宮本浩次さんはまれびとでありほがいびと?


今年7月に開催されたap bank fes'23
〜社会と暮らしと音楽と〜
9月にU-NEXTでライブ配信があり、アーカイブ期間もありましたので、宮本浩次さんファンの私は何度も視聴を楽しみました。

有料のライブ配信番組とは別に、ap bank fesの一部ステージの映像と、ap bankの活動、久しぶりにお客さんを入れてのライブ開催について小林武史さんが話す映像があり、視聴しました。
その中で小林さんは、ライブを行う自分たちのことを(まれびと)と話していました。
「まれびとという言葉がありますね、獅子舞とか…」

小林さんがおっしゃった(まれびと)とは?
どこかからやってくる人のことなの?

今回のnoteは、
ap bank fesのステージを観て思ったこと、
ファンである宮本浩次さん、エレファントカシマシのコンサート活動について、
以前から気になっていた(まれびと)(ほがいびと)という古い言葉と、現代活動する音楽家について感じたことを書きます。



随分と前ですが、NHKのドキュメンタリー番組で作詞家なかにし礼さんが、(ほがいびと)という人たちが芸能人のルーツと話されていました。
はじめて聞く不思議なその言葉には、なぜかひきつけられるものがありました。

2022年10月に、Eテレの番組[100分で名著]で
【折口信夫"古代研究"】が取り上げられたことがあり、毎回興味深く楽しみに視聴していました。
番組の中で久しぶりに(ほがいびと)という言葉を聞き、(まれびと)という言葉も出てきました。

今回noteを書くにあたり、本を読みました。
【折口信夫「まれびと」の発見】
折口信夫の100分で名著放送時、解説をされていた上野誠さんの著書です。

ap bank fes'23のステージ、小林武史さん率いるbank bandは、宮本浩次さんほか、アーティストの演奏をつとめていました。
その演奏は聴いていてなんともあたたかいというか、包み込むような魅力を感じ、こんなことを頭の中で想像しました。
「bank bandで宮本さんやほかのアーティストさんと一緒に全国あちこち回ってくれたらいいのにな。」

2021年10月
宮本浩次さんのTOUR 2021〜2022 日本全国縦横無尽47都道府県ツアーが埼玉県・川口リリアからスタート。
2022年6月
山口・周南市文化会館で全公演を終了。
各地のコンサートは大いに盛り上がりました。



【折口信夫「まれびと」の発見】より
(まれびと)
(まれびと)は稀に来る人、遠くからやってくるお客さん。(まれびと)の中には神のような存在の人物もおり、きわめて大切にされる存在だった。とあります。
(ほがいびと)
物語を語る琵琶法師など、芸能を披露して諸国を歩く人びと。「ことほぐ」人、すなわち祝福する人が(ほがいびと)

bank bandの演奏で櫻井和寿さんが歌う、
よく来たねという歌です。

よく来たね 大変だったんじゃない
遠方まで疲れちゃったんじゃない
こんなにいいお天気だから
今年もいっぱい遊ぼう

ap bank fesは、静岡県のつま恋という場所で開催されたので、演者も観客もどちらもその場所に足を運んでいるのですが、bank bandの皆さんは観客席で待つ観客のもとにやってきた(まれびと)達で、上記の歌からも明らかにbank bandは観客を「ことほぐ人」(ほがいびと)だなぁと思うのです。
私は演奏をするbank bandの皆さんがとても素敵に感じて、全国に(まれびと)(ほがいびと)として来て欲しい!という気持ちになりました。



宮本浩次さんは2021年〜2022年にかけて、
全国47都道府県、地域の文化会館やホールに来て、コンサートを行ってくれました。
住まいの近くの会館で公演を開催してくれるのはとてもうれしいことでした。
まさしく地域にやってきた(まれびと)です。

ツアーの中で歌ってくれた
「ハレルヤ」という曲があります。

信じてみようぜ 自分
ゆくしかないなら today
Please please please
強くもなく弱くもなくまんまゆけ
中略
ばからしくも愛しきこの日々を
ああ涙ぢゃあなく勇気とともにあれ
ああ笑いとあれ幸あれ

この歌は、励ましというひとことでは言えない、大きな愛のようなものを感じます。宮本さんは観客をことほぐ(ほがいびと)なんだなと感じます。

2023年3月〜4月にかけて、
エレファントカシマシは活動35周年として
神奈川・横浜アリーナ、東京・有明アリーナ、
愛知・日本ガイシホール、大阪・大阪城ホールにおいて初のアリーナツアーを開催しました。
(2023年9月「35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO」2023年3月21日有明アリーナ公演を収めた映像作品が発売されました。)

各地のアリーナ会場に私も足を運びました。
この公演で、ステージ上に現れた宮本さんは
フード付きの白い衣装を着て登場。
ギターを弾き歌い始めました。
真っ白の衣装はとてもまぶしく、フードをかぶって着て顔の見えない姿は不思議で、なぜこの衣装なんだろうかと思っていました。

【折口信夫「まれびと」の発見】
この本を読んで、あっ!と思ったところがあります。

(まれびと)がどのような姿でやって来るのか?
その姿の一つとして、蓑笠を着たままで家の中に入るということがある。人の家に蓑笠を着て入っていくのは礼儀違反だが、(まれびと)の場合は受け入れられる。

この部分を読んで、コンサートのはじまりでフードをかぶった白い衣装を着て現れる宮本さんと通じるものがあるんじゃないかと感じました。
(まれびと)としか言いようのない姿でコンサートが始まったんだな、とその姿を思い出しています。



現代に生きる音楽家も、いにしえから続く文化というか役割、そのことを意識して活動しておられるのではないか?と感じたことを書きました。
その音楽を受けとる私は、びっくりしたりしながらも、いつもとても楽しんで聴いています。

読んでくださった方、ありがとうございます。

参考、引用文献
上野誠著
折口信夫「まれびと」の発見

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