、、、」



〇〇は呆れてるようだけど、泊まれるならもうこっちのもんだよ〜♪


私たちはあれから一緒にゲームをしたり、一緒にご飯を食べたり、一緒にお風呂に入ったり、、、は流石に無理だっけど。


アピールはしてるんだけど〇〇に効いてる様子が一個もないんだよなぁ、、、


ゲームの時は〇〇の膝に足をかけてみたり。


勝ったら抱きついちゃったり。


ご飯の時はあーんってしてみたり。


なんでこんなに私に無関心なんだよぉ、、、


そして今、〇〇は食後のコーヒー、私はジュースを飲んでゆったりしてる。



蓮加「〇〇って本当にコーヒー好きだよね?」


〇〇「まぁ落ち着くからね。」


蓮加「え〜、それだけ?」


〇〇「まぁ、、、大人っぽく見せるためかな。」


蓮加「??」


〇〇「やっぱ覚えてないよな笑。」


蓮加「何かあったっけ?」


〇〇「いや蓮加が中学生の時さ、、、」


僕は1人で学校からの帰り道を歩いていた。


すると、近くの公園から聞き馴染みのある声がしてきた。


公園の中を背伸びして覗くとクラスメイトの大園桃子、そして蓮加がベンチに座っていた。


大園「蓮加って好きなタイプとかあるの?」

蓮加「好きなタイプ?」

話してる人が他の同級生だったら、僕は足を止めることなく家に帰っていただろう。


しかし、話してるやつが蓮加だと気づいた時、僕は足を止めてしまった。


理由はなんとなく分かっているけど。


僕は蓮加から見つからないように、近くの茂みに身を隠した。


蓮加「そうだなぁ、、、
   強いて言うなら大人っぽい人かな?」


大園「なんで?」


蓮加「私が子どもっぽいからかな笑。
   だから少し憧れてるのかも?」


大園「そっか〜。」


蓮加「まぁ1番はあいつだけど、、、///」ボソッ


大園「だよね〜笑。」



え?

なんて言ったんだ??

最後に蓮加がボソッと何かを呟いたように聞こえたが、距離的に聞こえなかった。



蓮加「ってやば!
   今日はママと約束があるんだった!」



そう言って蓮加は桃子に「バイバイ!」とだけ言って足早に去っていった。



〇〇「大人っぽいかぁ、、、」


大園「コーヒーでも飲んでみたら?」


〇〇「何でコーヒーなんだよ、、、え?」


大園「なんか大人っぽい感じするじゃん!」

〇〇「はっ!?」


大園「盗み聞きは良くないぞ〜?」


〇〇「いつから気づいてた?!」


大園「〇〇が来た時から?
   まぁ蓮加は気づいてなかったみたいだけど。」


〇〇「なら良かった、、、」


大園「やっぱり〇〇もかぁ。」


〇〇「は?」


大園「なんでもな〜い。
   それじゃあ大人っぽくなる様に頑張って〜♪」


〇〇「ってのがあったからコーヒーを飲むように
   なったの。」


蓮加「ふーん、、、えっ?」


〇〇「なんだよ、、、///」


蓮加「もしかして私の好きなタイプになろうとして
   コーヒー飲み始めたの?」


〇〇「、、、そうだけど。」


蓮加「、、、あっはは!」

〇〇「なっ、、、笑うなよ、、、///」


蓮加「だって、、、可愛いじゃん、、、笑。」



どんどんと真っ赤になっていく〇〇の顔。

いつも余裕な感じを出してたから少し新鮮で可愛い!



蓮加「ありがと!」


〇〇「え?」


蓮加「〇〇が私を何でも受け入れてくれる所とか
   帰るのが夜遅くなったらちゃんと駅まで送って
   くれる所とかすごい好きだよー!」 


〇〇「、、、そっか///」


蓮加「まぁコーヒーを飲み始めた理由は子どもだけど
   そんな〇〇が昔からずっと好き!!」



私は顔が赤くなった〇〇に抱きつく。


今度はゲーム中のどさくさじゃなくて真正面から。


〇〇は少し震えながら私を抱きしめ返してくれる。


机の上には湯気のたったコップが2つ。


今度から私もコーヒーを飲んでみよっかな〜♪


え?
コーヒーは飲めないんじゃないかって?

だって好きな人が好きって言うんだから気になるじゃん♪

それじゃあ一口、、、、、、にっが、、、、、、、、、


〈後日談〉


大園「、、、、、、長すぎだよ。」

蓮加、〇〇「「え?」」


大園「中学生の時から蓮加の恋バナ聞いてたから
   やっと付き合ったかと、、、」


蓮加「ちょっ!桃子やめてよっ!!」


〇〇「へぇ、、、続けて?」


大園「体育の〇〇がカッコよかったとか、、、」


〇〇「ほぉ、、、」


大園「〇〇のコーヒー飲んじゃった〜とか、、、」


〇〇「そっかそっか、、、笑。」


蓮加「、、、、、、///」


〇〇「ほんと好きだね、僕のこと。」


蓮加「、、、うるさいっ!大好きだよっ!!」

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