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ぎっくりしゃっくり昼下がり - 夏ピリカ "不"参加作品 解題 -

これはテキストベースのラジオ番組「ぎっくりしゃっくり昼下がり」である。一回見ると忘れないこのネーミングセンス、ほんとにステキですね(褒めてます)。



みなさんこんばんはーっ!
お久しぶりでございます、はいっ!
ギク川霊でございますよみなさん!
わたくしですね、もはやレアキャラになってまして、いろいろ忘れられてるんじゃないかと! ないかとっ!

はいっ!
なんだか今年は早く梅雨が明けたと思ったら、また雨が続くような感じで、ちょっとこう、身体が慣れていかないような感じもいたしますけれども、皆さまお元気でお過ごしでしょうかっ!

前回のわたくしが出たのはですね、こちらでしたでしょうか、はいっ、じゃじゃ〜ん!


はい〜、ご無沙汰しております〜。
さてっ、
わたくしギク川ですね、マスクで自粛生活してますとですね、どうにもこうにも運動不足になりまして、ええ、わたくし最近ですね、家でもちょっとしたことで「どっこいしょ」って言っちゃうんですよっ!

もう、どうしましょう、これ!? いや〜ほんとね、我ながらですね、こういうところに気づいてしまうと、時の流れに身を任せちゃう感じでですね、毎日過ごしてしまうんでございますがっ! 


今日もですね、というか、お久しぶりにですねっ、geekさんと進めていこうかと思っております〜はい〜。

ということで、geekさんどうぞっ

こんにちは

はいっ、お久しぶりでございます〜。
geekさんは最近、いろんな方とお会いになったり、お呼ばれしたりとお忙しいようですが

あっ、そうなんですよ、ええ。
noteでお世話になっている方と、5人ほどお会いいたしました。

なななんと、そんなに!?

はい。ありがたいことに、ええ。
あとですね、おふたりほど、ちょっと予定が合わずお会いできないんですが、そのうちお会いできるでしょう。

なんと、引っ張りだこですねっ!

ほんと、ありがたいですね。普段の生活だと、仕事つながりで「お互い業務に利用できる関係じゃないと仲良くならない」みたいな感じがあって、それって、仕事以外の話にならないじゃないですか。

そうなんですか

noteだと、実社会の立ち位置とはぜんぜん関係なく、新しい関係を築けるところが面白いですね。所属や肩書を明かす方もいらっしゃいますけど、わたしはそういうのはやりたくないので。書いたところでそれが人の役に立たないですからね。

そぉなんですか〜

そぉですねぇ。仕事だと絶対に接点のない方々と知り合えて、なんだか面白いですよね。

そうですね〜
はいっ!
ということで、なんだかこの番組も久しぶりでですね、
初回のgeekさん紹介のような流れになりましたがっ!

なんだか新鮮ですね、まあ近況はこんなですよってことで

はいっ! 
それではですねっ、
今回も張り切っていきたいと思いまっす!

…はい。

よござんすか?

…よござんす。張り切っていきましょう。

ということでですねっ
ここ最近のお話なんですが

はい

夏ピリカ! 盛り上がってましたねぇ


おお、今日はその話ですか

はいっ!

事前に打合せがなかったので「おお」ってなりました。

えーっと、そうですね。
おかげさまで。といっても、わたしはゲスト審査員でお呼ばれしただけですので、運営側のことはわかんないんですけどね。

あ、なるほど。主催はピリカさんですもんね。
そしてお題は「かがみ」ということだったそうですが

そうですそうです。
それで、お題が決まった時にですね、
審査を仰せつかったんでちょっと考えたんですよ

何を考えられたんでしょう

曲がりなりにも審査なので、
自分が何を基準に読むのかってことなんですけどね

そういうのって、審査員どうしで相談したりは、しないんですか?

あ〜、いい質問ですね。
コンテストの切り口によってはそういう進め方もあるんでしょうけどね。

夏ピリカは、それぞれが真剣に応募作に向き合って選ぶって感じだったので、誰にも相談はしてないです。

な〜るほどぉ。
とするとですよ、geekさんはそこから自分なりの審査の基準を作られたってことになるわけですね?

