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7インチ盤専門店雑記355「B面の愉悦11:立ち位置の変化」

今回のイベントの言い出しっぺであるSさんからのリクエストが、カーペンターズの「イエスタディ・ワンス・モア」のB面「明日への旅路 Road Ode」です。カーペンターズは何か一枚かける予定でしたから、これ以上ない嬉しいリクエストです。

カーペンターズが多くの楽曲を採り上げているポール・ウィリアムズのシングル「愛の旅路 Look What I Found」のB面が、大名曲「ア・デイ・ウィズアウト・ユー I Won't Last A Day Without You」でした。…アメリカ盤では「The Lady Is Waiting」という曲がB面なんですけどね。アーティストご本人のご意向かもしれませんが、どう考えてもB面の方がいい曲なんですよ。このB面曲をかけるか、この話題に関連して、カーペンターズの何かB面曲をかけるか、と考えていたんですけどね。

1970年代前半のこの時期、既にアルバム志向は強まってきておりましたが、カーペンターズは同時にシングル志向も強いアーティストですから、7インチ・シングルは重要なメディアだったと思います。コンセプト・アルバムという手法が人気になったり、長尺曲が増えてきて、60年代よりもシングル志向は弱くなります。「狂気」や「アニマルズ」といったヒット・アルバムからはシングルを出さなかったピンク・フロイドのような連中もいますからね。70年代はアルバムの時代と捉えております。

一方言ってみれば映像の時代となった1980年代、7インチ・シングルの立ち位置はさらに変わって行きます。Sさんは合わせて、B面曲のがっかりした経験の例として、フォリナーの「アイ・ウォナ・ノウ I Want To Know What Love Is」のシングル盤を挙げていらっしゃいます。B面の「ストリート・サンダー」はロス五輪のマラソンの公式テーマソングだったのだとか。でもこれが、インストルメンタルなわけです。名ヴォーカリスト、ルー・グラムの声を期待して聴いたらがっかりですね。本当に歌の上手い人ですからね。絶対音感レベルというか、全く音を外さない人ですよね。フォリナーのインストルメンタルは肩透かしですね。

80年代はもうシングルのB面が何かを意識する時代ではなかったような気がするんです。同じアルバムに収録された別の曲とカップリングするという利用方法にとどまらなくなりますから。「アイ・ウォナ・ノウ」はまだましかもという気もしないではないです。オリジナル・アルバムに収録されず、五輪公式アルバムにのみ収録された曲ですから、私的には付加価値があるようにすら思います。80年代のB面は、A面のリミックスが収録されていたりすることもあって、違った活用法も出てきますから、イベントではそちらに話題を振ろうかと考えております。

自分の7インチ盤の接し方が普通ではないことは十分承知しております。普通はLPを買うほどおカネがない場合などに買うもの、つまるところ、子どもの頃に買った懐かしいアイテムというわけです。聴くものが手元に多くあるわけではない場合、A面と同様にB面もしっかり聴きこむわけです。私も子どもの頃に買ったシングルのB面曲は、当然ながら思い入れがあります。回数多く聴いてますからね…。

カーペンタース関連ネタのついでに書いておきますが、A&Mでのカーペンターズは、やはりドル箱でもあったでしょうし、大事にされていたように思います。何はともあれ、レーベル・メイトであるポール・ウィリアムズの曲の情報が身近にあったことでしょう。また、それ以外にも、そんなことが感じられるシングル盤がありまして「ジャンバラヤ」なんですけど、カンパニー・スリーヴつまり内袋が、ナイフとフォークを描き込んだこの曲専用のデザインなんです。お料理ネタだからということでしょうが、経費が潤沢だったんでしょうね。…ありそうでなかなか無いタイプの贅沢です。

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