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現役PMが解説「東南アジアの代表的アプリから学ぶ、日本のアプリサービス改善点」

こんにちは、まさきごた | @go-go-pdmです。
フリーランスで「アプリやDXに関する商品企画・開発(プロダクトマネジメント)支援」の仕事をしています。
自己紹介

つい先日、マレーシアに短期滞在してみたので、東南アジアのIT事情について書きたいと思います。

関連記事として以下もよかったら読んでみてください。



東南アジアのアプリから学べた点

先に結論から記載してしまいますが、後ほど日常生活で使うアプリについてスクショとか並べながら説明しますが、
正直今の日本で使われているアプリと変わらない、使い勝手も変わらないという感じです。
移住とかも考えるならば安心!

なのですが、一方で「今の日本で使われているアプリと変わらない」でいいんだっけ?とも思いました。

GDPとかもぜんぜん違うのに、ほぼ同じデジタル体験ができる(しかも下手したら日本よりも便利だったりする)。

もちろんアプリなどは、既存サービスへの「不安」や「信頼性のなさ」から一気に普及したりするものだったりします。
例えば中国でQRコード決済が一般的になったのは、クレカが作れないというのが背景にあったり。
UberやGrabなどのシェアライドアプリも、元々はアメリカの西海岸ではタクシーがほとんどなかったり、Grabについては東南アジアだとぼったくりタクシーが多かったりした、というのもあるから。

その点日本というのは、旧来のサービスについて十分に「不安が少なく」「信頼性が高い」ということが言えるのかもしれません。

が、デジタルなサービスを作ってきた身からするとなんとも言えない気持ちになったのもまた事実という感じでした。

日本よりも先に新しいチャレンジが実行されている

あと、ポイントとしては、日本よりもITの進みが早いという点。

日本でようやく導入されることがきまったシェアライドなんかも5年前にはもう一般的でした。
(ちなみに私は一概にシェアライド推進派というわけじゃないです。反対派でもないですが)

また、「Tiktok shop」が一般的になったことによるECプラットフォーマーの変化も知れたのはよかったです。

日本にはまだTiktok shopが展開されていない状況ですが、日本よりも先に色んなチャレンジがされていて、いろんな変化が先んじて起きているのは間違いのない事象かと思います。

1つ1つのアプリの使い勝手(UX)はそこまで変わらない

ポジティブな面としては、さすがに使い勝手という面では日本も劣っていないという点です。
Grabに関してはかなり使い勝手よかったので、もと企画者としては心が苦しい限りですが…
その他のアプリについては日本のものの方が使い勝手良いんじゃないかと思ったくらいです。

ちなみにUXに対する考え方の違いというのはあります。
日本はどちらかというと欧米式のシンプルめデザインが好まれるし最近のアプリだと多いですが、アジアではてんこ盛りデザインの方が好まれます(ドンキホーテみたいな感じ)。

その前提も踏まえながら、下述の記事も目を通していただけたら嬉しいです。


移動アプリ

ライドシェア:Grab

東南アジアを代表するスーパーアプリ「Grab」。

日本でも今話題になっている「ライドシェア(許認可なしで誰でもタクシー営業ができる)」サービスからスタートして、Uber Eatsのようにフードデリバリーなども1つのアプリで使うことができます。

私が5年前にマレーシアに来た時には、まだUberがあった(その後東南アジア一帯からはUberは撤退)のでUberを使っていたのですが、現在ではライドシェアに関してはGrab一択です。

基本的な使い方、使い勝手は日本のタクシーアプリ「GO」と同じですが、正規のタクシードライバーじゃなくて、その辺のおじさん/お兄さんが自分の車で、で自由にタクシー営業してます。

※事前にアカウント登録してクレカを登録。(日本で可能)

① 目的地を選択 → ② 乗る場所を選択 → ③ 車両クラスを選択(車両ランクで料金異なる) → ④ 車両検索後にマッチング → ⑤ 車両に乗り込む → ⑥ 支払い

