詩)ひとつの言葉
去る時が来て
男は自分のいた世界を振り返る
この世界に生きてきたこと
何を踏み締めようとしたのか
踏み締めたその先には
何があったのか
見せることを禁じられた 胸の奥から
血ではなく まして愛でもなく
鉄の冷たさでもない
ひとつの言葉を取り出し
見えないだろう まだ今は
なにがうまれるか
そこから飛び立つ蝶が
いま
羽を広げる準備をしていることなど
蝶はいま
おまえのその鼻先を
舞う
踏み締めた
ひとつの言葉が
羽音になる
2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します