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「人生で一番刺さった小説」に手が伸びた30歳の私。

「転勤したとき、遠距離で付き合ってた3つ上の彼女いて、向こうは結婚したがってたけど、僕的には、まだ早かったから別れたんよね〜」
「にしても、今年だけでも6つも結婚式あって、さすがに応えるよね。僕も、いつかは結婚したいけどね笑」

今月、大分に転勤した。
転勤先の違う部署のちょっとイケメンな先輩とサシ飲み。
仕事の話を一通りしたら、こんな話になった。
先輩は、偶然にも私と同い年、30歳だった。
この年になると、なかなか不可避のこの話題。

次の日、SF小説を探しに本屋をぷらぷらしてたら、目をひいた帯をまとった小説に手が伸びた。

「人生で一番刺さった小説」
今っぽい手書きでキャッチコピーのこちらの本。

「傲慢と善良」(辻村深月)
婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品。《解説・朝井リョウ》

https://g.co/kgs/CEqQ5x

辻村さんの小説は何冊も読んでるし、解説している朝井リョウさんの社会風刺的な小説も好き。当初予定したSF小説が分厚過ぎたので、いったんこちらの小説を持ってレジへ。

実際に読んでみると…「あるある〜」「うわ、これ私の家族に流れている空気といっしょ」みたいな気持ちになる箇所が、(ありすぎるぐらい)ふんだんにある。

特に、この3つが緻密に言語化されているから、おもしろかった。

①親と地元での「ふつう」の息苦しさ
②マッチングアプリと結婚観(婚活)の現実
③ほんと嫌な人間よなって思う、ふだん忘れがちの自分のドロドロの傲慢さ

そして、こんなことも小説の中に書かれていた。

「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを過ぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きているほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多過ぎて、”自分がない”ということになってしまう」

「傲慢と善良」(p135)

出身・学校歴・家庭環境によってみんな価値観は違うのに、
自分の価値観が全てと思いがちで、
親から逃れたくても逃れることは難しく、
「私」は何を本当に「自分」で決めることができるのか…

とってもおもしろい本だけど、辻村さんの小説であるあるの、無駄に長すぎる。今回も例にもれず、特に第二部はまるっといらないと私は思った。

なんにせよ、私たちは傲慢。

なにはともあれ、秋の夜長におすすめの一冊です


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