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リトルブラックドレス。

 究極のエレンガンス、リトルブラックドレス。シンプルであればあるほど素材とカッティングが物をいう。その前にまず、己の肉体を鑑みる必要がある、なんちて。

 オードリーヘプバーンが好きすぎて、もうずーっと黒いドレスを買い続けてきた。高校の時から数えると多分40着は軽く購入してきたと思う。今ほどネットが発達してない時代、好きな雑誌が出ると、まず黒いドレスを探した。そして店舗に電話、片っ端から試着して回った。

 私の理想とする一着はティファニーで朝食をの刑務所にいるダーリンに会いに行く時に着ていた裾がフリンジになってるノースリーブのもの。かなり似たものを西麻布にあったアングロバールショップで見つけた時は 試着もせずに買いますっ!と宣言。勢いづいて合わせる黒い帽子も銀座ボーグでオーダー。

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 しかし、哀しいかな、日本でそんな格好ができるのは 結婚式くらい。室内挙式に、でかいハットで登場。食事の席で隣の人の顔にツバが当たる、当たる。脱ごうにも帽子の中の髪の毛はもう蒸れて、蒸れて、どうしても晴れの場で見せられない状態だった。人が私と距離を取る〜、厳しいデビュー戦なった。

 ・・・・それからは、もう少しカジュアルな黒いドレスを探し求めた。

 それは気軽に入った洋服屋で見つけた物だった。コットンシルクでボートネック、膝丈より少し長めでちょっとした会食にも、何か羽織れば普段使いもできそうな黒のドレス。ウエストに入ったダーツがオードリーを思わせた。

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 この日は平日で空いていてゆっくりショッピングができそうだったのと 店員さんの勧めもあり試着室へ。着替えていると、何やら店内が騒がしい。さっきまでお客さんはほぼ居なかったのに。

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『綺麗な人よねー』『黒いドレスを持っていったわー』『どちらにいらっしゃった?』『オードリーみたいよねー』

えっ?

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 わー、やばい、オードリーヘプバーンを意識してるのバレちゃってたのか。結構人がいるみたいだなー、今日は空いていたから積極的な接客をするつもりなのかなー。これは買わなきゃいけないなー、店員さん集まってきてるみたいだしなー、出ていくの恥ずかしいなー、もう買ってもいいけど、収まりつかなさそうだから、一応出て行くか。わー歓声が一際大きくなってるー、よし、

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SHIHO(モデル)がいた。(多分全盛期)

隣の試着室にいたんだね、私より先に。

 人生で3本の指に入るくらい恥ずかしかった。誰も私に注目してなかったのが幸いなのか、更なる不幸なのか←一応お客さん。

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 そっと試着室のドアを閉め、速やかに元の服に着替え、歓声冷めやらぬ店内を静かに後にした。誰も声をかける人もいなかったので、カウンターにドレスを畳んで置いてきた。

 今、現在もリトルブラックドレスは大好きで、素敵なものを見つけると わあって気分は上がる。だけど同時にあの鮮烈なSHIHOの姿を思い出し、ちょっと苦いものが込み上げてくる。

ドンマイ!自分。

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