大きな違いがあるとすると、
・呼ぶときに料金が確定する方式(GOの「事前確定運賃」機能と同じ)のみ
くらいです。

料金は日本に比べて1/2~1/4くらい!
選択する車両の大きさやグレードによって変わります。
考慮しなきゃいけないののは、そもそもの全体の物価がぜんぜん違うのでこうなっていて、タクシー料金自体がめっちゃ安いです。
海外に明るい方たちによる日本のタクシー高いよね議論を時々耳にしますが、
マレーシアでGrabを使っていると安すぎてドライバーさんたちの生活成り立つのか?と心配になるくらいに安すぎます。

あんまり安いので、Grabでは乗り物酔い対策も兼ねてアルファードさんを多用しました。(それでも安い)
おかげで日本に帰ったらアルファードのタクシーが恋しすぎる展開になりました。「はぁ電車で移動かぁ」みたいな。。早いところ感覚を取り戻したい。

https://www.nihon-kotsu-taxi.jp/reserve/vehicle/alphard/

あと、Grabのせいだけではないですが慢性的な渋滞が酷くて、こんなところのこんな時間でも渋滞するの?ってくらい渋滞してます。一般道が。

便利すぎる一方で気になる部分多しって感じですね。

さて、私は長く「GO」に関わっていたのですが、その私からみて、
アプリの使い勝手については細かいところが結構「気が利いている」と感じることが多かったので以下に紹介します。

■ 顔写真登録機能

すみませんこちらスクショが撮れずなのですが、
初回ライドの前に、「待ち合わせで間違えないように顔写真撮ってね」的なアプリ通知がされて顔の撮影を促されます。

これ、結構良いなと思ってて前にGOを使った時に、自分がタクシーを呼んだのに他の人が乗ってっちゃったことがあって。
最近ではGOで呼んだときに名前の確認をマストでしてくれるようになってますが、こういった機能もあるとよりユーザとしても安心。

■ ユーザも評価される

これはドライバー向けアプリの話です。
スクショなしですが、Grabで呼んだ車両から降りるタイミングで「私のお客としての評価」をドライバーがしていました。
ユーザとしては「え?」と思うかもしれませんが、こちらとしてもお行儀の良いお客ほどリワードがもらえたり、配車を優先してくれるなどあるなら、こういった機能も歓迎なのではと思います。

■ 「時間指定予約」がGrabにはないがなくてもよい理由がある

Grabになかった機能としては、「時間指定予約」がなかったです。
ただ、車両の供給量が多いので、よほど雨が降らない限りは大抵5分もすればきてくれます。
その点ではマレーシアにおいては予約機能は不要なのかもしれないです。

■ ロック画面上で、あとどれくらいで車両が来るか分かる

これはわかりやすかったです!「残り⚪︎分」と表示されるだけでもいいですが、車両とマッチングしたら、車両との距離が最初に表示されるので、その距離からどれくらい近づいてきているのかわかるのは直感的で良いと思いました。

■ 車両が向かっているときにストップしたらその理由が視覚的にわかる

実際に赤信号を正確に識別しているとは思えないのですが(そのためには信号データをアプリ側にもらう必要があるがそんなハイテクだとは思えない。)、
車両がストップしてる = 渋滞 or 赤信号、くらいでざっくり判別して、あとは何かしたらのロジックを使って、「この車両赤信号だろうな」とシステムが判別しているのかと思われます。

こういうのも細かい気遣いですが、あるとユーザにとってストレスが軽減されるので好印象でした!

■ 安全関連機能の充実

Grabは誰でも車と免許があればタクシー営業ができるサービスなのですが、その分何かしらのトラブルや犯罪が起きたときに誰が責任を取るのか、またそれを予防する対策をしてくれるのか、は議論になりがちです。
(日本ならタクシー会社が教育をしたり、また何か起きたら責任を取る)

ライドシェアというのは便利なのは間違いないですが、その反面としてある程度自己防衛も必要とされるのかと思います。

そのために各種機能を提供していました。

■ 「目的地を必ず設定する」で良いと思った

日本のGOアプリや他のタクシーアプリだと、目的地を設定せずにタクシーを呼ぶことができます。
私自身も、「毎度、目的地を指定するのが面倒」と思っていましたし、そういう人も実際に多いと思っていました。
ただ、マレーシアで毎日複数回Grabを使っていたのですが、毎度目的地入力をするメリットを多く実感しました。

