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死刑囚に手紙を書いた話


もう覚えていない人が多いかもしれない。
2013年に起きた山口連続放火殺人事件

山口県周南市の山間部、
人口12人(当時)の小さな限界集落で
起こった殺人放火事件だ。

犠牲になったのは、
集落に住んでいた住民5人。

5人を殺害した犯人宅に貼られた
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という
川柳のインパクトは凄まじく
集落は「平成の八つ墓村」とも呼ばれた。

事件を起こしたのは、
犠牲者のうち1人の隣家に住む、
Uターン組の男・保見光成死刑囚(当時63)。

集落の中で村八分にされた
復讐劇だと言われたが、
それは彼には「被害妄想癖」があると
最高裁でも認定されたようだ。

私は“裁判傍聴〟というものを
何度か経験したが、
罪を犯してしまう側にも
様々な境遇や人間模様がある事を
目の当たりにした。

被告人にも家族がいる。
恋人や友達もいただろう。
貧しい環境で育ったり
親から愛されなかったり、
人生は残酷だ。

言っておくが、
決して犯罪を肯定してるわけではない。
犯罪者を擁護する気もない。
しかし、、、

私だって、今はとりあえず理性が働き、
たまたま一線を超えていないだけで
どうなってしまうか、自信はない。

自分の欲のために犯すケース。
自暴自棄になり、面識もない人々を
無差別に傷つけたい輩がいる。

或いは、状況がそうさせてしまう、
不幸な条件がたまたま重なってしまった
ケースがある。

この死刑囚に我が身を重ねてみたら、
想いを寄せている自分がいた。

私は田舎が大嫌いだ。
自分の育った田舎に
いい思い出など何ひとつない。

田舎には田舎ならではの独特の
関係性が形成されている。

都会からの流入、Uターン者には
歓迎するとPRしておきながら
実は排他的だ。

村の掟やいまだ変わらぬ
古いしきたりに馴染めない奴は追い出す、
あるいは嫌がらせをして自ら出ていくように
仕向ける。

閉鎖的で排他的な生きづらさ、
相互監視社会で生きていくのは
諦めでしかない。

呼吸をするように言い合う悪口と噂話。
妬み、僻み、否定、嫌味、、

そんな村社会で育った私は
あの社会に二度と身を置きたくない。

地方移住や田舎暮らしが美化されているが、
やめとけ、と言いたいぐらいだ。
楽しいものではない。


話しは戻り、
この死刑囚に2年続けて手紙を書いた。

事件のことには一切触れず
クリスマスカードと共に
「穏やかで安らかなひとときを
お過ごしください、、、」
みたいな短い文言だったと記憶している。

それにしても、事件に至った
このような経緯を証拠づけるのは 
容易いことではない。

彼の「被害妄想」だと結論づけられたのは
さぞ無念だろうと思う。

しばらくして担当の弁護士から
お礼の手紙が届いた。

本人に渡すことはできないけれど
ガラス越しに読んで聞かせたそうだ。
感想までは書かれてはいなかった。

私には何もできないが、
理不尽な境遇と不運とでも言うべき
彼の人生に涙が流れた。

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