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生姜が感染症と闘う白血球を強化する 

 抗生物質耐性とは、病気の原因となる細菌が、その細菌を死滅させるための薬剤に対して免疫を持つようになることで、世界的に危険なレベルに達していると専門家は警告しています。実際、疾病管理センターでさえ、この新たな公衆衛生上の危機が2019年だけで世界中で500万人以上の死者を出したと報告しています。科学者たちが抗生物質の代替となる天然物質の発見に奔走するなか、台所によくあるスパイス、生姜に新たな希望が生まれつつあります。

 生姜の根は、アーユルヴェーダや伝統的な中国医学の治療システムで珍重され、免疫系の健康をサポートすると長い間信じられてきました。今回、生姜に含まれる成分が、感染症と闘う白血球の力を高めることが、新たな科学的研究で明らかになりました。 生姜が身体の防御システムを厳戒態勢にする興味深いメカニズムを見てみましょう。
 
●生姜に含まれる成分が感染と闘う免疫細胞に「総力戦」のシグナルを与える
 この研究はミュンヘン工科大学で行われ、Molecular Nutrition and Food Research誌に掲載されました。研究では、生姜に含まれる辛味成分であるジンゲロールが好中球顆粒球として知られる免疫細胞に及ぼす影響を調べました。感染に対する 「第一の防御線」と呼ばれる好中球は、貪食作用として知られるプロセスで、病気の原因となる細菌やその他の病原体を取り込んで破壊します。

 研究者たちは、ジンゲロールが好中球の病原体に対する攻撃性を高めることを発見しました。言い換えれば、ジンゲロールは好中球を準備し、休息状態から、「すぐに使える」状態にするのを助けるのです。細菌感染を模倣したペプチドに細胞をさらすと、ジンゲロールで刺激された細胞は未処理の細胞よりも約30%強く反応することが判明しました。
 
●少量のジンゲロールでも有益な反応を引き起こす
 科学者たちは、ジンゲロールが好中球にあるTRPV1という特定の受容体を介して働くことを発見しました(TRPV1は唐辛子の有効成分であるカプサイシンの受容体でもある)。そして研究チームは、非常に低濃度のジンゲロールでさえ、細胞の活性を調節するのに十分であることを確認しました。このことは、ジンゲロールが少量であっても、免疫システムをより良い方向に「調整」するのに役立つ可能性がある、という仮説を裏付けています。さらに、生姜の成分は急速に血液に入るようです(1リットルの生姜湯を飲んでからおよそ30分から60分後)。
  
 生姜がもつ感染と闘う能力を解明するためにはさらなる研究が必要ですが、この研究はその過程を覗き見る興味深いものです。さらに、一部の医師やハーブ療法家たちが常に主張してきた、生姜が侵入してきた細菌を標的にして破壊する免疫システムの能力を高めるということも裏付けています。
 
●生姜は一般的な病気の原因となる微生物と闘う
 病原体に対する免疫系の防御を促進することに加え、ジンゲロールには抗菌、抗真菌、抗ウイルス作用があります。International Journal of Molecular Scienceに掲載された2017年のレビューで、著者らはジンゲロールが複数の病原菌の増殖を有意に抑制したことを示す研究を引用しています。複数の病原菌とは、サルモネラ菌(下痢、発熱、腹痛を引き起こす一般的な食品媒介微生物)、大腸菌、ジンジバリス菌(歯周病に関与)、緑膿菌などです。

 なかでもジンゲロールは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(一般にMRSAとして知られる細菌)にも効果があることが示されています。生姜は病原菌に対する特効薬ではありませんが、抗生物質耐性を引き起こすことなく、病原菌の増殖を阻止することができるようです。
●免疫の健康をサポートする生姜を使ったレシピ
 
 生姜は、さまざまな方法で利用できます。鶏肉、牛肉、魚介類のレシピに生や粉末のまま使ったり、サラダ、サルサ、マリネにスライスやみじん切りにした根を加えたりするなどです。ジンジャーショットを飲んだり、ピクルスとして生姜をかじったり、フレッシュジュースに生姜を入れるのもいいでしょう(生姜はリンゴ、ニンジン、レモンのジュースと特に相性がいい)。

 スパイシーで元気の出る生姜紅茶を作るには、新鮮な生姜の根を洗って2センチほどに薄くスライスし、お湯に入れて10~30分煮だします。 漉して冷ましてから飲みます。ハチミツで甘みをつけ、レモン汁をひとかけ加えてもよいでしょう(ちなみに、科学者の報告によると、生姜は唾液中の酵素を刺激し、硫黄化合物を分解するため、息が爽やかになるという..)
 
 多くのホリスティック医師は、痛みや炎症を抑えるために生姜を勧めています。複数の研究が変形性関節症や生理痛の治療への使用を支持しており、2020年にCytokine誌に掲載されたレビューでは、C反応性タンパク質などの炎症マーカーを低下させると評価されています。生姜はまた、血糖値を調整し、健康的な消化を促進し、吐き気を和らげ、認知機能の低下やアルツハイマー病を予防する効果もあります。

 生姜のサプリメントは、カプセル、錠剤、チンキ 剤、エキス剤などがあります。 ホリスティックヘルスケアのプロバイダーは通常、1日2~3回、500mgの摂取を勧めていますが、サプリメントを摂取するときは医師に相談してください。
 

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