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悪意

前回より

"ホテル暮らしなどそういつまでも続けられない"

M氏からの連絡がしばらく途絶えていた事で社長の心は
落ち着きを取り戻していました。
ですから余計に、その気持ちが強くなってきたのです。
当然の事でした。
お金の事もそうでしたが、何より不自由さに我慢できなく
なっていたのです。

それでもやっぱりM氏への強い恐怖心を拭えない。
さてどうするか、、、
社長の自宅探しは実に厄介な問題でした。

それでも僕はこの問題解決に奔走する必要があったのです。

なぜなら、、、

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

悪意

「社長も会社もただのカネヅル、、、」

そのような悪意は微塵もありませんでした。

始めはただただ会社の為。
自分が思い描く”会社のあるべき理想の姿”を実現したかった。
そうする事が会社の為だと確信していたのです。

海の向こうではAmazonが産声をあげて間も無くの頃。
インターネットを利用した様々な事業形態が当たり前になる、
ちょうどその一歩手前の頃。
スマホもない、ネット通販なんて全然広まっていないそんな頃の話です。

優秀な人材を集め、新しい人気商品を次々と生み出す。
いち早くインターネットを活用した斬新で全く新しい販売手法を
構築し広く他分野でも活かし運営していく。
話題性に溢れ、誰もが知る有名な会社に成長させたかったのです。

それを"作り上げた男”になりたかったのです、、、。

実際に、僕は目標を追いかける明確な術、確固たるアイデアを形に
していました。
頭の中には実現までの青写真が出来上がっていたのです。

要約すると、、、
インターネットから如何にターゲットに直接アプローチできるか。
納得のいく購入につなげるか。
同時に如何に具体的な個人情報を囲い込めるか。
そしてそれらを他分野に活かし大きな事業展開を進める。

形にしていた確固たるアイデアとはこれら全てを網羅できる。
それまでに無い全く新しい発想の販売システムでした。

頭の中にその販売システムがパッと閃いた時、「これだっ!!」
そんな風に興奮したのを憶えています。
。。。

ですが、
僕にはその目標を追いかける資質と能力が欠けていた。
“忍耐力とか思慮深さとか一貫性とか修正能力とか、柔軟性とか
              戦略性とか人間性とか、、、etc”
様々、僕には必要な全ての能力が備わっていなかったのです。

偽善

何がそうさせたのか、、、
一言でいえばお金です
ただ単に、より贅沢な暮らしに目が眩んだのです。
仕事の成功より先に、目の前のお金に目が眩んだのです。

今思えば不思議でなりません。

人並みに余裕のある生活が出来ていたのに、、、
事業計画を軌道に乗せてからでもいいはずだったのに、、、
その方がずっと多くの贅沢を求められたはずなのに、、、
誰もが認める成功者になれたのに、、、

本当に残念でなりません。

潤沢(にみえた)だった事業資金。
魔法のように毎月入金されてくる売上は、時には数千万にも
上っていました。
その会社のお金を僕は自由に差配していたわけです。
名ばかりの社長と倉庫番とパートさんが2人の会社です。
前社長であり社長の元の夫であったK氏が抜けた後、
会社のお金を管理する者は事実上いませんでした。
それを僕は任されてしまった、、、。

「会社の為、社長の為」、、、いつしかそれは「自分の為」。
偽善の大志へと変わってしまったのです。

その時の僕が“そう”でいられたのは、いうまでもなく
全て社長の存在があってこそに他なりません。
ですから社長のプライベートをしっかりと握っておく必要が
あったのです。

僕が思い通りの贅を尽くす為に社長の新しい住まい探しは“最重要案件”。

つまり、、、
僕は問題解決に奔走する必要があったのです。

それはもう明らかな悪意だったのです。

こうして全てが僕の都合の良い状況に向かっていったのです。

激流の始まり


社長の自宅探しは一向に進みませんでした。

しかしそんな折、僕が留守にしている時のことです。
見知らぬ不動産屋が会社に社長を訪ねてきたのです。

つづく


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