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誰もが、いつからでも、お絵描きできる社会を目指して~『デジタルスケッチ入門』著者・長砂ヒロ氏がアドビCC道場へ出演


令和のスケッチはデジタルで

スケッチという言葉。多くの方が小さいときから耳にしているのではないでしょうか。日本語に訳すと「写生」という意味の言葉で、人物や風景などを大まかに描写することを意味します。

今回の記事執筆をしている担当(ふ)は、小学生だったころ、遠足に行って、その場でスケッチなんていう体験をした思い出があります。

あれから云十年が経過し、パソコンの登場やインターネットの進化、そして、スマホを始めとしたデジタルデバイスがあたりまえとなった令和の今、スケッチを行うツールは鉛筆やペン、絵の具などのアナログな道具から、コンピュータやタブレットを利用したデジタルを駆使した道具で行えるようになりました。

今回の記事に登場する長砂ヒロさん(以降ヒロさん)は、まさにこのデジタルツールを活用した「デジタルスケッチ」の第一人者で、技術評論社から『デジタルスケッチ入門―光と色で生活を描く―』(以降『デジタルスケッチ入門』を出版しています。

デジタル時代のクリエイティブを牽引するアドビのインターネット番組『Creative Cloud道場』にヒロさんが出演

今回の記事では『デジタルスケッチ入門』の著者・ヒロさんが、2024年3月にアドビが主催するインターネット番組『Creative Cloud道場』(以降CC道場)に出演した模様についてお届けします。

とくに、ご自身のこれまでのキャリア、また、『デジタルスケッチ入門』が誕生した背景と、この本に込められた想いなど、デジタルスケッチのテクニック以外の部分に踏み込んだ内容をお届けします。

豊富なキャリアの積み重ねから生まれた『デジタルスケッチ入門』

今回の放送では、ヒロさん自身が、書籍の内容をもとにライブデモを行いながら、デジタルスケッチのさまざまなスキルを解説しているのですが、その前段として、ヒロさんのキャリア、そして、『デジタルスケッチ入門』誕生までの舞台裏と込められた想いが紹介されました。

『デジタルスケッチ入門』の紙面より

まず、書籍で目指しているポイントは大きくこの2つ。

・キャリアの中で学んだこと、そこから考えたこと詰め込んだ1冊
・デジタルツール(Photoshop)を使って絵を描くことで、結果的に社会が良くなることにつながるのではないかと考えた

とくに社会が変わるのではないか、という点は、とても興味深いです。そのあたりを番組の内容を取り上げながら紹介します。

憧れていた映画監督を目指して渡米、そして、独立

ヒロさんは、京都精華大学でテキスタイルデザインについて学び、アニメ美術の背景制作者としてキャリアをスタートしました。このとき、すでにアメリカで活躍し、当時からとても憧れていた映画監督の堤大介氏に突撃連絡をし、運良く出会うことができたとのこと。

さらに、そのタイミングの良さと運も重なって、アカデミー賞にもノミネートされた短編アニメーション『ダム・キーパー』の制作に関わられたことが1つの転機となったそうです。

その後、堤氏らが独立して立ち上げた制作チーム「トンコハウス」に参加し、いくつかの作品に関わり、独立、今に至っています。トンコハウスでのヒロさんのポジションは、当時のコンセプトアーティスト、今でいう、ビジュアルデベロップメントの役割として仕事をしていました。

このときから、自分が創作した絵が、世界を生み出していくきっかけになるという体験を強くしたそうで、その後の活動にも影響があったとのこと。そして、世に出た映像作品の制作など、さまざまな創作活動の傍ら、絵本『ドクターバク』、「ゴキンジョというプロジェクト、その法人化、そして、今回の書籍『デジタルスケッチ入門』の発行につながりました。

コミュニティの意味も持つ「ゴキンジョ」

ヒロさんは、今所属している「ゴキンジョ」の誕生について説明するにあたり、「ゴキンジョ」に含まれているさまざまな意味や狙いについて教えてくれました。

そもそも「ゴキンジョ」という名称になったのは、共同創設者と当時の住まいが近かったこと(ご近所だったこと)が最初のきっかけだったとのこと。

ただ、それだけではなく、これまで経験してきた絵の制作、作品の創作において、人と人とのつながり、コミュニケーションがとても重要と感じ、また、生み出した絵から生まれるコミュニケーションもあり、結果として絵を中心としたコミュニティが誕生するとも考えられ、それもまた一種のご近所的な要素があると考え、「ゴキンジョ」と決めたそうです。

「ゴキンジョ」に込められた想いとは

日常生活をモチーフに、身近なモノ・コトを絵として描く

続いて、書籍誕生の裏話について話が進みました。

ヒロさんはこの3年間、毎週月曜日の朝、業務を始める1時間前に、プライベートの創作の一環として、デジタルスケッチを行い、その様子をYouTube Liveで放送しています。

