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アリーナに来た誰かの「1分の1」のためにベストを更新し続けるチアリーダーの使命 | シーホース三河Super Girls オーデション〜開幕まで Vol.2

厳しいオーディションを通過した彼女たち。でも、合格はあくまでスタートラインに立っただけ。どんな練習を経て、試合に臨んでいるのでしょうか。今回も前回に引き続きライターの初野正和さんに、Super Girlsの日々の練習や試合でのパフォーマンスにスポットを当てて取材していただきました。彼女たちが大切にしていることが鮮明になっていきます。

Super Girlsとしての活動が開始
意識も生活も変化していく

6月に行われたオーディションを経て、晴れてSuper Girlsの一員となったメンバーたち。最初の顔合わせでは、球団社長や運営スタッフの挨拶に加え、契約の手続き、衣装の採寸などが行われた。ここからいよいよ週1回の練習がスタートしていく。

Super Girlsとして活動する上で、清潔感のある身だしなみはもちろん、SNSに関するモラル、一体感を生むために使用するメイク道具の統一、試合日は練習着での出勤は不可など、細かなルールや指導がある。こうした意識の高さについて驚くルーキーも多い。

意外かもしれないが、体力づくりも大切だ。スレンダーな姿をイメージしてしまいがちだが、激しいダンスと大きな声援を継続するには、基礎的な体力がなければ務まらない。ルーキーのKAHOさんは「合格してから意識が変わりました。規則正しい毎日を送るように生活サイクルを見直しましたし、いい加減にしていた食事もしっかりと摂るようになりました」と自身の変化について話す。現役組の立ち振る舞いやディレクターの指導を通して、Super Girlsとしての自覚が芽生え、チアリーダーに求められる要素が少しずつ身に付いていく。

第1回の顔合わせの様子。現役組や今年からデビューするルーキーが自己紹介を行った
合否について「落ち込まないよう、あまり期待しすぎないようにしていました」と振り返るKAHOさん
「合否が発表される日は聞いていて、その日はずっとスマホを握りしめていました。まだ夢の中にいるような気持ちです」とCHISAKIさん

憧れのアリーナに立つために
合格後に待っている次の競争

チアリーダーが表舞台に立つ機会は、イベント出演とホームゲームのパフォーマンスがメインだ。特にホームゲームはメンバー全員が憧れていた舞台であり、ここを目指してオーディションを勝ち抜いてきた。しかし、全員が出られるわけではなく、今シーズンなら合格した13名のうち、ディレクターが選んだ11名がパフォーマンスに出場となる。この仕組みは球団によって違いがあるだろう。ただ、Super Girlsの場合はリスク管理に加えて、競争による個々の成長を促すため、人数に余裕を持って採用している。

これがディレクターのHARUNAさんが話していた、合格後に待っている「次の競争」だ。なかなか気づかないかもしれないが、試合ごとに出場するメンバー、オープニングセレモニーやハーフタイムのパフォーマンスのポジション、当日の役割なども微妙に異なっている。残念ながら出場できないメンバーもいる。スカイホール豊田で行われたホーム開幕戦では、ルーキーのCHISAKIさんとKAHOさんがサブメンバーに回ることとなった。

「悔しい気持ちを表に出すのか、自分の中で黙って消化するのか、それは彼女たち次第です。どのように受け止めて、どう向き合っていくのか、それが成長につながるんだと思います」とディレクター。CHISAKIさんはサブという現実を受け入れるのに「葛藤しました」と振り返る。

「開幕戦のメンバー発表があったとき、自分に何が足りなかったのか考えれば考えるほどネガティブな気持ちになることがありました。練習しなければいけないけれど、気持ちが整理できず、体がついていかないというか…。ビデオを見返すたびに周囲と比べてしまい、自分の悪いところばかり気になったことも…。オーディションで選んでいただいて、Super Girlsとして活動できることだけでも感謝の気持ちでいっぱいです。とても幸せなことだと思います。でも、理想と現実の葛藤というか…乗り越えるのに苦労しました」(CHISAKI)

開幕戦に限らず、こうした競争はシーズン終了まで終わることなく続く。限られたポジションを手に入れるため、彼女たちは自分を磨き続ける必要がある。

1回の練習は3時間ほど。振り付けを覚えるほか、試合当日の動きについても確認していく
「時間が足りないですし、家でも練習しています」と話すCHISAKIさん

誰かの「1分の1」のために
自分たちの最高を更新し続ける

人数に余裕を持った採用を行っているのは、リスク管理や成長を促すことに加えて、もうひとつ理由がある。常にベストのパフォーマンスを披露するためだ。

シーズン中、ホームゲームは30試合あり、パフォーマンスの質は試合を消化するにつれて上がっていくもの。プロバスケ選手も同じで、意思疎通が深まり、シーズン当初には見られなかった連携ができるようになり、チームとして完成度が高まっていく。しかし、ディレクターは「どの日を見てもその日が一番よかったと思えるように。最高を更新していきたい」と考えている。人間である以上、コンディションも日によって変わってくる。そのため、次が現時点のベストになるようにメンバーを選抜し、試合に臨んでいる。

スポーツに限らず、イベントごとは1回1回が真剣勝負だ。30試合あるということは、ときには1試合を「30分の1」として捉えることもできる。ミスをしても次がある。そう考えれば気持ちは楽になるが、それでは最高を更新するのは難しい。そして忘れてはいけないのが、その日しかアリーナに足を運べないブースターもきっといること。誰かの「1分の1」のために、忘れられない感動と興奮を味わってもらうために、Super Girlsは常に全力で最高を更新していく。

ウイングアリーナ刈谷でのホームゲームの様子。熱狂的なエンタメ空間となる
応援をリードし、アリーナを盛り上げるチアリーダー

第3節となったウイングアリーナ刈谷で最初のホームゲームでは、CHISAKIさんもKAHOさんもパフォーマンスに出場することとなった。待ち侘びていた彼女たちのデビュー戦。持っているすべてを出し切るように、全力で踊り、声を張り上げ、アリーナを盛り上げる彼女たち。

試合後に感想を聞くと「正直、オーディションに受かる自信はあまりなかったので、選ばれたときはすごく嬉しかったです。開幕を迎えるまで、練習を重ねるにつれてレベルの違いを実感し、不安になった時期もありました。でも、その差を埋めようとモチベーションを上げてきました。開幕戦は出られなくて悔しい気持ちがありましたが、今日と昨日を終えて、アリーナで踊ることは幸せなことだと再確認できました」とKAHOさん。CHISAKIさんも「練習生のときはどこかで頼っている気持ちがありました。でも、今日は責任も役割もまったく違います。リハーサルは緊張していましたが、始まったら楽しくて、ブースターの皆さんの温かさも感じることができました。忘れられない2日間です」と充実した顔で話す。

オーディションから試合まで、笑顔の裏に隠されたさまざまな葛藤や思い。背景を知ることで、なぜ彼女たちがアリーナで輝いて映るのか納得した。誰かの「1分の1」のために。その思いの連続が素晴らしい空間を作っていくのだろう。

「立ち位置など覚えることが多くて不安」と口にしていたKAHOさんだが、
自信に満ちたパフォーマンスを見せてくれた
「声の大きさで負けたくない」と話していたCHISAKIさん。ダンスでも躍動していた


試合後の2人からはやり切った充実感が伺えた


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