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関西では珍しい、「1区画だけの貸切キャンプ場」を一年運営して思うこと。

こんばんは。ずいぶん投稿に時間が空いてしまいました。

2021年後半からほぼDIYでつくりはじめ、2022年6月にキャンプ場「Mandarin Field」をオープンして一年が経ちました。
関西には多くの個性的なキャンプ場があります。個人的に好きなフィールドも多々。それらとはちょっと違う場所をつくろう。
その意気込みが夏の水不足でヘロヘロになったり、秋は台風で一ヶ月間週末が全てキャンセルになりめげそうになるなど、気持ちの浮き沈みも激しい一年でしたが、2年目に入り、ちょっと振り返ってみました。

個性的すぎるのは、どうなのか?

僕の施設は
1.みかん農園内にあり、農薬に極力頼らない空間で食の安全を感じてほしい
2.心の底からのんびりしてほしいから、受入は1日ひと組だけ
3.貸切=夜〜翌朝までは施設にお客さんだけ。つまりほったらかし
4.薪で沸かす風呂をオリジナルでつくった。が、沸くまで2時間
といった感じで、よく言えばユニーク、ナナメから見ると「よくわからない」とおもわれてしまいがちな施設です。
要するにシンプルじゃない場所。
多くの方に利用してもらいたいならば、
・シンプル&短い言葉で説明できる
・利用シーンを想像しやすいビジュアル
・リーズナブルな料金設定
あたりは必須項目ですが、なんと、どれも当てはまらない・・・。

開設にあたり、キャンプ場のプロデューサーやキャンプマニアに料金設定を相談しました。このくらいの金額で大丈夫だよ、と助言を受けた金額より少し低めに設定したものの、オープンして1か月で、それでもまだ高かった、と悟りました・・・。

すぐに料金設定を見直し、カメラマンに撮影してもらったビジュアルで告知を開始。少しずつInstagramのフォロワーさんが増え、予約が入るようになってきました。

が。ご利用いただいた皆さんは、それぞれにくつろいでいただいていたようですが、何組かに後日感想を聞くと、やはり、使い方にやや戸惑いはあったようです。

伝えていくって難しい。
これはもうひとつの仕事であるディレクター業でイヤと言うほどわかっていたことですが、ここでも痛感することになりました。

何を盛り込んだんだっけ?

2021年にみかん園の農園主と出会い、安全・安心なみかんを食べてほしいと挑戦する彼を応援したいと一念発起し、融資を受けて開設準備に取りかかりました。
一番頭を悩ませたのは、当たり前のことですが、どんな施設にするかという点。ほかと異なるのは、ここは農園内のため、使えるスペースに制限があることでした。
農地を別の目的で使用するには用途変更の届出が必要ですが、変更してしまうと、もう農地には戻せません。農地は農園の財産ですから、絶対に用途変更はできない。
するとスペースはかなり限られてきます。
そこで、メインのスペースとして30㎡強のウッドデッキとトレーラーハウス、そこから少し斜面を上がった所に薪風呂とバイオトイレ、炊事場を設置する、変則的なフィールドにしました。

施設全景。現在は写真の右側にテントサウナもあります。
右奥に見えるのがバイオトイレです。周りはすべてみかん園。

そもそも薪風呂は、当初の計画にはありませんでした。
廃材置き場になっていた場所を整地しているときに、一段上の場所で農園主と話をしていたところ「ここにお風呂をつくって、景色を眺めながらのんびりできたら最高だなぁ、と思っているんだよね」という農園主の夢を知りました。
じゃあ、作りましょうよ。
そんな簡単な気持ちでつくることにしましたが、既製品のお風呂じゃおもしろくないなぁ、なんて余計な考えがでてきて・・・。
自分で図面を作成し、大阪の鉄工所を何軒も回り、つくってくれる所を見つける、なんて結構な手間をかけるハメになってしまったのです。
しかも、完成した薪風呂は、思いのほか沸くまでの時間が必要(冬と言うこともありましたが、当初は4時間かかっていました)。自分が客なら我慢できないぞ、と思い、炎の原理などをおさらいしながら、薪を入れる炉の部分は新たに図面を考え、つくり直しました。
沸くまで平均で2時間。どうせなら、親子や仲間と、薪でじっくり風呂を沸かす体験そのものを楽しんでもらいたいなぁ、という思いは、この時間ならなんとか叶えられるかな、と着地。

