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JPO日記

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JPOとしてWHOで働いていた時の話
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記事一覧

JPO派遣制度への応募を検討している若者への、たった1つのアドバイス

先日、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー (Junior Professional Officer; JPO) 制度への出願についてXで何気なく呟いたところ、普段よりもエンゲージメント⬆️だった。やはりキャリア系の投稿は需要があるんだなぁ… 私が外務省のJPO派遣制度に応募したのは5年以上前なので、試験の詳細は忘れており、試験対策等で気の利いたアドバイスをすることは難しい。じゃあ今更JPO受験に関する記事なんか書くなよ!と怒られそうだが、本稿ではJPO合格にも直結し、

「JPOという選択」の良し悪しを振り返る

JPOを卒業したにも関わらず「JPO日記」を書き続けるのもどうかという気がするので、JPO日記の締めくくりとして、JPOという選択肢について改めて振り返ってみたいと思う。 私は約3年前にJPO制度を用いてWHOに入職することになった際に、以下のような記事を執筆した。今読み返すと大分青臭い記事で、恥ずかしさのあまりに削除したくなるが、まぁ記録として残しておこう💦 JPOというキャリア選択について言えば、まぁ結果的には正解だったと思っている。でも、そう思えるようになるまでには

ポストを作って国際機関で生き残る

幸いなことにJPOを卒業した後にtemporary appointmentという任期付き正規職員(仮)のような立場でWHOに残留することができた。率直に言って嬉しい反面、任期は1年間でその後延長できるか不透明なので、首の皮一枚で繋がっているようなものなのだ。就活は続けなければならない。 このポストは上司と交渉して、現職場に増設してもらったポストである。他の国際機関の事情はよく知らないが、JPOから空席公募を通じてWHOの正規職員に選ばれるハードルは高い。空席公募のボリューム

WHO「本部」で活躍できる人材とは?

諸事情がありWHO本部から某国の国事務所に異動することになった。その詳細についてはおいおい触れるとして、今回の一件はWHO本部に向いているのはどんな人材か?について深く考えさせられた。あくまでも私の経験に基づいた話で一般化できないかもしれないが、これから国際機関を目指す日本の若者の参考になるかもしれないので以下にまとめたい。 WHOの役割・機能を理解するFrenkとMoonは、WHOを含むグローバル・ヘルス・システムの機能を4つに分類している。 私もこの分類は正しいと思う

グローバルヘルスで専門分野ってどう決めるの?

3月は日本が春休みだからなのか、グローバルヘルスに関心がありジュネーブを訪問しに来た大学生・若者と話をする機会が多かった。現役WHO職員との懇談の場がセッティングされ、彼らのキャリア形成に関する悩み相談を聞くことになる。そこで気づいたのだが、彼らの、特に大学生の悩みの8割は「専門分野として何を選んだらよいか分からない」なのだ。まぁ確かに難しい。私自身も30半ばで、ようやく専門としたい分野がクリアになった。私が大学生の頃を振り返ると、キャリア構築に対する考えがいかに浅かったか(

UHCの専門家にはどうすればなれるの?

本稿で繰り返すまでもなく、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage; UHC)の達成は数あるグローバルヘルス・アジェンダの中でも最も重要な物の1つである。例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3.8はUHC達成である。また世界保健機関(WHO)の第13次中期計画(GPW13)では、UHC達成は3本柱の1つである。 日本は低中所得国がUHC達成を支援するために多大な資金援助をしている。例えば、2018年に日本政府は世界保健機関

世界保健機関(WHO)の保健システム分野における求人情報の記述統計的分析

私自身がJPOとして国際機関で生き残らなければならない立場であることを踏まえ、WHOの、特に私の関心領域である保健システム分野の求人情報を分析してみた。残念ながら商業誌に投稿する程のものではないのだが、将来はWHOで仕事がしたい!という方には有益な内容であり、本noteにひっそり公開することにした。 公開から年数が経ち多少データが古くなっている点は否めないが、採用に関して同様の傾向は今でも続いている。有料記事ではあるが、ぜひお手に取って頂けると幸いである。 追記:記事投稿

