岐阜県の瑞穂市長は下水道民営化を推進している。

 2020年度、瑞穂市は、国土交通省 から 「先導的官民連携支援事業 事業手法検討支援型」の補助金を1378万2千円貰って、(株)NJS 岐阜出張所にPPP/PFI導入可能性調査を委託した。

 (株)NJSは、高知県 須崎市の下水道コンセッション の特別目的会社(SPC)「(株)クリンパートナーズ須崎」の構成企業の1つである。

 もし、新設の下水道にPFI方式が導入されるということになれば、国内初となる。

 そもそも、公共下水道事業へのPFI方式、コンセッション方式導入は、下水道法違反である。

■ 下水道法

[条文URL]
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=333AC0000000079

[管理]
・ 第3条 第1項: 公共下水道の管理は、市町村が行う。
・ 第25条の2 第1項: 流域下水道の管理は、都道府県が行う。

[使用料]
・ 第20条 第2項 2号: 能率的な管理の下で、適正な原価をこえない。

[行政権能、使用者義務の主要な規定]
・ 第10条: 排水設備の設置義務規定
・ 第12条: 除外施設の設置等
・ 第12条の2: 特定事業場からの排除の制限
・ 第13条: 排水設備等の検査
・ 第14条: 使用制限
・ 第18条: 損傷負担金
・ 第32条: 他人の土地の立入又は一時使用


 また、2018年1月18日、英国会計検査院が公表した報告書「PFI and PF2」には、下記のような内容が書かれている。

PFIが公的な財政にプラスであるという証拠は乏しい。
・ 総じて公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつく。
・ 学校建設の分析では政府が直接ファイナンスするよりも40%割高
・ PFIでは、公共による資金調達よりも2から4%(一部では5%も)資金調達コストが高く、さらに多額の付加的な費用(資金調達のアレンジメント・フィーが元本の1%程度、マネージメント・フィーが事業総額の1~2%程度など。)がかかる
・ 公共部門にとっては、25年から30年という長期スパンでは費用がかさむとしても、短期又は中期的(5年程度)で見ると負債を圧縮できるので魅力的である。このため公共部門の意思決定がPFIに好意的になり、PFI事業を進めるために、VFM(Value for Money)評価が甘くなる
・ 英国財務省はPFIのメリットとして、事業リスクを民間に移転できること、長期的なランニングコストが軽減されること、を挙げていた。しかし、実際にはこれらは概ね実現されず、PFI事業は開始時には予見していなかったコストをカバーするために高くついた
英国でのPFIのピークは金融危機直前の2007年から2008年(86億ポンド)であり、その後急速に減少現在では1990年初頭(PFIが始まった頃)よりも案件の額が少ない

 さらに、2018年10月29日、英国のフィリップ・ハモンド財務大臣は、「今後新規のPFI事業は行わない」と宣言した。

 これまで、日本国政府、自民党、民主党は、「PFIは英国では成功している」という前提の下、PFIを推進してきたが、今や、その前提は崩れている。

 もし、瑞穂市が下水道事業にPFI方式やPFIの一類型であるコンセッション方式を導入すれば、損をするのは瑞穂市役所であり瑞穂市民だ。

 瑞穂市の財政や瑞穂市民の生活を思うのであれば、下水道事業にPFI方式 やコンセッション方式を導入するのは止めた方が良い。


■ 地元の市民団体「みんなの瑞穂・明日をつくる会」による分析と提案

・ 瑞穂市による試算「総事業費が40年間で370億円(雨水事業を含むと470億円)、一般会計からの繰入が2億3500万円」は甘く、試算結果よりも工事費、一般会計からの繰入は高くなると分析。
・ 人口が密集し、合併浄化槽を設置できない場所には、コミュニティプラントを建設することを提案。(コミュニティプラントの建設には、国から補助金が出る。)
・ 合併浄化槽を設置できる場所に住む住民には、合併浄化槽を設置して頂き、当該住民には瑞穂市から補助金を出すことを提案。

[ 2020年4月会報 表面 ] https://drive.google.com/file/d/17VrHVhRxU-aRp5SfeGgS9OEjDBt8_9Db/view
[ 2020年4月会報 裏面 ] https://drive.google.com/file/d/176QQz7PaHePrtI0RQf9vxDlz-eHBObIZ/view

「みんなの瑞穂・明日をつくる会」
[ web ] https://sites.google.com/view/asumizuho/
[ facebook ] https://www.facebook.com/asu.mizuho


