見出し画像

"SoundUD SDK"を活用したしたタクシー利用体験向上設計

以前在籍していたタクシーアプリGOについての記事です。
現在は所属していませんので記載当時の情報としてご理解ださい。
最新情報はGO株式会社までぜひ問い合わせをしてみてください!(多分歓迎されます!)

こんにちは。
普段は「プロダクトマネジメント」に関するnoteを書いてます、@go-go-pdmです。
https://twitter.com/go_go_pdm

■自己紹介
現在、フリーランスで「アプリやDXに関する商品企画・開発(プロダクトマネジメント)支援」の仕事をしています。

これまでの経歴:プロダクトマネージャー歴12年
ex)フリーランス←メルカリ←タクシーアプリGO←DeNA←スマートロックAkerun←SoftBank

noteでは、経営・企画・プロダクトマネジメント・キャリア(転職)の情報発信をしています。

https://twitter.com/go_go_pdm

今日も「プロダクトマネージャーブログリレー2022@MoT」の一環でブログを書きます。

今回はSoundUD SDKを使っての、UX向上設計についてがテーマです。
( SoundUDはヤマハ(株)の登録商標です)

※ 本ブログは、22年1月に「SoundUD推進コンソーシアム第4回総会オンライン」で登壇・発表した内容の書き起こしとなります。

目を瞑ったタイミングでキャプチャしちゃいました、すみません

当日のスライドは以下よりご覧いただけます。

今回はどんなことを書くか?

ユーザペインがあり、それを解決するために外部ソリューション(外部SDK)を比較検討して、導入に至った経緯の説明したいと思ってます。

弊社はフル内製で開発をしていますが、質の良い外部のソリューションを持ってくることもプロダクトマネージャーの仕事の一つかと思います。

今日はそんな1つの事例です。

また、私がこれまでのキャリアとしてIoTやハードウェアも絡むソフトウェアのプロダクトマネジメントをしてきたことから、
これまでのスキルや生きた経験なども述べたいと思います。

SoundUDとは?

ヤマハ株式会社が事務局を務めるSoundUD推進コンソーシアムが提供する音を用いた通信技術です。

https://soundud.org/sud/

"SoundUDは一般的なスピーカーで使える音の通信技術です。
音のある空間と特定の情報やサービス、そして、その空間にいる利用者をつなげることで、情報伝達をスムーズに行うことができます。"
"SoundUDは様々な情報やサービスと連携することができます。
音声の情報を多言語の文字でスマートフォンに表示する、といったユニバーサルデザイン化を基本として様々なサービスを設計するための音響通信ライセンスも利用できます。"

簡単にいうと、QRやBluetoothでなく、アプリとオフラインを繋ぐ、OMOツールの一つと言えます。
そして特徴的なのは「音声」を使っている点です。

身近な例で言うと、京急電鉄にて、オフピークな車両に乗車するとポイントがもらえるという施策のために、アプリとの紐付けに利用されているようです。

ではタクシーアプリGOでどのように活用してるか?

タクシーアプリGOでは、アプリを使ってタクシーを呼んだ時でなく、
例えば、大通り沿いで流しのタクシーを捕まえた時や、駅や空港などからタクシーを乗ったときに、
このSoundUDを利用しています。

どのように利用しているか?

① タクシーに乗り込んだ後に、車内に搭載されている後部座席タブレットの「GO Pay」ボタンを押す
② 後部座席タブレットから、音波が出る
 → SoundUDの出番
 → この時、トークン情報を含んだ音波が流れる
③ GOスマホアプリを開くとスマホのマイクが音波を拾う
④ 乗車してるタクシーに関する情報がサーバに打ち上げられ、タクシー情報とアプリユーザの情報が紐付く
⑤ 降りる際に、アプリに事前に登録しているクレジットカードで決済が自動的に行われるようになる

このような流れになります。

どんなメリットがあるのか?