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JPO生活3ヶ月目の振り返り

JPOとしてWHO本部があるジュネーブに赴任し、早くも3ヶ月が経過した。あっという間だった。色々なことがあった。今までは半年〜1年単位で振り返ることが多かったのだけど、今回は私の人生において大きなtransitionだったので、あえてこの時期に振り返りたい。簡潔にまとめようとしたが、結局長くなってしまった… 仕事最初の1ヶ月間は、ITトラブルで苦慮した。まず職場のパソコンにログインするためのアカウントを作成するのに2週間かかった。民間企業なら初日できてそうな者だが…。その後

WHOで私は何をやっているのか? - UHC Partnership について

最近はジュネーブ訪問に来た知人やJPO応募者や会う機会が増えており、その度に「WHOでは何をされてるんですか?」と聞かれることが増えてきた。せっかくの機会なので、以下にまとめてみた。 まず私はジュネーブにあるWHO本部で働いている。しかしWHOは巨大なピラミッド型組織なので、本部と言えどもたくさんの部署があり、仕事内容も多岐に渡る。本部は原則としてcluster - department - unitの3層構造になっている(注1)。ただしHealth Emergency P

ジュネーブ生活立ち上げマニュアル

ジュネーブ生活に関するブログ記事等はネット上にたくさんあるのだが、情報が古かったり、断片的だったり、JPOには関係ない情報もあったので、特に赴任前後で必要な情報を簡単にまとめておこうと思う。ちなみにJPO合格までの話は、既に同期がブログに詳細を書いているので割愛する。 1. 事務手続き等年末頃にterms of referenceが届き、年始にoffer letterが届いた。そこから事務手続きが始まったのだが、兎にも角にも書類がたくさんあり、仕事の合間にがんばって書いた。

WHOのファイナンス

何をするにせよ、その元手となる金が必要である。一従業員として、雇用主がどのようにファイナンスされているのか知っておくべきだろう。と言うことで、さっそく以下にまとめてみた。ちなみに本稿ではResults Report 2016-17を例として取り上げたい。 予算WHOの活動予算(Programme Budget)は2年単位(biennium)で決められている。現在は2018-2019年の予算年度である。規模は、例えばProgramme Budget 2016-2017はUS$

GPW13とは何か

先月、第71回世界保健総会(World Health Assembly; WHA)が開催され、WHOの2019-2023年の中期事業計画である13th General Programme of Work (GPW13)が承認された。このGPW13は意欲的な計画で、テドロス事務局長の野心が伺える。1番の特徴はSDGs時代のGPWという点である。SDGsが既に採択されているという世の中で、WHOはSDGs達成のためにどんな貢献ができるか・そのために何をするべきかという視点がベース

向こう5-10年間で獲得したいスキル

三十路を過ぎてからよく思うのだが、単に仕事をしてるだけではスキルが伸びない and/or スキルに偏りが生じる、と感じるようになった。社会人になりたての頃は全てが新鮮で、周りの環境に影響されて勝手に成長することができていた。アラサー以降は、自らの頭で考えて今後のキャリアに必要なスキルを能動的に獲りに行かないと、職業人として頭打ちになってしまう。 そこでで軽く独りブレストをしてみた。向こう5~10年間で獲得したいスキルを列挙し、まずは「仕事 or プライベート」×「ハード o

JPOという選択

Junior Professional Officer (JPO)という制度がある。僕はこの制度を利用して、今月から世界保健機関(WHO)本部で働くことになった。それに伴い今の職場は1年も経たずに退職することになった。 日本のグローバルヘルス業界を知っている人の中には、もしかしたら僕の決断に疑問を感じる人もいるかもしれない。今の職場はこの業界で数少ない、安定した身分と給与を保証してくれる組織である。一方で国際機関は正規職員であっても2~3年の任期付きなので、来年の今頃から次