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火宅の兎 10

初めて靖子と逢ったのは、確か焼き鳥屋であったろうか?記憶違いも甚だしいと靖子は憤怒を示すやもしれぬが。まだ朔代が二度目の痩身であった頃のことである。縦川にあるチェーンの焼き鳥屋、鳥次郎で一緒にカウンターに座り、ビールと焼き鳥を楽しんでいた。その隣(朔代の向こう側)に座っていたのが靖子である。靖子は黒髪の似合う大和顔の女であった。話を聞くと小生と同郷(四国)らしく、懐かしい方言が小生の耳に心地よく響く。彼女は、晩年を迎えたが今尚、脂切った老紳士とカウンターに座り、晩酌を楽しんでいた。聞けばその紳士は土建業を営んでいるとの事で、我々に一杯、御馳走してくれた。

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