お客さまとしては、タクシーを降りる際の支払いをスムーズにできるメリットがあり(着いたらすぐに降りられる!)、
また、タクシー乗務員さんとしても現金でのやりとりが不要になります。
お釣りの計算なども不要になるし、正確に金銭のやりとりができます。

GOアプリに登録したクレジットカードなどの決済手段を使って、タクシーに降りるときに自動で決済してくれる、というのは、
これまではアプリでタクシーを呼んだ時のみに利用できるサービスでした。

そこを、流しなどのタクシーでもこの機能を使えるようにしたのです。

どうやってこのサービスにたどりついたのか?

結論から申し上げると、社内にSoundUDの技術を知っている方がいて、その方にご紹介いただいた、もっと言うとその方が今回紹介してる使い方できない?と仰っていたのがきっかけでした。

ただ、私としてもこれまでIoTのプロダクトマネージャーをしていた経験もあり、
またビックサイトでよく開かれている展示会などにもよく出向いて情報収集をしていたので、
スムーズに技術検証を進めることができました。

(こういった足を運んだ情報収集はPdMとして大事だと思います)

DXやIoTに関わる方は、ハードウェアや無線技術も含めたプロダクトマネジメントは避けられないと思いますので、普段から展示会などに通って情報収集するメリットはあるかと思います。

また、簡単な電子工作などしてみても、ハードウェアや無線技術などのプロダクトマネジメントの肌感を掴むことができると思います。

どんなユーザペインを解消したかった?

まず導入理由を説明する前に、ユーザのペインポイントを整理しておきます。
実はこれまでもQRコードを利用した同様のタクシーでの仕組みはありました。

実際にタクシーGOでも、SoundUDと併用でQRコードでも紐付けできるようになっています。
(※ QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です)

QRコードをカメラで読み込むのは一般的ですし、またQRの生成についてはコストもかからないのがメリットです。

一方、後部座席タブレットにQRを表示して、それをスマホのアプリで読み取るにはいくつかのペインポイントがあります。

③のみ簡単に解説すると、
タクシー利用というのはビジネス移動や接待の帰り、飲み会の帰りなどが多いです。
接待や飲み会の帰りなどに上司とタクシーに乗り込む場合、経費で落ちないために、上司の方が支払いたいパターンがあります。
その場合、座席位置としては上座に座っているので、QRが読み込みづらい状況が起こり得るのです。

これはあくまで一例で、複数人で移動する際には同様の問題が起きることが想定されます。

以上のことから、QRコード以外の体験を叶えるソリューションが欲しかったのです。

Bluetoothではなぜダメだったのか?

さて、導入に向けて比較検討したのは主に3つでした。

①QRコード
②SoundUD
③Bluetooth

①については先に課題を記載しましたので、
③のBluetoothについて説明します。

Bluetoothというのも、双方の機器にBluetoothのチップが搭載されていれば、利用可能です。

また、ソフトウェアとしての利用料も掛かりません。
ただし、接続に関しての不安がいくつかあります。

1、接続成功率がそこまで高くない

よく百貨店などで来店するとスマホに通知が来るような体験をしたことがあると思います。

それは大抵はBluetoothを使っており、設置されたBluetoothの機器からふわっとペアリング前の信号をあらゆる方向に飛ばしていて、その範囲にスマホが入ると、スマホがBluetoothをキャッチして、シーケンスが始まり通知が来る仕組みです。
sutec.co.jp/articles/beacon/

ただし、これは成功率が思ったより高くない。

Bluetoothをオンにして、そのお店のアプリをインストールして、しかも立ち上げててバックグラウンド状態にあったとしてもです。

これでは、タクシーの後部座席タブレットとスマホの紐付けに不安が残ります。

2、Bluetoothの出力調整がムズい

Bluetoothは最大で100mちょっとまで電波が飛びます。
そうすると、タクシーの外を歩いている人にも反応がしてしまうのです。
ここでの最悪のケースは、タクシー横を歩いただけで、知らない人が乗ってるタクシーの決済予約が完了してしまうということです…