目的地を設定しない場合、目的地に関するやりとりをドライバーとするのですがやっぱりこれってコミュニケーションコストがそれなりに発生する。
同じ日本人同士で、日本語であったとしても、です。
それなら事前に毎度さっと目的地を設定しちゃった方が結果として、色々効率的と思えたのです。

また、目的地を入力することで、「こっちは長距離移動するから捕まりやすくしてくれないかな」とか「超短距離移動は申し訳ないから多少捕まりにくくても仕方なしと思える」とか、実際に現地で思ったりしていたのには自分でも驚きました。


ラストワンマイルモビリティ(キックボード):Beam

日本だと「Luup」が有名ですが、マレーシアだと「Beam」が街中に置いてあります。

こんな感じで置いてありますが、実際は駐車禁止エリア以外ならどこでも乗り捨てOKっぽいです。
ここは日本のLuupと違うポイント。

そして、どこでも乗り捨てOKなのは景観課題があるのは理解できますが、ユーザ目線で考えるとやっぱり便利だし、利用回数が増える要因になるよなーなんて思ってました。

ちなみに基本的な使い方はLuupと一緒です。
キックボード本体にあるQRをスマホアプリのカメラで読み込んだらすぐに乗れます。

日本のLuupと異なるポイントで面白かったのは、「グループライド機能」というもの。(※1台のキックボードに複数名で乗るわけじゃない)

代表者が一括で他の人の分のライド設定ができるという機能らしいです。
他の人はアプリのインストールやアカウント登録は不要。

あと安全性観点で良いと思ったのは、徐行区域だと自動的に減速される点。

日本だと歩道を走る場合は6km/hなら乗ってても大丈夫だったはずですが、
その規定速度に勝手に調整してくれるのは便利。
降りて押すの結構大変なので。

ただし日本だとこの機能を実現するのがちょっと難しいと思っており、「道路データ」というものの中に、「歩道データ」が確か存在してなかった気がする点と、
また、GPSの精度的に歩道と車道を確度高く判別するのが難しく、
この2点から実現が難しそうな気がしました。
(どんな形であれ日本でも実現してくれたら嬉しい)

ちなみにキックボードはたぶんマレーシアで流行らない

と思いました。
理由としては、まじで道がガタガタ。
しかもマレーシアだと日本と違って、歩道か自転車専用道路しか走れません。ちなみに自転車専用道路はそんな多くない。

歩道に関してはバリアフルで、ガッタガタ。
ある程度走ったら持ち上げて移動する区間が結構あります。

よくサービス開始したなって感じました。明らかに無理なのはちょっと考えたらわかりそうなのに。。

前はチャリのシェアサービスもあったっぽいですが、2024年にはもう見かけませんでしたのでおそらく撤退したのでしょう。

それでもとりあえずやるベンチャー精神は見習うべきか

というのが締めくくりです。


デリバリー

フードデリバリーアプリ:Grab、フードパンダ、など

マレーシア滞在中は、フードデリバリーも使ってました。
日本だとUber eatsが有名ですが、マレーシアだと日本から撤退したフードパンダや、Grabのフードデリバリー機能が有名みたいです。

ちなみに、フードだけじゃなくて、スーパーの買い物代行配送機能(日本でいうamazon fresh)もあって、これも便利そうでした。

フードデリバリーの使い方もだいたい同じ。

注文して料理が完了すると、配達中のドライバーの位置がわかります。

マレーシアだと、大抵のマンションエントランスにフードデリバリー置き場があるようで、そこに置いて行ってくれます。これ便利でした。

アプリの機能うんぬん、というよりは、住居側のサービス提供姿勢の話ではあります。

バイク便依頼機能

[これめっちゃええやん!でもいつ使うんだろう…]
と思ったのが、Grabの中にあるバイク便機能でした。

こんな感じで、どこからどこまで、どれくらいの大きさの荷物なのか、そしてバイク/車/トラックどれで運ぶかを指定して依頼できます。

試しにクアラルンプール市内中心地からクアラルンプール国際空港まで(60km)、小包配送を試算したら、60リンギット=1800円くらいでした。

物価の安いマレーシアにしてはお高めですね。
その分即時出荷、即配達ではあるのですが。

ビジネスだとたま〜にバイク便使うことあるので、その点では使えるのかもしれません。


EC(e-commerce)

