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叶わない夢

大好きとかそういう言葉じゃ言い表せないほど、敬愛するアーティストがいる。
私は、彼女の歌う「今」が好きで、彼女の「今」の声と言葉が好きで、同じ時代を生きてくれて有難い。
そんな私にとって特別な存在であるCoccoさんの新しいアルバム『ビアトリス』には、「叶わない夢」という一本の芯が通っている。

「叶わない夢」と聞くと、悔しさや虚しさをなんとなく連想するかもしれない。
しかし『ビアトリス』における「叶わない夢」は、そうではない。
「叶わない夢」を抱きながら生きる強さが描かれている。

そう、私ももうオギャーから31年経つわけで、「叶わない夢」には慣れっこだ。
まだ、自分が恋できないと知らなかった頃の夢は、ものすごいかわいい。
23歳で結婚し、子ども3人と、大きな犬2匹と暮らし、自宅の一階でカフェをやる。
まだ10歳にもなってない頃の夢。
まだ自分が子どものくせに、子どもの名前も決めていた。
天音と志音と葉音。
音楽になんの興味もない、ピアノの習い事が苦手だった私が、謎に三人に「音」をつけていた。
あの頃、23歳ってすっごく遠い未来で、その頃にはとっても「大人」になっているのだと漠然と思っていた。
これが、叶わないラインキング第一位で、かわいいランキングも第一位の私の夢。

「諦めないで」とか「いつか叶うよ」とかそういう話ではない。
今叶えたいわけでもない。叶わないって思っていること自体に、落胆や後悔もない。
ただ、それが綺麗で愛おしくてずっと「夢」として仕舞っておいている。
かわいい、かわいい私の「夢」。

十七歳で人生を終えること。
骨と皮だけになって、静かに目覚めない眠りにつくこと。
貴女と二人で、フリフリのお洋服を着て、素敵なお庭で毎日お茶会をすること。
現代芸術家になって、なにかしらの芸術祭に招待されること。
貴方と二人で、貧しくてもいい、小さな喜びを大切にしながら珈琲を淹れて生活すること。

これらは、私の「叶わない夢」。
全部大切だから、抱えたまま歩いている。
そんな私に、今回のアルバムは寄り添ってくれている。

叶わないと知りながら生きること
叶わないと知りながら仰ぐ空

 Cocco/クジラのステージ


ここまで生きてきたから、叶わない夢がかわいく見えるんだよね。
たくましく生きちゃっている。
でも私はなんにも変わっちゃいないんだぜ。

たまにはこうして、音楽について言葉にしてみるのもアリかしらと思った次第。
また書くと思う。

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