そうなんですよ。ただ、

ただ?

そういうのってやったことないですからね。現実世界だと、仕事の書面の建付や資料の修正なんかはやりますけど、そういうのは人に、ひとめで正確に伝えることが目的じゃないですか。

ええ。

小説や文学ってそれと違いますからね。いろんな解釈ができる包容力だったり、表現の巧みさだったり、読み手が共鳴するストーリーだったり、いずれにしたって読んだ人なりの解釈じゃないですか。

そう言われるとそうですよね

となると、
そもそも何を軸にしたらいいのかってことになるんですけどね、

ええ

ちょっと考えると、そんなのないわけですよ

…あのー、ギク川ですね、今後の展開が急に不安に

なりますよねぇ(笑
でも、そのまんまだと困るので

困るのでっ、はいっ

この作品を自分で評価するとどうなるだろう、
というのを、
お題に沿ってひとつ書いてみました。

それはつまり、
ご自身で書いたものを評価する
ということをやられたんでしょうか

それに近いですね。
もうちょっと踏み込んで言うと
「自分ならこれは評価しない」
というものを狙って書きました。

えーーーっ!?
自分で落選作品を書いたってことですか!?

そうなりますね

それってどういう作品ですか?

こちらです


たしかに"不"参加作品って書いてますね

そうですね。
ここに書いたものは自分だと推さないものです。

どれどれ、ギク川読んでみていいですか?

どうぞ。

…はいっ! ギク川読みましたっ!

あ、ギク川さん、読むの速いですね。
ありがとうございます。
いかがでしたか?

なんだかですね、
小学生のさわやかなお話ですね!

そうなんです。それを狙いました。

他の作品を読んでないんですけど
なんだか、これだったら
いいところまで残るかなって感じでしょうか

なるほど、そう思われるんですね。
最後まで残ると思います?

そぉですね〜、
ギク川が審査したら、
う〜ん、他のを読んでないので、わかんないですねぇ

そうですよね。
わたしがこの話で狙ったのは
「途中までは残るけど、最後までは残らないもの」
なんですよ。

え〜っ!?
どういうことですか!?

読んだ後にどう思いました?

少年ふたりが、
ちょっとおとなの気分になったっていう

そうですよね、
途中までいかにもやんちゃな子供っぽかったのに
最後、ちょっとおとなになった感じがしますよね

しますします

それってコントラストをつけてるんですよ。
最初の教室の場面、追いかけっこ、お姉ちゃんの短歌の場面、そのあとに飛行機に光を当てようとするところまで、全部子供なんですね。
で、途中でサダオに気づかせるわけです。
「あんな遠くの飛行機に、光が届くのか? 届かないんじゃないか?」って

サダオくんが

そうです。近くなら光は当たるけど、遠くなら無理なんじゃないかって、素朴な疑問ですよね。彼はそう思ったけれども、選ぶ言葉は違ったんですね。

えーっと、サダオくんは遠慮がちに「光は吸い込まれたんちゃうやろか」って言ってますね

光が届かないって言わず、彼はそう言っちゃったんですね。遠近感のない空に、光が吸い込まれたって言われると、なんだかそんな気もしますよね。

ヨッさんはそこでびっくりしてますね

ええ。そこに至る構造の仕掛けとして、お姉ちゃんが短歌を詠む場面を入れました。ここがストーリーとして効いてるんですけど、お姉ちゃんにケリを入れられる、という描写をすることで、この場面を入れたあざとさを薄めようとしてます。

あざとさっ!
geekさん、そんなこと考えてるんですか?

はい。考えました。だって、唐突にこんなの入れるなんておかしいですよね。さっきまで小学校の教室の話をしてたのに。ただ、一方で、学校以外の描写を入れることで、ものがたり全体に「ほんとうにありそうな感じ」を持たせることもできるかな、とも考えました。このあたりが1200字の難しさかな、と思います。

そうして、少年ふたりは最後、おとなっぽくなりましたね

そうなんですよ。
そこに至るヨッさんの心の変化を見てください。

えーっと、ギク川はどこを見ればいいですか?

