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東京上空50フィートの未来 GINZA SKY WALK 2024

GINZA SKY WALK 2024

―――高速道路を歩いて、未来を感じる3日間。


そんなテーマのもと行われた《GINZA SKY WALK 2024》というイベントに参加した。


東京のまんなか、新橋から有楽町、銀座を抜けて京橋にいたる全長およそ2キロの高速道路「KK線」。


《GINZA SKY WALK》は、その「KK線」をゴールデンウィーク期間中の3日間限定で歩行者専用の道路として開放するというイベントだ。


子どもの頃から銀座が好きで、数えきれないほど足を運んでいるがさすがに高速道路を歩いたことはない。


これは! と思いさっそく応募した。

KK線とは

1959年に開通(全線開通は1966年)した「KK線」は、3本の川を埋め立てることでつくられた高架の自動車専用道路である。


今回の《GINZA SKY WALK》では、かつて汐留川にかかっていた蓬莱橋附近がスタート地点となっていた。

ときどき通る道だが、ふだん自動車に乗らないせいもありこんなところに高速道路の入口があったとはまったく気づかなかった。


合流地点までは上り坂。


クルマなら十秒もかからず通り過ぎてしまうところだが、いざ歩いてみるとけっこうな勾配だ。

うひゃー!これはテンションがあがる。


「合流注意」の標識とともに一気にひらける視界。

合流地点は銀座8丁目の中央通り。かつての「新橋」の真上に出た。


見晴し台ならぬ高速道路上からの銀座アルプス(©️寺田寅彦)の眺望。谷底には川ならぬ歩行者天国。

《未来の原風景》

土橋の附近で道は右に急カーブ。ここで汐留川は外堀にぶつかる。ここから先は汐留川を離れて外堀の上を進んでゆく。


左に新幹線をふくむさまざまな列車が行きかうJRの高架。右に丹下健三設計の《静岡新聞・静岡放送東京支社ビル》。


1967年竣工。おととし解体された黒川紀章設計の《中銀カプセルタワービル》と並ぶメタボリズムの代表作だ。


新幹線×ハイウェイ×個性的なフォルムの建物…… 星新一のショートショートと真鍋博のイラストで育った昭和時代のキッズには、まさに子どもの頃にあこがれた《未来》の原風景がそこにあった。

真鍋博の描く21世紀

自動車専用道路から歩行者専用道路へ

ところで、この「KK線」だが近い将来の廃止が決まっている。

設備の老朽化にくわえ、首都高速道路の新ルート整備にともないひとまずその役目を終えるということらしい。


廃止後は、既存の設備を活用してこれまでの自動車専用道路から歩行者のための空中回廊への転換が計画されている。

数寄屋橋に近づくと、右手に関東大震災の後に建てられた《中央区立泰明小学校》(1929年竣工)の校舎が見えてくる。


耐火性を重視したコンクリートの校舎と延焼を防ぐ火除け地にもなる公園がセットされている、いわゆる復興小学校+復興小公園のひとつとして貴重なもの。

GINZA SAMBA

ジャジャン! 晴海通りの数寄屋橋交差点から銀座4丁目方面を臨む。


数寄屋橋といえば、新海誠じゃないほうの「君の名は」の聖地。


ちなみに、昭和の終わりまではまだこんな感じだったんですけどね。

いや、いまよりむしろ“未来”っぽさあるような。


ところで、スタン・ゲッツとカル・ジェイダーが競演した《GINZA SAMBA》なる曲がある。

めくるめくようなサウンドは、まさにこの時代の銀座に似つかわしい。


でも、じつを言うとこの曲名、カリフォルニア州モントレーにあった日本料理レストランの屋号から頂戴したものらしいのだけれど。


こちらは同じ位置から日比谷方面を見たところ。

突き当たりの緑は《皇居》。右手の阪急百貨店のところにはかつて《日劇》があった。


《日劇》そのものよりも、個人的にはなぜか建物の前にあった有馬温泉のジオラマの唐突さが記憶に残っている。

東京上空50フィート

いつもは地上から見上げている《銀座教会》も、この高さから見ると壁面の緑色のタイルが美しいとかフォルムの面白さとか新たな発見がある。

この日、高速道路の上ではさまざまなイベントも開催されていた。


ジャンクションのあるあたりは思ったよりスペースもゆったりしている。


人工芝を敷き詰めた即席イベント会場ではちょうど日本大学吹奏楽研究会が演奏中。

高速道路なので当然“料金所”もある。

ここでふたたび道が大きく右カーブ。外堀から京橋川の上に進む。

ふりかえると回転レストランを頂いた《東京交通会館》のビルが見える。


回転ドアとか回転レシーブとか回転ベッドとか(⁉︎)、なにかと回転させたがるのが昭和時代なのである。

ヒサヤ大黒堂の巨大な「ぢ」もやけに薄べったいビルディングも、地上を歩いているかぎりは案外気づかないものだ。視点が変わるだけでこんなにも景色が変わるのかとシンプルに驚く。


そういえば、なんかこんなふうなかたちをした外国のお菓子なかったっけか……


思い出した!バンビーニ!

そうこうするうちに銀座一丁目の「京橋」に到着。


このずっーと向こう、銀座八丁目からぐるっと周ってここまでたどり着いたのだ。

京橋では道路脇に鯉のぼりも登場。


ピチカートワンもカヴァーしたINO hidefumiの曲に《東京上空3000フィート》がある。

一方で、地上から見上げるのでも空高くから見下ろすのでもない《東京上空50フィート》の眺めだってなかなか魅力的なんじゃないか。


ただなんとなく「未来」と口にするとき、ぼくらは何百年も何千年も先のことを思っているわけではない。そんな先の話なんて想像もつかないからだ。


ぼくらにとっての「未来」とはいつだって、その意味で手が届きそうで届かない近い未来、現在から50フィートくらいの未来のことをイメージして語っているのではないか。

21世紀のあたらしい銀ブラ

本線を行くか、それともここで降りるか、運命の分かれ道⁉︎


遂にゴール地点の新京橋に到着。

スリップ注意

スリップに注意しながら高速道路を降りるベビーカーの家族連れ。


買い物ではなく、ただ銀座の空中を散歩する。


これぞもしかしたら21世紀のあたらしい銀ブラになるかもしれない。

おまけ 氷出しコーヒー

天気予報によると、この日の東京は30℃ちかい暑さになるという。


もしや氷出しコーヒー日和では?


水筒に入れるつもりで朝から仕込む…… が、5時間経ってもまだできない……。

あきらめて帰宅してから飲みました。気温にもよるけれど7時間くらいは見ておいたほうがよさそう。

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