薪風呂です。風呂専用のウッドデッキも設えました。

それから、農園内にはトイレがありませんでした。とはいえ、汲み取りには来てもらえない山上にあるため、これまた悩みました。しかし、快適なトイレは、キャンプ場には欠かせないと考えていたので、水洗にはしたい。
いろいろ調べたところ、バイオトイレ先進国のオーストラリアでは家庭用の水洗バイオトイレが普及していることを知り、輸入を即断。コロナ禍による船便遅延の影響をモロに受けて、納期が2ヶ月も遅れましたがw。

農地って大切、薪火を楽しんで、快適なトイレで安心して利用してほしい、そんな思いを盛り込むことになりました。

ここは農園です。となるとキャンプ場では収穫体験などができそうですね。みかん園だから、みかんの収穫体験とか。
ところが、できません。ここでのみかんは、農園主の大切な収入源。すべて出荷する製品ですから。
そのかわり、ここは自然農園なので山菜がとにかく豊富です。シーズンごとに山菜の収穫期をアナウンスして、山の自然を感じてもらおう。そんな思いも盛り込みました。

そしてそして。農園があるのは、標高400メートルの山の上。近くに集落もないので、生活音がまったくありません。耳に届くのは鳥の声、のみ。この環境こそ施設の一番の魅力だ! と、積極的にアピールすることにしました。
この気持ちはまっすぐに届いたようで、ほとんどのお客さんが、静けさと鳥の声の豊かさに感激してくれているようです。

う〜ん、やっぱりシンプルじゃないですね。こうやってまとめてみると、間違いなく思いを込めすぎ。

これから、何を目指すのか。

さて、2年目に入りました。7月以降の予約も入り始めています。リピーターも誕生しました(うれしい!)。

関西では、施設の一部を貸し切るとか、貸切スペースを数か所用意した運営スタイルはあるものの、ひと組だけで施設を全部貸し切りできる場所は、知る限りありません。
要するにココは、極めてニッチなフィールドです。
運営が軌道に乗るまでには3年かかると考えていますが、そのためには2年目の今年が、重要だとも思っています。
そのためにやっているのは、お客さんに丁寧に向き合うこと。
といっても利用日の夕方以降はほったらかしになるわけですから、ご予約いただいてからご利用当日までの期間、できるだけオーダーに寄り添っていく、てな具合です。
これまで
・キャンプデビューなのです。どんな道具が必要ですか?
 →最初からアレコレ買うと無駄な物が増えるから、道具貸します、の対応

・子どもが小さいので、お風呂をプール感覚で使いたい
 →チェックインまでに水を溜めておきますね、の対応

・滞在時間を長くしたい
 →農園主の作業時間を調整してアーリーチェックイン、の対応

・雨だけど行きますね!
 →風呂を沸かす炉のところにタープ張っておく、の対応

などなど、できることはとにかくやってきました。ご予約後にInstagramのDMで多くの方がご要望を知らせてくれるので、やりとりする時間はたっぷりあります。最初は遠慮がちにご要望を送ってこられるので、少しずつ、少しずつ、やりたいことを全部こちらに出してもらえるように持っていく。

僕が一番望んでいるのは、キャンプするんなら、自然をたっぷり感じてほしい、ということ。農園にも興味を持ってくれたら嬉しいし、農園主にいろいろ質問してもらえたら、もっと嬉しい。
この施設に来たことが、次の日からの暮らしの、何かしらの変化につながれば。
・・・これまた、盛り込みすぎですね。

伝えていくこと、と同時に、「こんなことできたらいいな」(お客さんの要望と僕の希望の双方で)を叶えていくこと。今目指すのはその形です。

たくさんの思いで、フィールドができあがり、3年目を迎えたいと思っています。挑戦も回り道もまだまだ続く、です。

大きな台風がこの夏〜秋には来なければいいなあ。