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DTMをはじめる時に読む記事

これからDTMを始める人や今までやったことのないジャンルに挑戦しようとしている人にとって、打ち込みについて当たり前でない知識が沢山あるなと思ったので、本記事では初めてDTM(打ち込み)をする時に役立ちそうなベーシックな話を書いていきます。

後半にいくにつれてチンプンカンプンになっていくかもしれませんが、遠慮なく読み飛ばして実際にDAWを触ってください。しばらくDAWを触ってみて何となくふんわり仕組みが理解できてきたところでもう一度読み直して頂けると、理解が整理されると思います。


"打ち込み"とは何をすることなのか

ここでいう打ち込みとは、CubaseやStudio One、Logic、live等のDAWと呼ばれる所謂作曲ソフトを用いて音楽を自動演奏させるためのデータ入力のことを指します。ピアノのような形をしたキーボードで楽器を弾くように入力することも出来ますし、マウスやPCキーボードで入力することも出来ます。

さて、面倒かもしれませんが用語も並べていきたいと思います。

PCやMacに対して打ち込む命令のことをシーケンスと呼んだり、打ち込みを行うソフトウェアや機能のことをシーケンサーと呼んだりもします。ほとんどのDAWはシーケンサー機能を内包しています。

DAWを使ってシーケンスを打ち込む時の命令にはMIDIと呼ばれる規格が用いられます。MIDIを用いることで、例えば

  • 音の高さ

  • 音の長さ

  • 音の強さ

を指定することが出来ます。

打ち込みの流れ

実際に打ち込みを進める際の大まかな流れは次の通りです。詳細は追って説明しますが、読み飛ばしても大丈夫です。

  • DAWプロジェクトを作成

  • MIDI情報を入力するトラックを作成

  • MIDI情報を送って鳴らす音源を読み込む

  • MIDI情報を入力

  • 音量バランスをとる

  • 完成品を書き出す

DAWプロジェクトとはその楽曲に関する情報が集約されたファイルで、1プロジェクト = 1曲のような扱いになります。

「MIDI情報を入力するトラック」にはDAWによってMIDIトラック、インストゥルメントトラックの二種類がありますが、いずれもMIDI情報を入力するためのトラックです。

音源はトラックに直接読み込むやり方とトラックとは別の場所に読み込んでからトラックと関連付けるやり方の二種類があります。これは、人によってどちらがやりやすいと感じるか異なります。DAWによっては前者しかできません。

MIDIの入力には一般的にピアノロールエディタと呼ばれる格子状のエディタを使用します。左側に鍵盤の絵が表示されていて、下から上に向かって音程が高くなっていき、左から右に向かって時間が流れていきます。

このエディタ上に長方形を置いていくのが打ち込みの大部分です。好きな音程に、好きな長さの音符を置いていきます。音の強さや大きさもここで変えることができます。DAWによってこのエディタが多機能だったりシンプルだったりするため、作業効率に大きな差が出ます。

曲が出来たら音量バランスをとります。この作業はミキシングと呼ばれます。

音量バランスがとれたら完成品を書き出します。この書き出し作業はバウンス、レンダリング、エクスポート等と呼ばれ、DAWによって呼び方が異なります。

MIDIとオーディオ

いざDAWプロジェクトを作成してみると、トラックにいくつかの種類があることに気づきます。これらはオーディオを扱うトラックとMIDIを扱うトラックに分けることができます。

MIDIはいうなれば譜面のようなものなので、それ自体は音データではありません。つまり、MIDIの命令に従って音を再生する楽器が必要です。この楽器はハードウェアなこともあればソフトウェアなこともありますが、色んな名前で呼ばれます。この記事では音源という名前で呼ぶことにします。

  • 音源

  • サンプルライブラリ

  • 音源モジュール

  • シンセサイザー

  • シンセ

  • インストゥルメント

  • etc…

よくSNSで「音源を買い足す」みたいな表現を目にされるかもしれませんが、それはMIDIの命令を受け取って発音される楽器(音の実体)そのもののことです。

DAWは音源を鳴らす人、音源はDAWに鳴らされる楽器です。なので、打ち込みの表現の幅を広げるために音源を買い足すのです。

(読み飛ばしてOK)
本記事におけるMIDIとはMIDI 1.0のことを指します

シンセサイザーとサンプラー

打ち込みというのはDAWを使って音源を鳴らす命令(MIDI)を入力する行為という説明をしましたが、音源には大きく分けて2種類あります。

  • シンセサイザー

  • サンプラー

前者はサイン波やノコギリ波といった音の種を元にその場でリアルタイムに波形を合成(シンセ)するものを指します。後者は予め録音しておいた素材を命令に従ってプレイバックするものです。

前者については僕は詳しくないので別の方に説明してもらうとして、本記事では後者を掘り下げていきます。

(読み飛ばしてOK)
細かいことを言い出すとシンセサイザーには加算合成やら減算合成やらFMやら色んな話が出てきて、Wavetableシンセやグラニュラーシンセはどっちやねんみたいな話にもなります。サンプラーも物によってはただ鳴らすだけではなくフィルターや振幅のADSRが弄れたりなんだりで色々出来ます。

生楽器の打ち込み

例えばピアノやドラム、ストリングスといった生楽器の打ち込みを行う場合、PCの中で何かしらの計算で生楽器の音を再現するよりは実際に楽器の音を録音しておいて、その波形をMIDIで鳴らす方が手間もかからずクオリティも高くなります。なので、サンプラーは生楽器の打ち込み表現との相性に優れています

