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洋食はうれしいものだ

「今日、洋食食べに行こうか」と父が言うと、それだけで胸が躍った。
具体的に何を食べにいくのか、どこにいくのか、全くわからないけれど、僕は洋食を食べにいくのだ、と書いた札を背中に貼り付けて、町内を回りたい気分だった。

辿り着いた洋食屋は、別段きれいでもなんでもなく、むしろ古びていて、少しくすんでいたけれど、逆にそういう店が一番うまい、とやけに大人びていた中学生だった。
メニューもシミがあって、いつ撮影したものだろう、という料理の写真がついていて、でもどれも魅力的に見えた僕は、ミックスフライと迷った挙句、オムライスに決めた。
父や母、弟がそのとき何を頼んだのか、よく覚えていない。

やってきたオムライスは、きれいな黄色の卵の上にデミグラスソースがかかっていて、湯気が立ち上った。

夢中で食べた後、遅れて出されたクリームソーダのアイスクリームをぐるぐる混ぜて僕はやはり夢中で食べたのだ。

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