はばたけ、左投げ右打ち
あやしもさんの次男君が、この春中学校に入学し野球部に入ったと伺って、野球好きの私の心にはぽかぽかとした春の日差しが降り注いでいる。
昨年のワールドベースボールクラシック(WBC)をきっかけに野球を好きになり、大谷翔平選手のグローブに触れ、今野球選手としてのスタートを切った次男君の物語は、野球と出会ってどんどん新しい扉が開いていった自分の中学生時代を懐かしく思い出させてくれるのだ。
そんな次男君が左投げ右打ちだという情報をゲットして、私の胸は高鳴った。なぜならば、日本野球界において左投げ右打ちの選手は非常にレアな存在だから、なのである。
こんなコメントを書いたあと、きっと私が知らない左投げ右打ち選手もいるはずだと思い、調べてみた。
左投げ右打ちのプロ野球選手
まずは現役選手。
選手名鑑を片っ端から見ていった結果、現役の左投げ右打ちプロ野球(NPB)選手は育成選手を含め3人。
さらに、過去の左投げ右打ちで私が知っている選手。
ハル・ブリーデン(元阪神・内野手)
ジェフ・ウィリアムス(元阪神・投手)
スコット・マレン(元横浜など・投手)
筒井和也(元阪神・投手)
チェン・ウェイン(元中日など・投手)
ライアン・マクブルーム(元広島・内野手・外野手)
外国人の多さ。そして投手が多い。
メジャーにもいるぞ。
ランディ・ジョンソン
マイク・ハンプトン
リッキー・ヘンダーソン
知らない選手を含めても左投げ右打ち選手の数はかなり少ない。
いったいなぜなのか。
左投げ右打ちの選手はなぜ少ないのか
まず、左投げについて。
投手においては希少価値もあって「打ちにくい」とされ、重宝される左投げ。
しかし、野手の左投げになると「内野(一塁手以外)がやりづらい」というデメリットがある。
内野手は自分の体の向かって左方向に送球することがほとんどのため、左投げだと体を回転させて投げる必要があり、右投げに比べて余分な動作をしなければならない。これは送球動作が多く、しかも0.1秒でも早く投げなければならない内野手にとっては大きな違いになる。
左方向への送球がない一塁手や、角度のある送球・早い送球がそこまで必要ない外野手は、左投げでも問題ないと思われる。
次に右打ちについて。
右投げ左打ちの選手はたくさんいるのに、左投げ右打ちが少ない不思議。
左バッターボックスは右バッターボックスに比べ、わずかだが一塁に近い。さらに、スイングしたあと三塁方向に体が向く右打ちに対し、左打ちは一塁方向に向いているので、方向を変えずに走れる。
つまり、打率を稼ぎたい俊足巧打タイプの選手は早く一塁に到達できる左打ちの方が有利と考えられているようだ。
右利きの選手が自然に左打ちになったケースもあるだろうが、あえて左打ちに直した選手も多いのではないか。逆に左打ちを右打ちに矯正するケースは聞いたことがない。
またパワーヒッタータイプの選手にとっては、スイングするとき利き腕で押し込む力が重要とされ、右利きなら右打ち、左利きなら左打ちの長距離打者が多いイメージだ。
そう考えると、「守備位置に制限のある左投げ+一塁に遠く利き腕で押し込むことができない右打ち」の組み合わせは、確かに一見デメリットが大きいようにも思える。
野球は不条理なスポーツ
野球を観始めた中学生の頃、どうにも腑に落ちなかったことがある。
どうして野球場は大きさがバラバラなの?
小さい球場はホームランいっぱい打てるじゃん。
野球場は、塁間の距離やピッチャープレートから本塁までの距離には決まりがあるが、両翼やセンターまでの距離は規定を満たせば同じでなくてもよい。メジャーの球場には左右非対称なスタジアムもある。
他にも不公平なことはいろいろある。
グラウンドが土か人工芝か。
マウンドの高さ、柔らかさの違い。
野外球場か、ドーム球場か。
そもそも、右利きか左利きかでこんなにプレーに有利・不利が出るスポーツもあまりないのではないか。
だが、長年野球を観ていると、この不条理さこそが野球の面白さであることに気づく。
守りにくい球場で見せる野手の職人技だとか、球場の大きさによって異なる投手の配球。作戦の違い。小柄な選手がホームランを打ってみせる意外性。
不利と言われる条件を軽々と越えて、私たちの固定概念を壊してくれる選手に出会った時の喜び。それが野球を観る醍醐味だと思っている。
そう、大谷翔平選手のような。
だから、左投げの選手が内野を守ってファインプレーを連発したっていいし、右打ちで内野安打を量産したっていい。
野球はもっともっと自由でいいのだ。
はばたけ、左投げ右打ち
あやしもさんの次男君が野球部に入って、私はうれしいと同時に、少しドキドキしてもいる。
これから次男君は野球を通していろんな経験をするだろう。
それはたぶん楽しいことや嬉しい経験ばかりではなくて、くやしいこと、理不尽なこと、人の嫌な一面を感じることもあるかもしれない。
それでも、次男君が野球を好きでいつづけてくれたなら。
次男君のこれからの人生に野球があり続けてくれたなら。
野球好きのおばちゃんはかなりうれしい。
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