草っぱらに寝っ転がったときに、サダオくんの投げかけに対してヨッさんはどう言ってます?

「さっきの反射、飛行機に届いたと思う?」
って聞かれて
「しらんわ。空港行って聞いてこいや」
って言ってますね。

そうですね。これって、ヨッさんは思ったとおりに飛行機に光が当たらなかったことを、つまんないと思ってるんですよね。

あーなるほど〜

だから、サダオくんが気づいたことを言い淀んでるときも
「なんやねん、早よ言えや」
って言ってるんです。
ちょっとイライラしてるんでしょうね。

たしかにそう言われるとそうですね

ここで、サダオくんが思わぬ一言を発してヨッさん自身の気持ちが一変します。これをきっかけに、ぜんぜん違う方向をみていたふたりの気持ちが揃ってくるんですよ。

あっ! ギク川わかりましたっ!

わかりましたか?

はいっ!
ヨッさんはここで気持ちが変わったから
サダオくんの言葉を待てるようになったんですね!!

そうですね。そうやって最後、ふたりの気持ちは同じ方向を向いてものがたりは終わりますね。

そうだったんですね〜、なーるほど〜!

で、気づきましたか?

え、何にですか?

この話の読後感は、どこからきているか、です。

それはですねっ、ふたりの気持ちがそろったところです!

なるほど、そうですね。
それって、…何がきっかけですか?

えーっと、サダオくんが「光が空に吸い込まれたんじゃないか」って言ったところですよね?

そうです。
で、ここが大事なんですけど
サダオくんの言葉が結びつく直接の場面って、お姉さんの詠んだ短歌なんですよね。

あーっ! あの、ケリを入れた!

そうなんです。少年が精神的におとなになった、というのは、啄木の歌を重ねたからなんですよ。この話って、一言で言えば少年ふたりのちょっとした心理面での成長を書いたわけです。

はい

で、ここがポイントなんですけど、その成長って、石川啄木の短歌があってこそなんですよね。

はい

だから、読後感に強く残るのは
少年のこころの成長と、啄木の短歌
なんですよ。

そんな感じがしますね

お題の「かがみ」どこにあります?

あっ!

そうなんですよ。この話、読後感に鏡ってあまり残らないんですよ。

わざと読後感に鏡の印象が薄くなるように、話を書いたんです。

これってお題の見せ方としてどうなんだろうって思ったんですよね。確かに、鏡を使ってストーリーを展開させているし、ちゃんと話としてまとまってはいるけれども、最後に「これはなんの話ですか」と問われたら「鏡の話です」って言わないと思うんですよ。

そうかもしれませんね!

だから、わたしはこの作品が応募されたら最後までは残らないだろうと思ったんです。そこを狙ったんですね。

な〜るほどーっ!
そうだったんですね〜

そうだったんです。
もちろん、審査員が違えば、このものがたりに対する見方や印象が違うから、別の解釈が出てもおかしくないですし、そういうところが、ものがたりの面白さだと思いますけどね。

ちがう感想とか見方が出てきてもいいってことですね!

そうですね。
審査員が複数いるってことも、そういう他の見方を入れるってことですし、わたしが考えていることがぜったい正しいわけでもないですから。それに、セオリー度外視で面白いと思えば、そういうパワーを感じる作品は最後まで残るでしょうしね。


なーるほど〜!!


はいっ!
今回はまた、geekさんご自身の作品について面白いお話を伺えた気がしますっ! 夏ピリカの作品の見方について、お話をうかがってみました、というところでしょうか!

そうですね。他の方の見方は、同じかもしれませんし、全然違うかもしれませんけど。
はい、今回もありがとうございました

geekさん

はい?

…あの

なんでしょう?

…意外といろいろ考えてるんですね

それって、…褒められてるんですか?

はい

…ありがとうございます

はいっ!
ということでまた次回、お会いしましょう〜
お相手はわたくしギク川霊とっ

はい、意外と考えているgeekでした


また次回お会いしましょう〜!
バイバーイ!!