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江戸小紋はフォーマルかカジュアルか問題

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本日のお題:江戸小紋はフォーマルかカジュアルか問題
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■江戸小紋はフォーマルかカジュアルか問題

今週のお題は「江戸小紋はフォーマルかカジュアルか問題」です。着物好きなら名前くらいは一度は聞いたことのある「江戸小紋」。まずは江戸小紋がどんな着物かというのをおさらいいたしましょう。

小紋とは、訪問着や留袖など着物を広げると一枚の絵のように柄がつながっているもの(絵羽柄といいます)とは違い、どの柄がどこに来るかというのは全く想定せず模様を繰り返し反物に染めたものです。訪問着ですと裾と胸、右後袖と左前袖に柄を入れるというようなだいたいのセオリーがありますが、小紋はそういった決まりは全くありません。飛び柄や、全体に柄が入った総柄など、反物全体に自由に柄が染められております。

そして今回のお題となる江戸小紋も型で模様を繰り返して反物に染めたもので、どこにどのような柄を置くかという決まりはないので一般的な小紋と全く同じなのですが、遠目から見ると全く柄のない色無地のように見えるのが江戸小紋の大きな特徴です。ちなみに余談ではありますが関西の方では江戸小紋はあまり一般的ではなく、同じような役割の着物としては色無地が選ばれることが多いようです。

江戸小紋は元々武士の裃の柄から発生いたしました。着物好きの方でしたら耳にタコができるぐらい何度も聞いた話だと思いますが、江戸時代に幕府は各大名の力を削ぐために参勤交代という制度を作りました(諸説あり)。全国250以上ある大名家が2年ごとに江戸と自分の領地を行き来しなければならずかなりの費用の負担だったようですが、様々な地域の大名が江戸の城下町で生活するので大名同士が出会った時にトラブルにならないよう、それぞれの身分がパッとみてわかるようにする必要がありました。そのため、各大名の裃には「定め小紋」と呼ばれる、その藩独自の柄が染められていました。例えば徳川将軍家のお召し十、島津藩の大小あられ、紀州徳川家の鮫小紋は最も有名な定め小紋ですね。ちなみにこの柄、小さく緻密に染められていれば小さいほど身分が高いとされていたようですので、場内ですれ違ったときにどの藩のどのくらいの身分の方か一目でわかるようになっていたらしいです。

さて、この江戸小紋ですが、フォーマルでお召しいただくものか、カジュアルでお召しいただくものかどちらと思われますでしょうか。これ、結構いろんな説がありまして、なかなか難しい問題です。あくまでも家紋の有無で決まるのか、定め小紋に使われていた柄に限っては家紋がなくてもフォーマルで着用できるのか、小紋三役に限って家紋がなくてもフォーマルで着用できるのか、地方やその方の着物に対する考え方で様々であり、私もまだ結論が出ていないというのが正直なところでこのメルマガでも結論を申し上げることはできませんが少し掘り下げて書いてみたいと思います。

・あくまでも家紋の有無で決まるという説

当店はこの説を採っておりまして、商品説明文には家紋がついている江戸小紋は全てセミフォーマル、家紋がなければどんな柄であってもカジュアルと記載しております。様々な地方、考え方がありますが、一番無難で間違いのない記述をさせていただいていると思います。あまり目立たない共色の刺繍一つ紋を入れるのが一般的で、袋帯などフォーマル用の帯を合わせることによってちょっとしたフォーマルな場にもお出かけすることができます。もちろん白抜きの日向紋を入れることも可能なんですが、染め上がった後に白抜き日向紋はあまり綺麗に入らないという理由で刺繍紋が主流になっているようです。

逆に家紋を入れなければ小紋三役の鮫小紋や行儀、角通しなど代表的な柄のものであってもカジュアル用途のお召し物となります。

・定め小紋なら家紋がなくてもフォーマルという説

先ほどから書いておりますように、江戸小紋の柄は武士の裃の柄から発祥したものです。裃は武士の最礼装とされておりましたためその流れを汲む定め小紋の江戸小紋でしたら紋の有無にかかわらずフォーマルになるという考え方は理解できます。

江戸小紋でも裃に使われていたような定め小紋ではない柄も多数作られておりますが、そういったものはフォーマルとはならずカジュアルとなるという考え方のようです。「家内安全」と文字を彫られたもの、面白いものでは野球のバットやグローブを細かく描いたもの、変わり種でサザエ、船、波頭、カツオ、ワカメなどを彫ったもの(なんの柄かわかりますよね笑)というようなものも見たことがありますが、確かにこれをフォーマルというには少し違和感がありますし、ちょっとおふざけ(?)の入っているものは家紋を入れることも躊躇しますよね。

・小紋三役に限って家紋がなくてもフォーマルという説

これもよく聞く説で、鮫小紋や行儀、角通しの江戸小紋を代表する3つの柄だけが家紋がなくてもフォーマルとして使えるという考え方。うーん、これは私はどちらかというと懐疑的なんですよね。小紋三役の他にも裃に使われていた定め小紋がありますし、色々調べましたけどなぜ小紋三役だけを特別扱いするのかその根拠を見つけることができませんでした。

強いて挙げれば鮫の皮はどの皮よりも硬くて強いとされておりましたため、厄除けになるとされておりました。また、細かい点が45度の斜めに並んでいる行儀は丁寧にお辞儀をする角度であることから礼を尽くすという意味、角通しは細かい点がまっすぐに並んだ柄で筋を通す武士道精神を表すなどと言われておりますが…うーん、なんとなく後付感がします。そもそも江戸小紋に限らず普通の小紋に使われている吉祥文様もそれぞれ意味合いがありますし、この小紋三役だけ特別扱いすることに違和感があります。

補足ですが、上記の小紋三役に「大小あられ」「縞」を加えた小紋五役もフォーマルになるという考え方もあるようです。

さて、私がよく聞く代表的な考え方を3つ紹介いたしました。私はどれが正しいというスタンスではなく、何度もこのメルマガで申し上げておりますように着物は歴史が長く、また情報伝達がかなり制限されていた時代に様々な風習が各地で出来上がったものですからその地方独自のカラーがあると思います。ですのでインターネットで日本全国一瞬にして情報が駆け回る現代においては、地方によって様々な風習が存在することを考慮せず日本全国で統一された見解があると考えがちですが、それは少し無理があるのではないか、と思います。

今回紹介したものの他にもいろんな考え方があると思いますし、どれが正しい、どれが間違っているというわけではありません。強いて挙げれば全て正しいとでも言いましょうか。どれが正しいとかどれが間違っているとかいうことにそれほどの意味を感じませんので今回のお話で「ああ、そういう考え方もあるのか、なるほど」というぐらいに思っていただければ幸いです。

とかなんとか言いながら、当店のネット通販のサイトは全国の方に満遍なく見ていただいているので、家紋の入っていない小紋三役の柄の江戸小紋を商品登録するときなどは「カジュアル用途にお召しください、と書いていいかな、見る人や地方によってはセミフォーマル用途の着物と思う方もおられるよねぇ…」なんてちょっと迷いながら書いています。狭いようで広い日本、なかなか難しいです笑。

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