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短編小説 萬田氏の密かな楽しみ3 糞餓鬼(1485字)

萬田氏は定年退職し自由を手にしたが、やる事が無く、することが無く。
無風状態のまま、萬田氏はノンストレスと言うストレスに襲われ、睡眠障害に陥り、夢の中に登場する糞餓鬼に救われる。
何と糞餓鬼は萬田氏の日頃不満に思っている理不尽な事を次々と解決してくれるのである。
糞餓鬼はMHKに殴り込み、番組の不定期スクランブル化を達成し、おかげでMHKの解約者が増大し、大幅な赤字が出るまでになった。
また、クレムリンに殴りこんだ糞餓鬼は、便まみれ、糞まみれにした大統領の顔面へのプーと云う平和ガスの放屁で、ウクライナとロシアの戦争を終結させてしまった。
MHKについては、糞餓鬼が言うには、スクランブルの要求はしていないそうだが、糞餓鬼の乱入がトラウマとなったMHKの社員が放送中に、糞餓鬼の恐ろしさ、つまり悪臭とうんこまみれになった自身の姿がフラッシュバックして、震えが止まらず、それが全社的に不定期に意図せず集団で起きて、その震えがスクランブル放送に見えるようで、そのおかげで放送品質の低下を招き解約に繋がったそうだ。
それにしても、恐ろしや糞餓鬼である、
萬田氏の今の切実な悩みは、糞餓鬼との関係である。
この事態は、まるでドラエモンを手にしたのび太の様なもので。
つまり糞餓鬼を手にした普通の老人が、戦争を止め、MHK粉砕したのである。
糞餓鬼を手にした萬田氏は何でもできる、世界制覇も出来るかもしれない、
神様にも成れるかもしれない、とんでもない事に成ってしまった。

萬田氏は、その晩ドキドキしながら、糞餓鬼にお礼を言おうと眠りに着いたが、夢に糞餓鬼は現れなかった。
そんな日々が続き、もう現れないのか。
それもまた良しと思いつつ、その日は、ラジオでの拉致被害者ニュースを聴きながら寝入ってしまった。
夢の中で霧の様な、おならのガスと乾いた便の粉塵の中から、糞餓鬼は現れた。
今夜の糞餓鬼は小さい、身長30センチ位のフィギアの様だった。
萬田氏は、ありがとう
と感謝の意を伝えた。
しかし糞餓鬼は無反応である。
このチャンスにと萬田氏は、金が欲しい、海外旅行に行きたい、と個人の願いを話し始めた。
糞餓鬼はどんどん小さくなった、10センチ位になった時、萬田氏はやっと気づいた。
私利私欲は、ダメなんだ。
そこで理不尽で公共性のある拉致の話をした。
すると、糞餓鬼は見る見るうちに大きくなり、10メートル程になった時に、
行ってくる。
と言って消えた。

K国の官邸現れた糞餓鬼は、総書記室のドアを開けた、そこには大きく重厚な机の上に置かれた赤い核のボタンを息を吹きかけて磨き上げている、K総書記がおり、後方には警護隊がいた。
糞餓鬼はいきなり尻からうんこを取りKに投げつけた。警護隊が機関銃を連射したが、影の様な存在の糞餓鬼には通じない。
お前がKかと言うと、便を投げつけた。
Kはすばしっこく、奥の部屋に逃げ込んだ、追いかけて行くと、その部屋にはKが10人も居た。
糞餓鬼は辺りかまわず、うんこを投げつけた、その中の一人のKを捕まえて
どれが本物か訊くと、
本物はとっくに死んだ、全員影武者だと言った。
集団指導体制に気付いた糞餓鬼は、官邸の隅々まで行き渡る程の特大の放屁を繰り返した、この放屁は、帰したくなるガスというもので、早期の帰国を実現する為のものであった。
全館糞餓鬼の便で溢れ返り、大便にガスに溺れる警護隊員も多数見られた。大混乱の中、何時の間にか糞餓鬼は消えた。

3日後、K国からスイス経由でチャーター便のジャンボジェット機が、満員の乗客を乗せて羽田に到着した。
その日、
日本中、拉致被者全員帰国の大ニュースで溢れ返った。
おわり。



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