EC:ラザダ、ショッピー

マレーシアと隣国のシンガポールでのECと言えばAmazon、ではありません
ラザダ、ショッピーが有名です。

ラザダはアリババの子会社らしいです。東南アジア一帯でサービス展開してるようですね。

ショッピーも同様ですね。

Tiktok shopの台頭でアリババ子会社はレイオフ

興味深いニュースとしては、アリババ子会社のラザダのレイオフのニュースがちょうど2024年の年始にあったことです。

背景に、TikTok shopに押されているということがあるようです。
(親会社のアリババのIPO計画や業績影響もあるが)

Tiktokショップは日本ではまだ利用できないので馴染みはないかと思います。
ただ、実際に東南アジアではEC体験に大きな変化を一般の方に与えているようで、
今後日本で展開された場合には、購入者としても、そして出展者としてもチェックしておくべきかと感じました。


Payment

QR決済:タッチアンドゴー

ペイメントサービスに関しては、日本と同様でQRコード決済を使う方を多く見かけました。

サービスとしては、先ほども紹介したGrabアプリのQR決済機能や、マレーシアのSuica的存在であるタッチアンドゴーが有名みたいです。

タッチアンドゴーは、SuicaみたいにNFCの物理カードもあるのですが、そのカードのチャージをアプリを使ってできるみたいです。

試してみたかったのですが、残念ながらマレーシア国内で発行されたクレカか口座からしかチャージすることができないみたいで、試せず。

また、タッチアンドゴーは、日本のSuicaみたいに、iPhoneの中に取り込んで利用する(Apple PayのExpress)ということはできないようでした。

というかApple Payがそこまで普及してなさそう。

結局このあたりは登録したけど、チャージすることはありませんでした。

というのも、だいたいクレカで決済できるし、屋台とか小さいお店なら現金のみのところも多いからです。

あと大体クレカのタッチ機能が使えるので、そのクレカもってたらQR決済は必要なしでした。

ちなみにJCBはほぼ使えないのでお気をつけを…


コミュニケーションアプリ

・チャット
 ・ワッツアップ

日本でメッセージアプリといえばLINEですが、マレーシアではワッツアップ。
ワッツアップの連絡先もってる?と聞かれる場面が何度かありました。

アプリの機能としては、「LINEの基本機能だけ」がある感じです。

移住とか考えるなら必須のアプリみたいです。


その他

iPhoneのカメラ音

これ、ぶっちゃけ今回の旅で1番驚いたことなんですが、
iPhoneのカメラ撮影音が、マレーシアのSIMを挿したら、なんと音がしなくなりました。

日本のAppleストアで買ったiPhoneだったんですが、日本だとカメラで撮影するとカシャって鳴っていたのが、マレーシアでは無音!

5年くらい前にマレーシア来た時には音が消えてなかったような気がしてたんですが、調べてみるとこんな記事を発見。

最近のアップデートで実装されたみたいですね。

こういうのも海外に来てみないと気づかないことですね。

SIMを入れ替えしなくても、マレーシアに来ただけでカメラの撮影音が消えるかもとのことです。

音のならないiphoneのカメラは使ってみると煩わしくなくていいなと思いました。。
日本に帰ったらまた急に音が鳴るようになって、なんかストレス。

もちろん盗撮対策でこうなっているのは理解しているのですが、盗撮する人は音ならないカメラアプリとか、スマホよりももっと小さいアプリ使ったりしてるんじゃないかと思うので、いつまでこの機能必要なんだろうって思ったりもしました。(とはいえ、ここを変える議論は起きないのだろうと思いますが)




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