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能力バトル漫画を作ろう2

「正統性」

その言葉にオレは狂っていた。
来る日も来る日もどうやったらオレは能力バトル漫画を書く正統性が得られるのかを考えた。

オレが書きたい能力バトル漫画はハッキリ言えば「オレ版のジョジョ」である。

主人公の後ろにオーラを纏ったキャラクターがいて、キザなセリフでお互いを出し抜きあう。

「これ以上続けるとオマエ…“死ぬ”よ?」

「通じないんじゃあない…、通じる事さえできないのさ」

「これが真の…“チカラ”…」

「ヤツは最初から“動いてなんか”いない!」

テンプレートの様な厨二満載の意味不明なセリフが次々と浮かぶ。
やりたい、そういうの満載のがやりたい。
道中についてくる解説役のジジイも欲しい。

「何と…、伝承は本当じゃったのか」

とか言わせてやりたい。

能力も色々思いつく。
主人公の能力はやっぱり「風」が良い。
オレが考える「能力」は自然に関係したものが昔から多い。
中でもカッコいいと思うのは風だ。
炎だと悪役っぽいし、水の力は何だかちょっと脇役の様な感じがする。

風。
時に優しく、時に恐ろしい。水よりも火よりも形が無く、それでいてどこまでも広くって、どこまで広がるのか分からない。
それが若き主人公の成長を感じさせてる。

「では、各自が自然を操る能力“ナチュレ”というのがあって、ナチュレを操る人を“ナチュレーター”というのはどうだろう。」

そんな想いがよぎった。
なるほど、ナチュレーターか。となると

「オマエも“ナチュレーター”かい?」

「ああ。ただ、貴様よりも数段上の“ナチュレーター”だ。墓石の準備は出来たか?」

「残念。貧乏なんでね、そんな金はねえよ。ところでアンタは金持ってそうだな。」

「貴様よりはな。だが、無駄金を使う余裕は無い。貴様にはローンで立てた墓石がお似合いの様だッ!」

「それも残念、オレ、ブラックなんでね!」(能力ズキューーーン)

みたいな感じになるのか、くぅー、たまらねえ。タイトルは「超自然現象ナチュレーターズ」でどうだろう。決まったぜ。


閑話休題。そうじゃないのである。
前から言ってるように、オレが急にSNSでナチュレだのナチュレーターだの言っていたら誰もついてこれないのである。
「ヤヒロのポコペン」と同じパターンになるだけだ。

まず出だしの問題として、宇宙究極だの、超自然現象だの、その突拍子の無さが問題なのである。ここで多くの人は引いてしまう。
何度もいうが、これがジャンプであれば良い。
読者は、ああ、あのジャンプが選んだんだ、きっととんでもないアイディアのナチュレーターやバトルポコペンのバトルが繰り広げられるのだ、と信用できるからだ。

だが、オレが単体で発信するとなるとベースが無い。
個人で荒唐無稽なバトル漫画を立ち上げるのは相当に難しい。
かの超有名YouTuberが自身のオンラインサロンでクリエーターを募ってバトル漫画を作る企画があったが、それですら挫折していた。
その理由はやはり「正統性の欠如」にあったのかもしれない。

「正統」を考える上で、前回述べたようなバックボーンの問題があるのではないか、と思った。
例えば宗教で考えるとしよう。
オレが突然「極楽は全知全能の神だ。極楽の教えを守れば幸せになれる」と、極楽経典を制定し、極楽幸福会を立ち上げたとしよう。
きっとふざけて小川とけんたろうが入会して、純粋な信者はゼロだろう。

一方で、「極楽はイエス・キリストが選んだ8人の救世主の一人だ。残り7人を探して世界を救おう」という、キリスト教ベースの宗教団体、極楽八天界であればどうか。
急激に説得力が増した。
もちろん怪しい。怪しいが、少なくともキリスト教信者であればちょっとは興味を引くし、オレが必死で本気に自分は8人の救世主の一人であると思って勉強すれば、ついてくる人が現れるかもしれない。

そもそものキリスト教であるとか、イスラム教であるとかはこうやって発展している。
どちらもバックボーンにはユダヤ教があり、そのユダヤ教には中東地方に伝わる数々の神話がベースになっている。
別にどれも「今思いついた」わけではないのだ。

「歴史だ。」

オレはそう思った。
歴史こそが正統性を作るのだ。
ジャンプにはバトル漫画の歴史がある。だが、オレ個人にはバトル漫画の歴史がない。
そこに正統性がないから、人はついてこれない。
では、その歴史そのものを能力バトル漫画にすればいい。
荒唐無稽ではない、ちゃんとした史実、現実を元にすれば良いのだ。そしたらそれはデフォルメされた現実だ。
究極的には育児漫画と変わらない。

ではどの歴史にするか?
ずっと昔、少なくとも中世以前がいい。
近代になると兵器が発達しすぎて能力の価値が無くなる。
では古代ローマか?ギリシアか?
いや、それでは何だか少年マンガっぽくない。
日本か中国がいいだろう。
しかし中世日本が舞台だと武者武者しすぎてやはり能力バトル漫画っぽくない。
しかし中国が舞台だと星の数ほどある亜流「三国志」みたいになってしまいそうだ…

「例えば源頼朝や織田信長が風の力を操るって言われてもなあ。朱元璋がイケメンになって風で元軍と戦うってのも…。」

ん、元…?

元、つまりモンゴル。
モンゴルといえばチンギスハンだ。
蒼き狼の生まれ変わりという伝承のあるチンギスハンが風の能力を持ち、具現化した狼のビジョンで戦う…。
世界帝国を築き上げたチンギスハンは実は「能力者」だった、遊牧民にしか持ち得ない能力、国を作る能力、“ウルス(モンゴル語で国を意味する)”を使って…

「チンギスハンの幼名はテムジン。そのテムジンが突如“ウルス”の能力を発動させる。その能力は風を纏った蒼き狼のビジョン、“蒼く美しい風の狼(ブルーウインド・ハンサム・ウルフ)”!ウルスを発動させたテムジンを見てじいさんが言うんだ、『蒼き狼の伝承…本当じゃったのか…!テムジン、お主こそが蒼き狼!』これだよ、これ!タイトルはオレの曲からとって“今テムジン”で決まりだ!」

設定は歴史で、タイトルは「今テムジン」。
まるでオレの曲が能力バトル漫画になったようだ。
これだ、これこそが正統性、オレが書く必然がある。

ストーリーもどんどん思いつく。
ラスボスはジャムカだ。テムジンの理解者だったらしいが、DIOのようなプライドが高くてテムジンを見下している設定にしよう。
テムジンの嫁のボルテをさらうメルキト族はバケモノみたいにデカいやつらにして、能力の“ウルス”も自然現象の中でも噴火とか洪水みたいな凶悪なのをモチーフにしよう。

テムジンの性格はあえて気弱な、碇シンジみたいな性格だとギャップがあって面白い。“蒼く美しい風の狼(ブルーウインド・ハンサム・ウルフ)”が後々進化して宙を舞うテムジンが敵を見下す様に「これ以上…“ボク”を怒らせないでくれ…」と言ってこれまで以上の力を発揮する!

間違いない、「呪術廻戦」より売れる。

設定の8割を完成させ、オレは興奮して原稿用紙に向かった。
そして気づいた。

「あ、しまった。オレめちゃくちゃ絵ヘタクソなんやった。」


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