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エロティカの意味もわからずに【音楽の神様に乾杯!~サザンと僕の30年ほどの逢瀬の日々~①】

『我はエロティカ・セブン』

このフレーズを聴いた僕の頭には、ファイブマン的な戦隊もののヒーローが浮かんでいた。エロティカの意味もわからずに。

僕がサザンを好きになったのは小学生のとき、テレビから流れてきた『エロティカ・セブン』がきっかけだった。僕の母親は大のテレビっ子で、特に歌番組やドラマが大好きだった。『エロティカ・セブン』はドラマ『悪魔のKISS』の主題歌として大ヒットしたが、当時の僕がその番組を観ていたのか記憶は定かではない。というのも、調べてみると『悪魔のKISS』はなかなかアダルティーなドラマで、小学4年生の男児が夢中になって観るような内容でないと思うからだ。

歌番組かドラマか、発信源はわからないけれど、とにかくテレビから流れてきた『エロティカ・セブン』に僕の心は撃ち抜かれた。衝撃的な出会いを「まるで雷に打たれたよう」とよく表現するけれど、思い返せば、まさにそんな感じ。一度聴いたメロディーが何度も何度も頭の中を駆け巡り、『我はエロティカ・セブン』のフレーズに痺れる。もしかしたら、人生で初めて“中毒”に犯されたのかもしれない。それくらい『エロティカ・セブン』の虜になり、サザンオールスターズというバンドが大好きになった。

もうカラオケには何度行ったかわからないけれど、私の記憶が確かならば、初めて歌ったのも『エロティカ・セブン』だ(いや、米米CLUBの『君がいるだけで』だったかも……。このエッセイでは『エロティカ・セブン』だったということで押し通そう笑)。

小学4年生だった僕は、なんとなくの妖艶さを感じつつも、恥ずかしがるほどマセてはいなかった。もしも年頃だったなら『エロティカ・セブン』が好きだと公言するのも、『我はエロティカ・セブン』と人前で高らかに歌うのも、憚れたのかもしれない。そう思うと、余計な知識を得る前の時期に『エロティカ・セブン』に出逢えたことは幸運だったし、僕からすれば運命的だった。

その2年後、小学6年生の春に『マンピーのG★SPOT』という今ではライブで定番の名曲がリリースされ、『エロティカ・セブン』に続いて僕は大いにハマった。まだまだ子どもだった僕は、『THE夜もヒッパレ』で紹介された「マンピーというのは『萬田久子』と『ピーター』らしい」という嘘かハッタリかわからないエピソードを真に受けて、母親にマンピーの意味を嬉々として説明したりもした。微笑ましい思い出だ。

ちなみに『芥川龍之介がスライを聴いて“お歌が上手”とほざいたと言う』というフレーズは、桑田佳祐が作った歌詞の中でもトップクラスにイケてると思っている。「芥川龍之介」という教科書で習う偉人に対し、「ほざいた」という汚い動詞を付ける。思春期前夜、僕に芽生えかけていた反骨心の火種を、桑田佳祐はたった一節で煽ってみせたのである。

(つづく)

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