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遺品の数は愛と比例するか

空になったシャンプーボトル
広くなった浴室の棚
使われないものが一つ減り
浴室が貴女を忘れていく

追い立ててくる消費期限
区画整理を迫る食器棚
使わないものを追いやって
台所が貴女を忘れていく

そうやって、忘れていくのか
色褪せていく靴達を
ぶら下がったままの服達を
干からびた歯ブラシを

そうして、忘れていってしまうのか
貴女がいた日々を
貴女が生きた足跡を
小さな仏壇に留めてしまうのか

わからない
死の乗り越え方など
忘れていく
それで乗り越えたことになるのか

わからない
死を引き摺らずに生きる術など
いつまでも引き摺って
引き摺られるのが人間だろう

わからないまま
一つずつ忘れていく
私の心にしか残らない
まるで夢であったかのように

だからまだ
片づけられずにいる
貴女の遺品の数が
貴女への愛と比例している気がして





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