その目的は、自分自身のデジタルスケッチスキルの鍛錬だったり、習慣化することでの気づきなど、さまざまです。

ただ、年々続けていくうちに、絵を描くテーマのネタが尽きてきたため、そのうち、日々の食事だったり、生活消耗品など、身近な生活にあるものをモチーフに行っていきました。

ここでヒロさんは「絵を描くことと自分の生活」がつながり、絵を描くことについて改めて考えるようになったそうです。そのタイミングで、YouTube Liveを視聴していた技術評論社の編集担当から執筆打診があり、ここで気づいた日常的なことを絵に描くこと、また、絵を描くスキルを身に付けること、さまざまな想いを書籍に込められるのでは、ということで書籍執筆を進めることになりました。

お絵描きは何歳からでも始められる――「効率良く」スキルアップすれば社会が良くなる

以上が、番組前半で紹介されたヒロさんのキャリアと、『デジタルスケッチ入門』誕生の経緯です。

今回の書籍は、Photoshopの機能の活用をはじめとした「技術」の解説と、絵を描くという表現手法について、「表現」の本質について提示すること、2つの目的をが1冊にまとめられたものです。

『デジタルスケッチ入門』が目指すところ――技術書の観点、表現の観点、それぞれから

ヒロさんは、なぜ単なる技術解説書にしなかったのでしょうか。

それには、ヒロさんが考えている日本社会像の過去とこれからが大きく関わっています。

これまでの日本は、学校をはじめ10~20代で得た技術知識を、30代以降でお金に変えていくというキャリアパスが一般的なものでした。しかし、技術の進化や社会変容に伴い、必ずしも若いうちにスキルを身につけられられない、あるいは若いときに身につけたスキルがそのまま仕事につながらないことも多々ある時代となっています。

そこで、もし10~20代で技術知識を得られなかった人でも、その後、30代以降でも効率良く学びが行えれば、結果として、学びを始めたタイミングから長い年月を経ないでも、仕事を行うことができるわけで、それは裏を返せば「生き方はいつからでも変えられる」という具体的な事実につながります。

ヒロさんはそうなったときに「人が生きやすい社会になるのではないか」と考えたわけです。

「絵を描くこと(スケッチ)はもちろん、さまざまな新しいスキルを“効率良く”学ぶことは、“社会が良くなること”につながると考えて、『デジタルスケッチ入門』を執筆しました」(ヒロさん)。

『デジタルスケッチ入門』には、いつでも誰もが手に取れる状態で残しておくことで、年齢や経歴にとらわれずに、気兼ねなく絵を描ける、絵を描くスキルが向上する、そういう人が1人でも増える社会につながっていく1冊を目指しています。

前半パートの最後で、ヒロさんはこう締めくくりました。

読者の方にはぜひ、新しい技術を身につけること、絵を描くことに引け目を感じたり、後ろめたさを感じている人にも安心して手に取ってもらって、“生きやすくなる社会”の実現に加担してほしいですね」。

Photoshopを活用して絵がうまく描けるヒント――「色使いがうまくなる」「コンセプトアート」「カラースクリプト制作に使える技術」

では、実際にどうすれば絵がうまくなるのでしょうか。

番組後半では、その点について、3つのトピック

  • 「色使いがうまくなる」

  • 「コンセプトアート」

  • 「カラースクリプト制作に使える技術」

に分け、ライブデモを交えながら解説しました。この模様については、YouTubeアーカイブに残っているのでぜひご覧ください(34:42あたりから)。

デジタルスケッチに興味を持った方におすすめ!『デジタルスケッチ入門』

そして、このアーカイブを観て、デジタルスケッチに興味を持った方は『デジタルスケッチ入門』を手に取りながら、実際に絵を描いてみてはいかがでしょうか。

また、ヒロさんご自身のnoteでもさまざまな情報が発信されていますので、こちらも併せてご覧ください。


CC道場ってどんな番組?
CC道場は、PhotoshopやIllustrator、最近ではFireflyなど、デジタル時代のクリエイティブを支えるさまざまなツールやソリューションを開発・提供するクリエイティブベンダであるAdobeが運営するインターネット番組です。
2013年9月13日に第1回が放送されて以来、10年以上続く長寿番組で記事執筆時点の2024年4月10日までに全477回の番組が放送されています。
もともとは名前のとおり、CC(Creative Cloud)に関する話題を中心に取り上げていましたが、回を重ねるごとにCCだけではなく、CCを取り巻く状況、また、CCを活用した創作活動やトレンドなど、クリエイティブに関してためになる話題を、その時々の、トップランナー・キーマンをゲストに迎えて企画されている番組です。

(構成・執筆:株式会社技術評論社 デザイン・イラストnote編集部)


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