運命がカードを混ぜ、われわれが勝負する
カードを混ぜるのはH(16・男性)。
彼はカードを混ぜるために製造された人間である。
試験管生まれ、富良野育ち。
富良野に実験施設があって、その育児施設で育った。
彼に名前はない。だから仮にHとしておく。
Hは生まれてすぐにカードを与えられた。
カードを混ぜることで報酬としてミルクが与えられ、
またカードを混ぜることで母親役の人間に抱きしめてもらえた。
Hはその異様な環境下にあったがすくすくと育ち、入れ替わり立ち替わり様々な人間に調べられたが、身体、精神ともに正常と判断された。
5歳の誕生日を迎えた時、彼は初めて施設の外に出た。
もちろん、それまでにも窓の外の世界のことは知っていた。
けれど実際に一歩施設の外に出て、彼は雷に打たれるような衝撃を受けた。
自分を縛るものが何もない、と感じた。
その時もカードを持っていたし、それはすでに彼の手の一部と言えるぐらい、その扱いに長けていた。
ふと、彼はトランプを素早く混ぜてみた。
すでにそれは彼の一部になっていたため、その速度は常人の目に見えず、彼が手を動かしていることもわからない。
早すぎて手が止まって見えるのだ。
不思議に思って近づいた監視員は巻き込まれて破裂した。
どうした、と近づいたもう一人の監視員も同様に破裂した。
ますます、彼を縛るものはなくなった。
彼は一歩、踏み出した。初めて土を踏んだのだ。
後のヒソカである。
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