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Neural Objects (1987-1994 自主開発プロジェクト)

1980年代後半から1990年代前半にかけて、GKテックが取り組んだ自主開発プロジェクトである ”Neural Objects”。ここでは、GKテックのその後の活動の礎となった一連の作品群と、それらを貫くコンセプトについて過去の文章や動画を引用しながら紹介したいと思います。


Neural Objects

"Neural Objects"は「いきもの」が持つ柔らかさ、自律しつつ協調する仕組みを基本のコンセプトとし、道具・環境・人間のインタラクションを「遊ぶ」実験的なObjectsである。

”Neural Objects” コンセプト
"Neural Objects" は、道具と人間との関係を問い直す一連の試みである。

道具が進化し骨格や筋肉に加えて神経系を持ち、
さらには頭脳を持つに至った今、
道具を「いきもの」として捉えること。
そして「しもべ」としての道具から
対等なパートナーとしての道具へ。
道具が周囲の環境や個々の人間と
アクティブな関係を持つことを認め育てること。
道具の役割や機能を恣意的にではなく、
あるがままに受け入れること。

自然のより深い認知から「自然観」が変革を迫られ、地球環境の保護という視点が生まれてきたのと同じ意味で、第2の自然としての道具に向けての道具観を、今こそ打ち立てるべきである。

引用)GK Report No.13 (2005)

はごろも (1987年 モータサイクル展)

ヒンジで連結された18枚の軽量プラスチックハニカムパネルで構成した平面が薄絹のような柔らかさを見せる。パネルに仕込まれた赤外線センサが人影を捉えると、背面に配置した形状記憶合金が作動して形態を変化させる。

Symphonic Object (1989年 名古屋国際デザイン博覧会)

やわらかい生命を包み込む美しい放散虫の骨格。そこにイメージの原点がある。現代人工物の骨格的象徴であるトラス。正20面体のトラスを基本構造として、トラスのメンバーに伸縮する空気圧アクチュエータを配置し、機械構造のやわらかさと機械が神経系を備えることによって生まれる動きのやわらかさを求めた。
一体毎に備えたコンピュータがオブジェクトの神経として、オブジェクト相互、観客とのコミュニケーション、光源、音源を含めたオブジェクトの動作を制御した。

あしあと (1994年 国立科学博物館)

夜光虫の群の中で夜の暗闇の遊泳をする。人間の動きに刺激されて夜光虫は光る。群は全体の司令塔は持たない。一匹一匹の判断で光る。一歩引いて遠目に見ると、海中には夜光虫の群が創る光る人影が見える。「あしあと」はそんな体験から生まれたものである。
刺激を受けたら興奮して光る。刺激を取り去ってからは緩やかに興奮が冷めていく。そんな簡単な仕組みを持った一匹を無数に平面に並べたもの。「あしあと」は常に特殊な赤外線を浴びている。一匹一匹の持つ赤外線の見える目を遮ることが刺激になる。100匹の格子状に並んだユニット(25cm角)を36個、すなわち3600匹の人工夜光虫が強化ガラスの床の下に埋め込まれている。

好光玉虫 (1994年 九州電力エネルギーフェア展示)

好光玉虫は光を食べて生きる虫。透明な玉の世界はちょうど地球と同じアクアリウム。光さえあれば動き続けることのできる世界。
玉虫のサイズは12cm。なかにはソーラーセル、モータ、スーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)、そして若干の制御回路が入っている。ステージ(2m)中央のスポットライトに照らされた玉虫は一定の充電量(満腹)になるまで静止している。満腹になった玉虫はステージ内を縦横に走り回る。充電量を使い果たす(空腹)とスロープを自然に下り中央で静止する。玉虫は重りの作用で常にソーラーセルを上にして、アクリルの玉自体が車輪の役割をして運動する。


この記事は、2005年にGKテック特集号として発行された「GK Report No.13」から一部を引用し、再構成したものになります。最後に、当時この活動について綴られた文章を引用して、記事を閉じたいと思います。

15年前我々はNeural Objectsという道具と人間の関係を問い直す試みを始めた。道具のやわらかさ、自律分散の仕組みの研究を通じて「いきもの」としての道具を模索した。

その研究から得られたことも大きいが、自主プロジェクトとして「もの」を自ら作ることによって得られた貴重な体験はより重要で、忘れることはできない。

「もの」を作るという人間の根源をなす所作の深い喜びと重み。同時に「もの」という物理的な実体の「いきもの」のような強さと脆弱さ。さらに「もの」が生み出され、公開され、廃棄されるまでの過程にコミットすることの楽しさとつらさ。

1.「もの」を作ること
2.「もの」の実体に触れること
3.「もの」の一生にコミットすること

この3点を基礎に現在のGK TECHが築かれた。

引用)GK Report No.13 (2005)