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勝手にアナリストレポート Vol.1017:アイスタイル(3660 TSE-P 時価総額430億円)

今回はアイスタイルを取り上げてみました。前回に続き今回も決算速報形式です。故にディープな分析ではなく、今回の決算では何に着目すべきかを伝えるレポートになっています。
決算シーズン、機関投資家も連日何十社という企業の決算を追いかけます。夕方15時以降に開示された決算を分析して、翌営業日の寄り付きまでには投資判断(HOLDなのか、売るのか、買い増すのか、などなど)を下す必要があります。アナリストはその判断をファンドマネージャーに伝えなければなりません。実際には事前にある程度想定は持っているので、決算当日にじたばたするケースは少ないかもですが。
よって、アナリストレポートもダラダラと新聞記事のように事実を書き並べるのではなく、決算に対するインプリケーションを端的に伝える必要があります。以前、私の同僚(今は著名ファンドマネージャー)は全て4行コメント(たまに「ダメ!見る価値なし」という一言の時もありました)でメッセージを伝えていました。プロ同士の会話なので、本来それでも良いのかもですが、コンプライアンスルールによって誰も喜ばない文言を書き記さないといけなくなっており、レポートはどんどん読みにくいものになっていたりします。
余談はこれぐらいにしておいて、本題に入りましょう。

アイスタイル(3660)

24年6月期3Q決算ファーストインプレッション
マーケティング支援の成長加速に期待

<キーポイント>
・24/6期3Q累計の営業利益は当初会社計画を超過して着地。実績に鑑み、24/6期通期会社計画は引き上げられた。
・ただし、4Qにおいて事業基盤強化に向けた投資を行うことから、増益幅は限定的なものになっている。我々は足下の事業基盤が確固たるものになってきていること、将来を見据えた先行投資を行っていること、をしっかりと理解したい。この戦略が成長可能性の引き上げに繋がることを期待したい。
・現状はリテール事業が全体業績を牽引しているが、今後はマーケティング支援事業での成長加速にも期待したい。それがバリュエーションの拡張に繋がっていくと我々は考えている。

<本文>
アイスタイル(以下、「同社」)の24/6期3Q累計業績は、売上高40,980百万円(前年同期比+32%)、営業利益1,455百万円(同+168%)となり、当初会社計画に対し、段階利益を超過しての着地となった。同社は実績に鑑み、通期会社計画を引き上げた(売上高500億円→550億円、営業利益12億円→17億円)。この計画から計算される4Q計画は同17%増収、10%営業減益。3Qに一過性の費用147百万円を計上したことに加え、4Qにはリテール事業および全社で事業基盤強化に向けた投資を行うとしていることから、25/6期以降の成長可能性の目線を引き上げたいところである。

3Qにおいても業績の牽引役はリテール事業。店舗事業は直営店の坪当たり売上が同+38%と伸長したこともあり、前年同期比+49%を記録した。一部商品において値上げ前の駆け込み需要もみられたようである。EC事業は2Q開催の@cosme BEATY DAYによる顧客醸成が奏功したこともあり、同+32%となった。

一方、グローバル事業は2Qに続き3Qも前年同期比減収となり、営業赤字幅も拡大している。マクロ環境が厳しいことに加え、収益性の高い商品にフォーカスした販売戦略を採用した結果、中国越境ECが減収となっているようである。

好調なリテール事業に加え、3Qにおいてトレンダーズ(6069)との資本業務提携、JR東日本とのコラボレーション、花王とのRNA共創コンソーシアムの設立、といった取り組みが進んでいる。4Qには事業基盤強化に向けた先行投資も計画している。24/6期会社計画が引き上げられたこと、4Q会社計画が一見保守的に見えることを株式市場は短期的に評価するかも知れないが、本質的にはリテール事業主導で22/6期まで続いた営業赤字体質からの脱却が鮮明になっていること、リテール事業成長の陰にはマーケティング支援事業との高い親和性が存在していることを改めて認識すべきだろう。マーケティング支援事業の増収率が現状の10%台から20%超へと加速してくることが、同社ファンダメンタルズに対する一層の評価向上に繋がると我々は考える。


決算コメント
株価チャート(直近1年)SPEEDAより

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