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沈丁花


この手のひらが
温かいのは、なぜでしょう

浅い眠りの中で小さな
スコップを片手に散歩する
あなたの指先はいつも
冷たいけれど

ベランダの
挿し木の鉢植えで
沈丁花の花が
ひとつ、ふたつ咲きました
その中心は白く、
紫色に縁どられ
甘やかな匂いに包まれて

その隣りの姫椿も
誘われるように咲きました
幾重にも重なる花びらは
その中心にまた、
つぼみがあるような

ひとつおき、咲かぬもの
またその先の
沈丁花は花ひらき

同じ場所で
同じ陽射しを
浴びながら花ひらくもの
咲けないもの

どうして?
と瞳で聞く私に
振り向いたあなたは
それには答えず
みんな連れてゆく、と

静かに笑ったのでした



#現代詩
#自由詩
#沈丁花
#パートナー




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