さて、サンプラーは予め録音しておいた素材をプレイバックするものなので

  • 録音素材(サンプルライブラリと呼ばれる)

  • それを再生するツール(エンジンと呼ばれたりする)

の2つの性質を持っています。

前者の開発には音楽のエンジニアリング、後者の開発にはプログラミングのエンジニアリングが必要、これらは似て非なる能力です。このため、ライブラリの録音だけを行い、エンジンは汎用的なものを使うメーカーが多く誕生しました。

余談ですが、最も有名で汎用的なエンジンとしてスタンダードになっているのがNative Instruments社のKONTAKTでしょう。様々なサンプルライブラリがKONTAKTを使うことを前提に作られているため、生楽器の打ち込みを始める時はまずKONTAKTのインストールを求められることが多いでしょう。

より高度な打ち込みの表現のために自社エンジンに移行する大手メーカーも多数存在します。特にドラムやピアノ、オーケストラ音源のメーカーに多いです。

長くなっていまいましたが、KONTAKTのような汎用エンジンで使うライブラリもあれば、自社エンジン向けのライブラリも存在するということを覚えておけば良いと思います。

購入した音源によって似たような見た目だったり全然違う見た目だったりするのはこのためです。

(読み飛ばしてOK)
KONTAKTがスタンダードになるまでの間にGigasamplerやGigastudio、Halion、EXS24、MachFive等様々なサンプラーが競い合った群雄割拠の時代があり、今も自社エンジン的な立ち位置で残っているものもあれば消えてしまったものもあります。

ライブラリの構造を理解する

サンプルライブラリをサンプラーで使う時、多くの音程楽器は楽器または奏法ごとにパッチが分かれています。

たとえば弦楽器であればLegato、Long、Staccato、Tremolo、Trillといった具合に。

打楽器であれば異なる奏法が異なる音程にアサインされている(ドラムであればClosed Hi-hats、1/4 Open Hi-hats、Half Open Hi-hats、3/4 Open Hi-hats、Open Hi-hatsといった具合に)ため、説明書を見ればどこを押せば何がなるか分かりやすいと思いますが、弦楽器のように音程を持った楽器の場合は奏法ごとに別のパッチを使うしかありません。

そうなると、使いたい奏法が増えるたびにDAWプロジェクトにInstrumentのトラックが増えていってしまいます。(それはそれで利点があって僕はそうしています)

キースイッチ

それではプロジェクトの管理が面倒臭かろうということで、多くのサンプラーではキースイッチという機能をサポートしています。キースイッチとは、楽器の音域外の特定の音程をトリガーすることで奏法を切り替えられる機能のことです。

つまり、フレーズの途中で様々な奏法を切り替えて使えるということです。便利!

メーカー側でキースイッチが初めから割り振られているパッチもあるでしょうし、自分自身でキースイッチを組む機能のあるサンプラーもあります。これに関しては人それぞれ最適解が異なるので、慣れてきたら自分がやりやすいプロジェクトの形を考えてみると良いでしょう。

ベロシティとMIDI CC

MIDIで送れる命令は様々ですが、中でも使用頻度が高いのがベロシティとモジュレーション、エクスプレッションでしょう。ベロシティから説明します。

ベロシティは直訳すると速さですが別に音の速さを指定するわけではなく、多くのライブラリにおいては演奏強度の表現に用いられます。

ベロシティは0-127の128段階で指定することが出来ますが、これでどのように演奏強度を表現しているかというと

  • ある値を境にプレイバックされるサンプルの演奏強度が切り替わる

  • ある値を超えるとアタックの強いサンプルが重ねてプレイバックされる

  • 値に応じてプレイバック時の音量が上下する

の組み合わせです。雑に言うとベロシティを上げれば音が強くなることが多いです。

さて、打楽器やピアノのように一度発音したら減衰するだけの楽器はベロシティで音の強さを表現出来ますが、ストリングスのように音が出始めてから音の強さが変わる楽器はどう打ち込めばよいでしょうか。

ここで登場するのがモジュレーションとエクスプレッションです。いずれも時間軸に沿って自由なカーブを描くことができます。多くのサンプルライブラリにおいてエクスプレッションはプレイバック中に音量を変えることができます。

これに対し、モジュレーションはある値の周辺でサンプルの演奏強度が徐々に切り替わるといった制御に対応していることがほとんどです。

モジュレーションを上げ下げすると例えばppからffまで演奏の強さが演奏中に切り替わっていくのに対し、エクスプレッションを上げ下げすると例えばffのまま演奏中に音量だけを上下させることができます。

こうした長年の歴史の積み重ねの中で業界全体でスタンダードになった仕様は、これから始める人にとって「なんで?」と感じるものかもしれませんが、一度覚えてしまえばストレス無く様々なメーカーの音源を打ち込めるようになります。

(読み飛ばしてOK)
MIDI: Musical Instrument Digital Interfaceの略
CC: Control Changeの略
代表的なCCの例としてCCの1番がモジュレーション、CCの11番がエクスプレッションが挙げられます。

まとめ

DAWも音源も進化し続けているため、これから覚える人にとっては複雑でとっつきづらいものに見えるかもしれません。しかし、その仕組が分かってしまえばツールを選ばずに作業出来るようになりますし、自分に合ったツールを選ぶことも出来るようになっていくと思います。

慣れてきて実際にアレンジをもっと詰めていきたい人やライブラリを買い足して行きたい人は下記の記事も併せてご参照ください。

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