■ スケジュール(瑞穂市議会 2020年6月 定例会の議事録 より)

・ 2020年3月3日 下水道法 第4条に規定する県知事協議が完了。
・ 2020年3月31日 都市計画法 第62条に基づく事業認可の告示が岐阜県よりなされた。
・ 2020年度 管路の施設の基本設計、管路施設詳細設計のための地質調査、また瑞穂市の下水処理場の用地の測量を行い、これまでも説明してきた。
・ 2020年7月 PPP/PFI導入可能性調査 委託先 公募の告示
・ 2020年7月 処理場用地の測量の地権者説明会を開催
・ 2020年8月 牛牧地域、本田団地地域の市民に対して順次説明会を開催
・ 2020年8月 PPP/PFI導入可能性調査 委託先 決定(プロポーザル方式)
・ 2020年9月以降 PPP/PFI導入可能性調査
・ 2021年度 (PPP/PFI方式に決定した場合)PPP/PFI事業者を決定
・ 2022年度後半 (早ければ)下水処理場工事、管渠工事、開削工事を全て一斉に開始
・ 2026年4月 供用開始

2020年6月25日の一般質問 (松野貴志 瑞穂市議(新生クラブ) ⇒ 矢野隆博 環境水道部長)から引用。


■ 第1期事業計画(瑞穂市議会 2020年6月 定例会の議事録 より)

[下水処理能力]
 2,450立方m(全体計画処理能力19,600立方mの1/8)

[管路の延長]
 総延長28.8km
 (うち幹線管路の延長は5.8km、面整備管路の延長は23km)

[工法]
 基本的に幹線管路は推進工法で、面整備管路は開削工法。

[概算事業費]
 下水処理場の用地を含めた事業費: 約24億円
 幹線管路事業: 約28億円
 面整備管路の事業費: 約20億円
 合計: 約72億円

2020年6月25日の一般質問 (松野貴志 瑞穂市議(新生クラブ) ⇒ 矢野隆博 環境水道部長)から引用。


■ 総事業費(瑞穂市議会 2020年6月 定例会の議事録 より)

 40年間で370億円、瑞穂市の負担としてはは108億円ぐらい。

2020年6月26日の一般質問 (馬渕浩史 瑞穂市議(新生クラブ))から引用。


■ 「(令和2年度)瑞穂市下水道事業におけるプロジェクト・プランニング型PPP/PFI導入検討調査委託 」(瑞穂市 財務情報課 / 2020年8月18日更新)

 調査委託先の企業を選定する「公募型プロポーザル」の選定委員の委員長が、「ぎふPPP/PFI推進フォーラム」の代表である高木朗義 岐阜大学 工学部 教授。
https://www.city.mizuho.lg.jp/11308.htm


■ 令和2年度 PPP/PFI推進のための案件募集 支援案件

先導的官民連携支援事業
事業手法検討支援型
瑞穂市 / 下水道事業におけるプロジェクト・プランニング型PPP/PFI導入検討調査 / 交付予定額 1378万2千円
https://mlit.go.jp/report/press/content/001345043.pdf


■ 「6月18日午前9時30分 瑞穂市議会 産業建設委員会協議会」(森和之 瑞穂市長 facebook / 2020年6月18日)

協議事項の中から
①瑞穂市公共下水道事業については、今年3月31日岐阜県知事から市事業認可申請が承認されました。また5月27日には国から先導的官民連携事業申請の決定通知がありました。これにより今年度公共下水道事業を民間活力による事業化を検討する財源約1,400万円を確保することができました。他市より遅れてしまった下水道事業第1期工事費等の概算72億円の1割である7億円を、民間活用により削減する事を目標に進めていきます
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=709549069830179&id=100023252782525


■ 「2020年(令和2年)6月18日(第5420号)」(水道産業新聞 / 2020年6月18日)
http://www.suidou.co.jp/200618.htm

■ 「支援対象を決定/国交省のPPP/PFI支援3事業の1次募集」(建通新聞 / 2020年6月3日)
https://www.kensetsunews.com/archives/458806


■ 瑞穂市の下水道

瑞穂市の人口: 55,171人(2020年7月31日現在)
下水道人口普及率: 11.9%
合併処理浄化槽人口普及率: 46.8%
瑞穂市全体の41.3%の家庭等が下水道が利用できない環境
(2019年3月31日調べ)
https://www.city.mizuho.lg.jp/3561.htm