これはさすがにアカン。

Bluetoothは直進性が低いので、タクシーの扉と窓ガラスが遮断して外には漏れ出さないのでは?と思う方もいるかと思いますが、これが結構通ってしまうのです。

その実験を実は前職の時に実験して体感していたので、懸念はどうしても拭えないのでした。

SoundUDの接続率は優秀

1、接続率が100%という驚異の接続率

後部座席タブレット(音声出力)とGOアプリ(音声入力)にSDKを仮実装して、テストしてみたところ、接続率が100%という脅威の接続率だったのです。

2、タクシー横を歩いても勝手に紐付けは起きえない

機器接続のための条件として、
・スマホアプリGOが立ち上がっていること
・音波なのでタクシーの外に漏れにくい
というのがあったので、タクシーを横を歩いている人が勝手に決済予約になってしまうというリスクを防ぐことが可能でした。

導入時に気をつけたこと(導入に当たってのUX面での考慮)

UXというのをとても気をつけました。

というのも、SoundUDを使ったサービスはそこまで多くなく、接続方法として一般に浸透しているものでなかったからです。

また、「音波」を使って紐付けが可能です!と言ったところで、イメージがつかずに「?」となってしまうのが関の山です。

ではどうUX面を気をつけたのか

それは、SoundUDの存在や音波を使っているということは説明せず、気づいたら接続ができている世界線でした。
そのために実現したUXは以下です。

① 後部座席タブレットで「GO Pay」ボタンを押すとQRコードが表示される(裏でSoundUDも出力されている)
② ユーザとしてはQRコードを読み込もうと思って、GOスマホアプリを立ち上げる → 接続が完了する

こんな感じです。

「あれ?QRコード読んでないけど、接続って出たな、となります。とりあえずそのまま先に(決済予約)に進むか」

みたいな感じで思ってもらえればというUXです。

もちろん初回だと、「なんだか訳もわからず接続されちゃったので、QRコードを読もう」となる方もいるかと思います。

ただ、タクシーというのは年に何度も乗るものかと思いますので、2回目以降に慣れてもらえればこっちのものと考えました。

ここで変にSoundUDを利用して〜と説明をこちらがすることや、ユーザに「Bluetoothでも使ってるのかな」と考えてもらう必要すら省いたのが今のフローなのです。

もちろんこれでUXとして完成という訳なく、もっともっと良いユーザストーリーを作ることができると思いますので、
接続部分の改善は続いていくことになります。

SoundUDを利用しての将来図

① 対応する車両を増やしたい

説明が漏れていましたが、実はSoundUDが搭載されている車両はGOの車両すべてという訳ではありません。
地域によっては、例えば神奈川県などでは90%近くの車両で利用することができるのですが、
他の地域では利用できる率がそこまで高くないのです。

ですから、今回記載した内容について、特に東京に住んでいる人などは「あ!あの機能ね!」と、思いつかない方もいらっしゃるかと思います。

UXとしてはQRの課題を克服しているので、ぜひとも他の車両にも搭載して、この体験をみなさんにもしてほしいと思っています。

② (紐付けした後)決済予約だけじゃないユーザメリットを出す

今SoundUDを用いて紐付けをしたところで、ユーザとして操作できるのは「決済予約」だけになります。

他にももっと色々な機能が使えてもいいでしょう。

もしかしたらある日ポイントが貯まる、みたいなことがあるかもしれませんし、
海外のライドアプリのように、安全観点から今知っている位置を他人に知らせるなんてことをしてもいいかもしれません。

OMO(Online Merges Offline)の考え方のように、
流しでタクシーに乗るというアナログな体験に対して、スマホアプリを紐づけることで、ユーザに対してデジタルならではの体験を渡すことができる、
ということが可能になるかと思います。

※ QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です
※ SoundUDはヤマハ(株)の登録商標です


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?