■ 瑞穂市議会 2020年 第1回定例会 議事録(2020年2月26日~3月18日)
https://www.city.mizuho.lg.jp/10214.htm


瑞穂市議会 勢力図

定数: 18
過半数: 9
・ 新生クラブ(7議席): 自民党系、前瑞穂市長の与党
・ 無所属の会(6議席): 全員新人、現瑞穂市長の与党
・ 朱鷺の会(1議席): 前瑞穂市長、元新生クラブ所属の市議
・ 公明党(1議席): 自民党系と連携
・ みずほ令和の会(1議席): 市議選前は無所属市民派と立憲民主党の混合
・ 立憲民主党(1議席): 市議選前はみずほ令和の会に所属していた
・ 日本共産党(1議席): PFI方式、コンセッション方式の導入には反対


■ 「瑞穂市新庁舎建設について」(瑞穂市 財務情報課 / 2019年6月28日更新)

 「瑞穂市新庁舎建設基本構想」の17頁には、「当市でも新庁舎の建設にあたっては、民間の資金とノウハウを活用する公民連携による事業手法を検討していきます。」と書かれている。
 すなわち、瑞穂市は、瑞穂市新庁舎建設にもPFI導入を検討するということだ。
https://www.city.mizuho.lg.jp/5483.htm


■ 「JR穂積駅周辺整備事業」にもPFI方式を導入する可能性があるので注意が必要だ。
https://www.city.mizuho.lg.jp/9168.htm


■ 「公共下水道事業(瑞穂処理区)へのPPP/PFI手法の導入を検討しています」(瑞穂市 / 2020年11月9日)
https://www.city.mizuho.lg.jp/11444.htm


■ 「【岐阜】瑞穂市の下水道事業官民連携 4~5月に実施方針案」(建通新聞 / 2021年2月12日)
http://www.senmonshi.com/archive/02/02FEBIU7L0RNRP.asp

■ 「【岐阜】瑞穂市 瑞穂処理区の公共下水整備 DB方式で」(建通新聞 / 2021年4月30日)
http://www.senmonshi.com/archive/02/02100UQiuL0RNRP.asp


■ 『イギリスにおけるPFIの「終焉」と現在の行政民間化の論点』(榊原秀訓 南山大学 法務研究科 教授 / 2019年6月28日)
https://nanzan-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2853&item_no=1&page_id=13&block_id=21

■ 「PFIは終わったのか ~英国はPFI・PF2に終止符~」(馬場康郎 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部 副主任研究員 / 2018年11月6日)
https://www.murc.jp/report/rc/column/search_now/sn181106/

■ 「PFI and PF2」(英国会計検査院(National Audit Office) / 2018年1月18日)
https://www.nao.org.uk/report/pfi-and-pf2/

■ 「水道民営化賛成派を説得するビラ」
https://note.com/gifu_water/n/n020220f1b88c


■ 日本の会計検査院が、PFI事業の不適切業務と、従来方式よりもPFI方式の方が割高であることを指摘。

『会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告 「国が実施するPFI事業について」』(会計検査院 / 2021年5月14日)
[ web ] https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/3/r030514.html
[ 概要 ] https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/3/pdf/30514_gaiyou.pdf
[ ポイント ] https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/3/pdf/30514_point.pdf
[ 本文 ] https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/3/pdf/30514_zenbun.pdf

----------
民間資金で公共施設整備、不適切業務2367件 検査院」(朝日新聞 / 2021年5月14日)

会計検査院が2018年度末までに終了した29事業を調査
 ⇒ PFI方式の導入効果について事後検証した事業無し

うち27事業について、PFI方式と従来方式での維持管理費を比較
 ⇒ 全事業でPFI方式が従来方式よりも1.06~2.85倍高額

[ web記事 ] https://www.asahi.com/articles/ASP5G5R86P5DUTIL06C.html
[ 記事画像 ] https://pbs.twimg.com/media/E1YKH0NUUAIQ1cN?format=jpg
[ Twitter ] https://twitter.com/YOSHIMASAOBAYAS/status/1393312267265998849

----------
『「PFI事業」で国の機関に改善求める 会計検査院』(NHK / 2021年5月14日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210514/k10013030801000.html

----------
「国のPFI事業、不適切サービス2千件超 会計検査院指摘」(日本経済新聞 / 2021年5月14日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE131DE0T10C21A5000000/


【 浜松市 下水道事業への「コンセッション方式」導入 結果 】